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不当解雇のお役立ちコラム
能力不足で会社をクビになった!

2026/04/01(水)

能力不足による解雇が認められるか弁護士が解説

「会社から解雇通知を受けました。理由は能力不足だというのですが、これまで会社から注意や指導を受けたこともなく、同僚と比べて劣っているとも思えないので納得できません。解雇を撤回してもらうことはできますか?」

我々弁護士は、労働問題の相談に際して、このような能力不足を理由として解雇通知を受けた方から相談を頂くことがよくあります。具体的な水準を示されず、単に「職務能力が平均よりも劣っている」という理由で解雇された場合、解雇権濫用として無効になる可能性が高いです。それでは、どのような場合に「能力不足」を理由とする解雇が違法・無効となるでしょうか。

本記事では、「能力不足を理由とする解雇」について、以下の点を中心に弁護士が解説します。

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能力不足を理由に従業員を解雇できるか

法律上、解雇が有効とされるためには、客観的に合理的な理由が存在していなければなりません(労働契約法第16条)。能力不足を理由とする解雇の場合も、「能力不足を理由として解雇する」ことがやむをえないと認められる合理的理由が必要です。

ここでは、能力不足を理由とする解雇の適法性について裁判例で示された基準や、解雇が行われやすい能力不足の類型をご紹介します。

不当解雇となる判断基準

能力不足を理由とする解雇が有効とされるためには、以下の基準を満たす必要があります。

  • 著しい成績不良により会社の業務に支障が生じていること
  • 会社が当該労働者に対して指導を行ったこと
  • 配置転換等による雇用継続が不可能であること
  • 職務能力の評価が公正に行われていること

以下、順にご説明します。

1.著しい成績不良により会社の業務に支障が生じていること

まず「著しい成績不良」といえるためには、そのように評価する原因となった対象事実(専門職であれば専門的な技量を有していないことなど)を明らかにする必要があります。単に「仕事が遅いし、ミスが多い」というだけでは、客観的合理性に欠けるといえ、解雇が認められることはないでしょう。

また、勤務成績の評価が相対評価で行われている場合は、最低の成績であったとしても、それを理由とする解雇は不当解雇となる可能性が高いでしょう。なぜなら、相対評価で成績が一番低い従業員が解雇されることが適法であるとすれば、成績の低い従業員は常に解雇されうることになってしまうからです。
さらに、著しく成績が不良であったとしても、会社の業務に特段の支障がなく、目に見える形での損害が生じていないとすれば、解雇に客観的合理性があるとはいえません。解雇が認められる可能性があるのは、企業経営や運営に支障・損害が生じている、または重大な損害が生じるおそれがある場合です。たとえば、以下のようなケースでは、企業経営や運営に支障・損害が生じているといえるでしょう。

  • 特定の資格や技量を有していることを前提に専門職採用したにも関わらず、一切、技量がなかった
  • 英語力があることを前提に渉外部署に雇われた従業員が、まったく英語力がないことが判明し、その上、製品仕様書等の技術文書の作成で大量の誤訳をした上に修正にも応じなかったために取引先の企業から契約を打ち切られた

2.会社が当該労働者に対して指導を行ったこと

能力不足による解雇が認められるためには、労働者に対して仕事のミスなどの問題点を具体的に指摘し、問題点を克服するための指導を行ったが、それでも改善が見られなかったという事情があることが必要です。問題点の指摘と改善のための指導なしに行った解雇には、客観的に合理的な理由があるとはいえないためです。

3.配置転換等による雇用継続が不可能であること

所属の部署で能力不足であっても、業務内容の異なる部署であれば適性が見出される可能性があります。配置転換など措置によって解雇を回避する試みを行ったにもかかわらず、他の部署や業務内容であっても能力不足の状態が改善しなかった場合に、解雇の有効性が認められる可能性があります。また、配置転換を行う場合には、労働者に対して配置転換の必要性について十分に説明を行い、異動後も適切な指導を行う必要があります。ただし、専門職採用されている場合には、適性がないとして異なる部署への配転を検討すべき必要性はありませんし、判例ではそのように判示しているものもあります。

