遺産分割のお役立ちコラム
遺産分割調停とは何か?メリット・デメリットと流れについて解説
2024/07/11(木)
遺産分割調停とは?
遺産分割調停とは、相続が発生した際において、亡くなった人(被相続人)の遺産について、相続人間で意見の合意が得られない場合に利用される裁判所における手続きです。そして、相続人同士で遺産分割について話し合いがまとまらない時、相続人であればどなたでも家庭裁判所に調停を申し立てることができます。この遺産分割調停では、裁判所の調停委員が介入し、双方の意見を聞きながら、双方が納得できる解決案を探ります。調停は公正かつ迅速な解決を目指し、裁判に比べて手続きが簡易で、費用も比較的抑えられます。ただし、調停で合意に至らない場合は、審判に移行します。遺産分割調停は、相続問題を円滑に解決するための有効な手段の一つです。
遺産分割調停のメリット
速やかな解決
遺産分割調停の手続きは、裁判に比べると迅速に進むことが多いです。裁判は、判決を得るための立証をする必要があるため、訴訟の準備、訴状の作成、証拠の収集と提出、法廷での審理などにより時間がかかりますが、調停はより直接的な話し合いに基づくため、証拠等の提出を簡略化したり、それぞれの言い分を必ずしも書面で提出する必要もありません。法廷において証人尋問や本人尋問をすることもなく、短期間で解決することもあります。これにより、相続人は早く遺産を手に入れ、先に進むことができます。もっとも、話し合いで解決をする必要があるため、あくまで話合いの余地がある場合に限定されます。コストの削減
遺産分割調停は裁判に比べ、比較的経済的です。裁判では弁護士費用、訴訟費用、長期化することによる追加の費用などが発生しますが、調停は手続きがシンプルで、これらの費用が大幅に削減されることが多いです。これにより、遺産をより多く相続人に還元できる可能性があります。秘密保持
遺産分割調停の手続きは非公開で行われ、プライバシーが保護されます。遺産分割は時にデリケートな情報を含むため、この秘密保持は相続人にとって大きな安心材料となります。公にされることなく、家族内の問題を解決できることが調停の大きな魅力です。柔軟な解決策
遺産分割調停では、相続人の意見や状況に基づいて柔軟な解決策が探求されます。裁判所による決定ではなく、相続人同士の合意に基づくため、より現実的かつ双方にとって納得のいく解決が期待できます。関係の修復
遺産分割調停は、相続人間の対立を和らげ、関係の修復を促します。裁判では勝者と敗者が生まれがちですが、調停では双方が納得する解決を目指すため、家族間の関係を維持しつつ問題を解決できる可能性が高まります。
遺産分割調停のデメリット
合意に至らないリスク
遺産分割調停では、すべての相続人が合意に達することが必要です。しかし、相続人間の意見が大きく異なる場合、合意に至らないで終了することになります。この場合、調停が不成立となり、さらに時間と労力を費やして審判へと移行する必要が生じることがあります。調停の解決の範囲の限界
遺産分割調停は、あくまで話合いの場ですので、そもそも、遺産の範囲に争いがある事案、相続人の一人が無断で被相続人の預金等を引き出した事案、遺言等に争いがある事案の場合、遺産分割調停で解決することができません。この点、遺産の範囲に争いがある事案では、遺産確認の訴えという民事訴訟を裁判所に提起し、その財産が被相続人の遺産であることを確認する必要があります。また、預貯金が、被相続人の生前や死後に無断で預金を解約したり引き出しされた事案では、その責任を追及するための手続として、不当利得返還請求訴訟という民事訴訟を裁判所に提起し、その預金等の無断引出し等を追及する必要があります。さらに、遺言が偽造変造されている事案や認知症等で遺言作成時の判断能力に争いがある事案では、遺言無効確認請求訴訟を提起する必要があります。このように、遺産分割調停は、あくまで話合いの場であるため、根本的な争いがある場合には、別途、訴訟を提起し和解や判決等で争いを解決してから再度、遺産分割調停を申し立てる必要があります。時間と労力の消耗
遺産分割調停は、裁判に比べ迅速な解決が期待できるものの、それでも時間と労力を要するプロセスです。複数回の調停期日が必要となる場合が多く、相続人が遠方に住んでいる場合などは、特にこの負担が大きくなります。調停委員への依存
遺産分割調停の成否は、調停委員のスキルや経験に大きく依存します。委員の能力や遺産分割に対する理解度にバラツキがあるため、場合によっては不十分な提案や不公平な解決策が提示されるリスクがあります。心理的ストレス
遺産分割調停の過程は、相続人間の意見の対立を前面に出すことになり、しばしば心理的ストレスが伴います。特に家族関係が複雑な場合、感情的な対立がエスカレートし、関係がさらに悪化する可能性もあります。
遺産分割調停の流れ
1. 遺産分割協議の開始
