
内縁(ないえん)とは、法的に婚姻届を提出して正式な結婚をしていないものの、事実上夫婦として共同生活を送る関係を指します。内縁関係には法的な効力はほとんど認められていませんが、共同生活の事実が明確な場合、一部の法的保護や扱いを受けることができます。例えば、相続や社会保障の面で配偶者と同様の扱いを受けることが認められることがあります。しかし、その権利や保護の範囲は正式な結婚に比べて限定的であり、内縁の状態は個々のケースによって法的評価が異なることがあります。
内縁の妻は法的な婚姻関係にないため、正式な配偶者としての相続権が認められません。これは、日本の民法が法的に結婚をしている配偶者にのみ相続権を与えているためです。内縁の妻が配偶者から財産を受け継ぎたい場合は、遺言によって明確に指定される必要があります。遺言がない場合、内縁の妻は法定相続人とは見なされず、財産を受け取ることはできません。
両親が婚姻関係にある夫婦の間に生まれた子は嫡出子と言い、常に相続権があります。一方、内縁関係の夫婦の間に生まれた子は非嫡出子となり、相続権は、父親である被相続人から認知されていたか否かで異なります。
認知とは、婚姻関係にない夫婦の間に生まれた子について、父親が実の子どもであると認めることです。内縁関係の夫婦の間に生まれた子であっても父親が認知をしていれば、父親の相続権があります。
以前は、非嫡出子の相続分は嫡出子の2分の1と民法で定められていましたが、この民法の規定は憲法に違反しているとの最高裁の判例が出ました(最高裁判決 平成25年9月4日)。この判決に基づき、民法が改正され、現在は認知された非嫡出子の相続分は嫡出子と同じになっています。
内縁関係が認められるためには、両者が婚姻の意思を持っていることが必要です。具体的には、法律上の婚姻届を出していないだけで、実質的には夫婦として生活し、お互いを配偶者として認識している状態を指します。
具体例としては以下のようなものがあげられます。
・口頭や書面でお互いに婚姻の約束を交わしている。内縁関係が認められるもう一つの条件は、実際に共同生活を送っていることです。これは、同じ住居に住み、家計を共にし、日常生活を共有することを意味します。例えば、家事の分担や、経済的な負担を共同で負っている場合などが該当します。また、住居の賃貸契約書に「妻(未届)」などと記載されている場合や、同一住所の住民票がある場合は、共同生活を送っていると判断されることが多いです。さらに、「一定期間」とは通常3年以上を指すと考えられています。この共同生活の実態は、友人や近隣住民の証言などからも確認されることがあります。
内縁の妻に財産を贈与する(遺贈といいます)という内容の遺言書を作成しておけば、法定相続人以外にも財産を贈与できます。自筆証書遺言は、遺言者が自分の手で全文を書き、日付と署名、押印をする遺言です。この方法はプライベートに行える上、費用もかかりません。ただし、保管や紛失、改ざんのリスクがあるため、遺言の安全性を確保するためには信頼できる場所での保管が必要です。公正証書遺言は、費用がかかりますが、公証人が正式に遺言を保管し、法的効力が高いため、遺言の執行時のトラブルを避けることができます。
法定相続人との間で遺留分の放棄契約を結ぶことも一つの方法です。これにより、遺言で指定した内縁の妻に遺産の大部分を渡すことが可能になります。ただし、この契約は相続人全員の同意が必要であり、実現が難しい場合もあります。
生命保険の受取人を内縁の妻に指定する方法です。保険金は遺産とは別に扱われるため、内縁の妻に資産を渡すことが可能です。また、保険金は遺言の内容や相続手続きに関係なく、速やかに支払われるため、内縁の妻の経済的な安定を早期に支援できます。
特別縁故者とは、
被相続人と生計を同じくしていた者
被相続人の療養看護に努めた者
その他被相続人と特別の縁故があった者
などをいいます。
内縁の妻は上記の条件に当てはまるケースが多いといえます。
もっとも、特別縁故者になるには、家庭裁判所に申立てをし裁判所に認めてもらわなければなりません。そして、特別縁故者として財産分与を得ることができるのは、他に相続人が誰もいない場合のみですので注意が必要です。
遺言には内縁の妻への遺産分配の意志が明確に記されている必要があります。文言が不明瞭な場合、遺言書が法的に認められず紛争が生じる可能性があります。
公正証書遺言を作成することで、遺言の内容が正確に記録され、公証人によって保管されるため、執行時のトラブルを防ぐことができます。
法定相続人との間で紛争を避けるためには、内縁の方の存在を事前に共有し、可能な限り理解と同意を得ることが重要です。
遺留分は法定相続人が請求できる最低限の相続分です。この問題を避けるためには、遺言を作成する際に遺留分の計算を考慮する必要があります。
生前贈与や保険金の受取には税金が関連します。税負担を理解し、適切な税務計画を行うことが必要です。
生命保険の受取人を明確に指定し、保険証券を確認することで、遺産とは別に迅速に資金を確保することが可能です。
配偶者が遺産を相続する場合、配偶者の税額軽減の特例により、1億6,000万円または法定相続分相当額のうち、どちらか多い方までは相続税の課税対象にはなりません。しかし、内縁の妻には配偶者控除は認められません。
被相続人と共同生活を送っていた土地等を相続したケースでは、一定の面積まで算出時の評価額の50%ないし80%まで相続税を減額できる特例制度があります。しかし、仮に内縁の妻が遺贈等で土地を取得したとしても、当該制度の利用はできません。
配偶者居住権とは、夫婦の一方が亡くなった場合に残された配偶者が亡くなった人が所有していた建物に亡くなるまで又は一定の期間無償で居住することができる権利です。配偶者居住権は、夫婦の一方が亡くなった場合に残された配偶者の居住権を保護するため、新たに認められた権利です。建物の価値を「所有権」と「居住権」に分けて考え、残された配偶者は建物の所有権を持っていなくても、一定の要件の下、居住権を取得することで亡くなった人が所有していた建物に引き続き住み続けられるようにするものです。
配偶者居住権が成立するためには、以下1~3の要件をすべて満たす必要があります。
1.残された配偶者が亡くなった人の法律上の配偶者であることしたがって、法律上の配偶者にはあたらない内縁の妻には配偶者居住権は認められません。
(参考 法務省HPhttps://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00028.html#1)相続や遺言に関する法的な問題は複雑であるため、専門家の助言を仰ぎ、適切な手続きを行うことが望ましいです。