4.職務能力の評価が公正に行われていること

また、「能力不足」という判断の前提となる職務能力の評価が、客観的な基準に基づいて公正に行われている必要があります。明確な評価基準を示さずに単に「能力不足」というだけでは、その労働者を解雇する客観的合理的理由があるとはいえません。

解雇理由として挙げられる能力不足の類型

能力不足を理由とする解雇の場合、解雇理由として挙げられることが多い類型として次の5つが挙げられます。

  • 他の従業員と比較して仕事のスピードが遅くミスが多い
  • 上司の指示を理解できない
  • 期限や納期を守ることができない
  • 目標を達成できない
  • 必要な連絡や相談をしない

いずれの場合も、客観的に合理的な理由であると認められるためには、次のような事情があることが求められます。

  • その労働者に求める要求(納期、目標など)が合理的で過度なものでないこと
  • 目標達成や納期遵守ができないことに労働者の落ち度があること
  • 会社側が具体的な問題点を指摘し、改善のための指導を行っていること
  • その能力不足が原因で、会社の業務遂行に支障が生じていること
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能力不足を理由とする解雇の例

「能力不足」を理由とした解雇の判断は、解雇された従業員の試用期間・新卒者であるか中途採用者であるか、専門職採用であるか、どのような雇用形態なのかによって異なります。ここでは、能力不足を理由とする解雇が起こるケースや、解雇の効力が争われた裁判例をご紹介します。

能力不足による解雇が起こるケース

能力不足による解雇が起こるケースとして、試用期間・新卒者・中途採用者・専門職・管理職などがあります。以下、ケース別に解雇が起こる状況や、解雇が適法と認められる要件等を解説していきます。

1.試用期間中の能力不足

「試用期間」とは、会社が労働者を本採用する前に、試験的に雇用する期間をいいます。会社は試用期間中は解雇権を留保していると解されています、採用段階では知りえなかった労働能率の低さ等が判明し、雇用継続が困難と判断した場合、会社は労働者に対して能力不足を理由に「本採用拒否」の形で解雇通知を行うことがあります。

しかし、試用期間であっても、労働契約が締結されている以上、試用期間中の解雇は客観的に合理的な理由が存在し、社会的に相当と認められる場合のみ認められます(最高裁大法廷1973年12月12日付判決)。また、本採用を拒否する場合は、解雇の場合と同様、原則として労働契約解約日の30日以上前に予告するか、予告手当を支払わなければなりません(労働基準法第20条)。したがって、試用期間満了に基づいて本採用拒否をした場合でも、多くの場合、労働者は保護されます。

2.新卒採用者の能力不足

新卒一括採用で入社する従業員は社会人経験がなく、また多くの場合ジェネラリストとして採用されるため、労働契約上一定の職務能力があることが条件となっていません。新卒採用者の能力不足が明らかになった場合も、まず会社が問題点を指摘し、指導を行うことが求められます。また、配属された部署で能力不足であったとしても、配置転換によって適性を見極める余地があります。改善のための指導を十分に行わず、また配置転換などの措置をとることなく解雇することは不当解雇になる可能性が高いでしょう。