相続が発生した後、まずは相続人全員で遺産分割の協議を開始します。この段階では、相続人が遺産に含まれる財産のリストアップ、財産評価、分割案の提案などを行います。相続人間で話し合いが円滑に進むことが理想ですが、意見の食い違いが生じることも少なくありません。2. 調停申立て
相続人間の遺産分割協議が決裂し、相続人間での合意が得られない場合、通常、遺産分割調停の申し立てをします。遺産分割調停を申し立てるには、家庭裁判所に対して申立書を提出する必要があります。申立書には、相続人の情報、遺産の内容、これまでの協議の経緯、分割案に対する自己の立場などを明記します。3. 遺産分割調停手続きの開始
遺産分割調停の申立てが受理されると、家庭裁判所が調停委員を指名し、調停手続きが開始されます。調停委員は、双方の主張を聞き、中立的な立場から問題解決に向けた提案を行います。調停は非公開で行われ、プライバシーが保護されます。また、相続人間の対立を和らげ、円滑な合意形成を促すことが目的です。4. 遺産分割調停の成立
遺産分割調停を申立て、その後、双方が合意に達した場合、調停調書が作成されます。調停調書には、遺産の具体的な分割方法や条件が記載され、これによって遺産分割が確定します。5. 調停不成立と審判への移行
遺産分割調停で合意が得られない場合、自動的に遺産分割審判へと移行することになります(家事事件手続法 第272条第4項)。審判手続では、裁判官が、遺産に属する物又は権利の種類及び性質その他一切の事情を考慮して審判をすることになります。
遺産分割調停のよくあるご質問
Q: 遺産分割調停を申し立てるための条件は何ですか?
A: 遺産分割調停を申し立てるためには、相続人間で遺産分割についての合意が得られず、遺産の分割につき相続人間で意見が決裂している必要があります。また、申立ては家庭裁判所に行い、関連する書類とともに提出する必要があります。さらに、どこの裁判所に申立をするのかも制限があり、原則、相手方の住所地が申立をする裁判所の管轄となります。Q: 遺産分割調停手続きの期間はどのくらいですか?
A: 遺産分割の調停手続きの期間はケースによって異なりますが、一般的には数ヶ月から1年程度かかることが多いです。しかし、相続人の意見が大きく分かれている場合は、何年間もの月日を要することもあります。当法律事務所においても、4-5年かけて遺産分割調停を遂行した事案もいくつもあります。Q: 遺産分割調停において弁護士を雇う必要がありますか?
A: 遺産分割調停をするにあたり、弁護士を代理人として依頼しないで自ら調停に参加することは可能です。もっとも、複雑な遺産分割の場合や、財産の評価が争いになる事案、法的知識が不足していると感じる場合には、弁護士に相談することを推奨します。Q:遺産分割 調停で合意に至らない場合、どうなりますか?
A: 遺産分割調停で合意に至らない場合、通常は審判に移行します。審判では裁判官が遺産分割の方法を決定します。Q: 遺産分割調停の費用はどのくらいかかりますか?
A: 遺産分割調停の費用は、申立てに必要な手数料と、必要に応じて雇う弁護士の費用が主です。調停自体の手数料は比較的低額ですが、弁護士を雇う場合の報酬等は法律事務所により異なるでしょう。Q:遺産分割調停の調停調書にはどのような内容が含まれますか?
A: 遺産分割調停の調停調書には、遺産分割に関する具体的な合意内容が記載されます。これには、どの相続人がどの財産を受け取るか、条件や時期などの詳細が含まれます。Q: 遺産分割の調停手続きは公開されますか?
A: いいえ、遺産分割の調停手続きは非公開です。プライバシー保護の観点から、調停の内容は公開されません。Q: 遺産分割の調停において、裁判官は私に有利に進めてくれますか?
A: いいえ。家庭裁判所の裁判官は、調停や審判において公平性を保ちながら手続を進めていきます。この点、注意しなくてはいけない点としては、裁判官は中立的な立場で全ての相続人に対して公平であるべきですが、それは裁判官が相続人それぞれの利益を積極的に代弁するという意味ではありません。裁判官は提出された証拠と調停・審判において主張された内容に基づいて公平な判断を下すことになります。すなわち、提出すべき証拠や主張すべき内容については、各相続人が自身で進める必要があるのです。一方の相続人と他方の相続人で情報格差や主張の充実さに格差があったとしても、裁判官がその点を配慮することはありません。例えば、弁護士に依頼している相続人と依頼していない相続人がいることによって、相続人間において、法的に整理された主張に格差が生じたり、調査の結果得た証拠に差が出る場合があります。このようなケースで、弁護士を就けた相続人と就けていない相続人との間で、影響力に顕著な差が生じたとしても、裁判官は、その格差を是正することはしないのです。
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