3.中途採用者の能力不足

中途採用の場合、新卒採用と異なり、経験やスキルを考慮して、即戦力として採用することが一般的です。労働条件も相応の能力を発揮することを前提としたものになることが多いでしょう。このことから、新卒採用者に比べると、中途採用者の解雇は能力不足を理由とするケースが多くなっています。裁判例でも新卒採用者に比べると、中途採用者を能力不足で解雇することは適法とされやすい傾向にあります。もっとも、中途採用者に対して会社の要求水準が高いことが合理的であるとしても、能力不足を理由として解雇する場合は、会社の要求が合理的であることが必要です。以下のような事情がある場合には、中途採用者に対する能力不足を理由とする解雇は適法と判断される場合もあるでしょう。
  • 雇用契約書の業務内容欄に、会社がその労働者に求める能力を具体的に記載していた
  • 一定の能力があることを前提とした採用であることを会社が正確に伝え、労働者側も明確に認識し、その客観的な証拠が存在している
  • 採用時に労働者が申告した業務経験や資格・スキル等に虚偽や誇大表記があり、実際の職務能力も会社の要求水準を満たしていない

4.専門職・管理職の能力不足

専門職や管理職として、職種・地位・業務内容を特定した上で雇用されている場合、会社が被採用者に対して高い水準の能力を期待することは合理的といえます。従って、一般の労働者と比較すると、能力不足を理由とする解雇が認められやすくなります。また、入社の時点で労働契約上、「営業部長」「チーフエンジニア」等と職務上の地位が明確に示されているため、解雇回避策としての配置転換は不要と考えられます。ただし、前の職場との間で仕事の進め方等の違いが大きい場合等、事情によって一定の改善指導を行うことが必要といえるでしょう。

能力不足による解雇を有効とした裁判例

能力不足を理由とする解雇を適法・有効と判断した裁判例には、以下のものがあります。

1.ヒロセ電機事件(東京地裁2002年10月22日付判決)

本件は、業務経験と英語能力を見込んで中途採用した社員が、期待されたレベルの英語力がなく、業務を改善する努力もしなかったために会社が能力不足を理由に解雇したケースです。
事実の概要
Xは、2000年11月1日にY社と雇用契約を締結しました。Y社はXを採用するにあたり、履歴書・職務経歴書に記載された「電子部品の品質管理業務経験、特にY社の重要顧客で品質管理に厳しいN社で4年の勤務歴があること」旨の業務経験を評価するとともに、相応の英語力を有するとみなしていました。Xは技術センター品質管理部で海外クレーム対応や品質情報収集等の業務に従事していたところ、Y社は、2001年3月14日、同社品質管理部長名義でXに対し解雇通知を行いました。同社人事部長名義で発行した同月27日付退職証明書には、Xが「業務命令に従わず、同僚への誹謗や職場規律違反を繰り返し、業務の進め方や知識・技能を学ぶ姿勢もなく、業務上期待される英語力にも問題がある」ため、「就業規則第37条2号の解雇事由【業務遂行に誠意がなく知識・技能・能率が著しく劣り将来の見込みがないと認められるとき】に該当する」と記載されていました。Y社は、解雇通知とともにXの1か月分の賃金に相当する金額を解雇予告手当としてXの口座宛てに支払いました。なお、Xは父親がインド人、母親が日本人であったため旧来インド国籍であったところ、日本人女性との結婚により日本国籍を取得していました。
裁判所の判断
東京地裁は以下の理由により、解雇を有効として原告の請求を棄却しました。
(1)解雇事由である就業規則第37条2号の該当性について

①中途採用の場合の【業務遂行に誠意がなく知識・技能・能率が著しく劣り将来の見込みがない】の意味
本件は、原告の職歴、特に海外重要顧客であるN社の勤務歴に注目し、業務上必要な語学力、品質管理能力を備えた即戦力となる人材と判断して品質管理部海外顧客担当で主事1級という待遇で採用し、Xもそのことを理解して雇用された中途採用の事案である。従って、長期採用を前提として新卒採用する場合と異なり、被告が最初から教育を施して必要な能力を身につけさせる、あるいは適性がない場合に異なる部署への配転を検討すべき場合ではない。労働者が雇用時に予定された能力を全く有さず、これを改善しようともしない場合には解雇せざるを得ないのであって、就業規則第37条2号の規定もこのような趣旨と解すべきである。

②原告Xの業務遂行態度・能力が就業規則第37条2号に該当するか
Xは、前職のN社では勤務経験が短期間にすぎず、品質管理に関する知識や能力が不足していた。また、Xの作成した英文報告書には許容しがたい誤記や誤訳が多数あり、期待されていた英語能力に大きな問題があるといえる。さらに日本語能力についても、日本語でY社に提出する文書を妻に作成させながら、自己の日本語能力が不十分であることを申し出ず、日本語能力を過大評価させていたことから、実際には履歴書などで想定された能力よりもきわめて低いものであった。加えて、英文報告書を海外事業部に提出する際には上司の点検を経るという業務命令にも違反した上、上司の指導に反抗するなど勤務態度も不良であった。これらの点にかんがみると、就業規則第37条2号の【業務遂行に誠意がなく知識・技能・能率が著しく劣り将来の見込みがない】に該当すると認められる。

(2)解雇権濫用の成否について
(下記の事実が認められるため)本件解雇が著しく不合理であり、社会通念上の相当性を欠くとは到底言えない。
  • Xの職務能力は当初予定されたよりも大幅に低いものである
  • Y社に提出する日本語文書を妻に作成させていた行為は労働契約上の債務不履行に他ならない上、それがY社のXに対する評価に誤解を与える性質であることを考慮すると何ら解雇権の濫用を基礎づけるものではない
  • Xは「N社の在職期間」などの重要な経歴を詐称しており、本件解雇が入社後4ヶ月半程度でされたものである

2.学校法人A学園(試用期間満了)事件(那覇地裁2019年11月27日付決定)

事実の概要
原告Xは、学校法人であるY社に日本語教師として採用され、学生や職員が任意で受講できる日本語教育の授業を担当した他、学生や職員の言語補助の業務に従事していました。Y社は最初の試用期間(3か月)満了前に、Xのコミュニケーションスキルや協調性に問題があることを理由に試用期間を延長するとともに、Xに対してこれらの問題の改善を求めていました。延長後の試用期間満了時、Y社は主としてコミュニケーション能力不足を理由にXを解雇しました。Xは、コミュニケーションについての指導をほとんど受けていなかったことや、自身のコミュニケーション能力に問題はなかったことを理由に、Y社に対して解雇無効及び、労働契約上の権利を有する地位の仮確認及び解雇後の賃金支払いの仮処分申立てを行いました。
裁判所の判断
那覇地裁は以下の理由により、解雇を有効として申立てを却下しました。
  • Xの言動に鑑みると、Yの副学長等がXのコミュニケーション上の問題点を伝えても自身の問題点を省みず、相手の意図を正しく読み取れない、自身の意見に固執するなどの姿勢が見てとれる
  • Xはミーティングで最低限の発言もしようとせず終始素っ気ない態度をとっていたことから、同僚との交流を避けていたことが推認できる
  • XはY側に無断で試験時期を変更する・退勤時間を他の同僚とずらす・勤務時間内にボランティアに参加するなどの行動をとっていた
  • 上記に加えて、Xの態度があくまで自身の正当性の主張に終始していることから、Xが職場で求められる最低限のコミュニケーション能力を備えていなかったことが容易に想像できる
  • 上司からの指導によって改善できる見込みは薄いほか、雇用継続によって職場環境が悪化することが容易に想像できる

能力不足による解雇を無効とした裁判例

一方、以下のケースでは、裁判所は能力不足を理由とする解雇を違法・無効と判断しました。

1.エース損害保険事件(東京地方裁判所2001年8月10日付決定)

事実の概要

X1:1973年入社、2001年の解雇当時勤続27年の53歳の正社員
X2:1976年入社、同解雇当時勤続24年の50歳の正社員

Y社は1999年7月頃、人員削減のために希望退職を募集するとともに全従業員を異動させる制度を導入し、同年12月にX1を熊本支店、X2を前橋支店に配属させました。さらにY社は、2000年8月31日にX1・X2に対して退職要求及び自宅待機命令を行い、2001年3月14日、就業規則記載の解雇事由(能力不足)によりX1・X2を解雇しました。解雇に至った経緯には以下のような事実がありました。

  • X1・X2はY社の労働組合に加入しており、労働組合はY社の人員削減策に対して労働委員会への斡旋申請、争議通告を行っていたが、Y社は斡旋を拒否して人員削減策を強行し、労働組合が東京都地方労働委員会に救済申立てを行っていた
  • X1は熊本支店異動後に、店長から「給料泥棒」「組織の都合にはまらなければ辞めてもらうしかない」「顔も見たくない、辞表を持ってこい」など、度重なる侮辱的言動を伴う退職強要を受けていた
  • X2は前橋支店配属になるまで地方支店の勤務経験がなかった上、前橋支店の未経験業務に対して支店長等の指導を全く受けられず、外回りで自動車運転が不可欠な中自動車免許がないため不便を強いられていた
  • X1は熊本支店長に、過酷な長時間労働による心身の疲弊や、高齢の両親の介護の必要などを理由に実家近くの支店への転部願いを提出したが支店長を始め会社側から応答がなかった
  • X2も前橋支店長に対して、自身の技能を活かせる英文契約関係部署への転部願いを提出していたが、これに対しても応答がなかったX1・X2は解雇権濫用による解雇無効を主張し、従業員の地位保全及び解雇日以降の賃金支払いの仮処分を申請しました。
裁判所の判断
東京地裁は以下の理由に基づいて、本件解雇を解雇権濫用により無効としました。
  • Y社のX1、X2に対する配転は、リストラの一環として「全社員の配置を白紙にして再度配置する」目的で短時間で実行されたもので、本人の希望や業務上の必要性を考慮したものではなく、かつ結果としても適切な配置ではなかった
  • Y社の一方的な合理化策の結果として不適切な部署に配置されたX1、X2らは、当初から職務能力を発揮する上で障害を抱え、Y社に対して多大な不安や不信感を抱かざるをえなかったといえるから、X1、X2らには宥恕すべき事情がある
  • さらに、X1については、熊本支店長から繰り返し些細な出来事を取り上げて侮辱的な言辞で非難され、かつ退職を強要されていた中、恐怖感から落ち着いて仕事ができる状況ではなかった。このような状況下で生じた過誤(仕事のミス等)などを捉えて解雇事由とすることは甚だしく不適切で是認できない
  • X2についても、人員削減により前橋支店に正社員が不在になった状況であえて不適切な配置をしたのであるから、その中で生じた過誤等はY社側の人事の不適切に起因するというべきで、X2の責任のみに帰することは相当ではない
  • Y社は当初からX1、X2らを他の適切な部署に配置する意思がなく、研修や適切な指導を行うこともなく、組織から排除することを意図して、任意に退職しなければ解雇するとして退職を迫りつつ長期にわたって自宅待機とした
  • これらの点に加えて、Y社側が解雇事由と主張する事実が重大なものとはいえないことを合わせると、本件解雇は解雇権の濫用にあたり無効である

2.セガ・エンタープライゼス事件(東京地裁1999年10月15日付決定)

事実の概要
Xは、ゲーム機器の製造販売を業とするY社に1990年に入社後、数か所の配置転換を経て1997年8月からCS品質保証部ソフト検査課に勤務していたところ、Y社から1998年12月10日付でパソナルーム※勤務を命じられ、翌月の1999年1月26日付書面で「3月末に退職する」旨の退職勧告を受けました。Xが退職勧告を拒否したところ、Y社は同年2月18日付書面で、同社就業規則第19条2号の解雇事由(労働能率が劣り、向上の見込みがないと認めたとき)に該当するとして、同年3月31日をもって解雇する旨Xに通知しました。Xは解雇無効を主張し、従業員の地位の確認や解雇後の賃金の支払い等の仮処分申立てを行いました。

本件では①Xの人事考課の順位が下位10%未満であったことが上記就業規則の解雇事由「労働能率が劣り工場の見込みがない」に該当するか、②Y社が行った指導や教育が解雇を回避するための十分な措置といえるかが主な争点となりました。※パソナルーム:Y社人事部に所属する部署で、従前の所属部署から異動の依頼を受けた従業員が、受入れ部署が決まるか他社への就職が決まるまで一時的に待機する場所として設置されたもの

裁判所の判断
東京地裁は、以下のような理由に基づいて、解雇を無効としました。

①について:解雇が有効となるためには、平均的な水準に達していないというだけでは不十分であり、著しく労働能率が劣り、しかも向上の見込みがないときでなければならない。人事考課が下位10%未満であったとしても、当該人事考課は相対評価であって絶対評価ではないことからすると、「下位10%未満」であることをもって、直ちに「労働能力が著しく劣り、向上の見込みがないということはできない。

②について:会社は数回にわたり配置転換を行い、社員研修や新入社員の指導等を担当させる等の事実はあったものの、労働能率を向上させるための体系的な教育、指導を十分に実施していたとはいえず、いまで「労働能力が劣り、向上の見込みがない」とはいえない。また、会社側は「雇用関係を維持すべく努力したが、原告を受け入れる部署がなかった」と主張するが、原告が面接を受けた部署に異動できなかった理由は「意欲が感じられない」という抽象的なものであるため、会社側が雇用関係を維持するための努力をしたと評価するのは困難である。

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能力不足を理由に解雇された場合の対処法

能力不足を理由に解雇された場合は、次の手段をとるようにしましょう。

働き続ける意思を示す

能力不足を理由とする解雇が不当だと思ったら、ただちに解雇に異議を述べましょう。異議は、できれば内容証明郵便にて送ること、それが難しければ、せめてメール等記録に残る文書で送りましょう。裁判で解雇が無効と判断されれば、解雇以降の期間の賃金を請求できますが、賃金の請求をするためには「その会社で就労の意思があること」が前提となります。正式に内容証明郵便で異議を述べたいのであれば、我々弁護士に依頼をし、弁護士から不当解雇である旨の通知をすると良いでしょう。

解雇理由証明書の交付を求める

解雇通知を受けた場合、必ず解雇理由証明書の発行を求めてください。解雇理由証明書は解雇理由を具体的に記載した書類で、会社は労働者が請求した場合に遅滞なく発行しなければなりません(労働基準法第22条2項)。

解雇理由証明書は、主に次の点で重要な意味を持ちます。
  • 解雇が法的に有効であるか、つまり解雇理由に客観的合理性と社会的相当性が認められるかを判断する上で必要な資料となる
  • 裁判で不当解雇を争う場合に会社側が「解雇ではなく労働者が自主的に退職した」と主張するのを防ぐことができる
  • 会社側が解雇当初とは異なる理由を主張した場合に、解雇理由証明書があることで裁判官に対して労働者側に有利な心証を与えることができる

失業手当の申請手続きを行う

解雇された労働者は、就労意思がある場合にはハローワークに申請して雇用保険の基本手当(失業保険給付)を受けることができます。

1.能力不足が理由の解雇は会社都合か自己都合か

解雇された場合、失業保険の申請手続き上原則として「特定受給資格者」(いわゆる会社都合退職扱い)となります。例外的に、労働者の責めに帰すべき重大な理由により解雇された場合(重責解雇の場合)は、「特定理由離職者」(自己都合退職扱い)となります。重責解雇に該当するのは以下の7つのケースです。
  • 刑法や職務に関連する法令に違反して処罰を受けた
  • 故意または重過失により会社の設備または器具を破壊した
  • 故意または重過失により会社の信用を失墜させ、または損害を与えた
  • 労働協約または労働基準法に基づく就業規則に違反した
  • 会社の機密を漏洩した
  • 会社の名をかたり利益を得た、または得ようとした
  • 他人名義を詐称し、または虚偽の陳述をしてその会社に就職した

能力不足を理由とする解雇の場合、通常は普通解雇となるため、重責解雇には該当しません。ただし、解雇の効力を争わずに離職する場合と、解雇の効力を争う場合で取扱いが異なる点で注意が必要です。

①解雇の効力を争わない場合
解雇の効力を争わずに離職し、再就職を目指す場合は、会社都合退職扱いとなるため「特定受給資格者」として失業保険の本給付を受けることができます。
②解雇の効力を争う場合
解雇の効力を争う場合、本給付を受けることができません。しかし、不当解雇を争う労働者の保護のため厚生労働省職業安定局が設けた「失業保険仮給付」を申請することができます。仮給付の待期期間は、原則として解雇の翌日から7日間です。仮給付の支給日数については、労働委員会命令または裁判の判決が確定するまでは特定受給資格者になれないため、自己都合退職扱いとなります。特定理由離職者(自己都合退職扱い)として失業保険の給付を受ける場合の支給日数等の受給条件については次項をご参照ください。

2.自己都合退職扱いのデメリット

自己都合退職扱いになった場合、会社都合退職扱いと比べると失業保険の受給条件や受給資格の点で不利になります。
自己都合退職会社都合退職
受給要件離職日以前の2年間に雇用保険の被保険者期間が通算12か月以上離職日以前1年間に被保険者期間が通算6か月以上
給付制限期間原則2か月なし
最短給付開始日原則2か月+7日(待期期間)経過後7日(待期期間)経過後
給付日数90日~150日90日~330日
最大給付額約125万円約275万円

この他にも、自己都合退職の場合は退職金の満額支給を受けられない可能性が高いなどのデメリットがあります。

3.自己都合退職扱いにされた場合の対処法

上記のように、解雇の効力を争わない場合は会社都合退職となります。しかし、会社側は会社都合退職者が出ることによって助成金申請で不利になるのを避けるなどの理由で、ハローワークに「自己都合退職」として届け出る可能性があります。そのため、まず会社から離職票の発行を受けたら、離職理由を確認した上で、自己都合退職扱いにされていた場合はハローワークに異議を申し出てください。
証拠を集める
能力不足を理由とする解雇の撤回や損害賠償などを求めて争う場合には、解雇が違法であることを証明する証拠が必要となります。裁判になった場合、会社側はあくまで会社に有利な証拠のみ提出してくるため、労働者側で十分な証拠を揃えておかなければなりません。能力不足を理由とする解雇の場合、有効な証拠として以下が挙げられます。
証拠の種類 備考(証拠の目的等)
すべての場合で有効な証拠
(1) 就業規則 就業規則の解雇事由規定の有無、及び解雇理由が当該規定に該当するか否かを確認するため
(2) 成績表・人事評価記録 会社の評価や成績の変化などを把握するため、入社直後から最近のものまで可能な限り集める
(3) 給与辞令 昇給の事実があると労働者側に有利な証拠となる
(4) 面談の録音音声 改善の評価についての発言や、労働者の質問に答えないなどの様子がわかると労働者側に有利な証拠となる
(5) 業務スケジュール・勤怠記録 労働者に過大な負担を強いていなかったか、労働者側の勤怠状況等で会社側の主張と矛盾がないかがわかる
(6) 日報 会社側が日報の労働者に不利な部分のみを切り取って証拠として提出する場合に備えて、可能な限り長期間の日報を集める
(7) 業務メール・チャット 違法な指示が出されたことの証拠、会社側の主張との矛盾点を指摘するため等
(8) 成果物のデータ 成果物の質が低い旨の主張をされた場合の反論材料
(9) 業務改善指導書・PIP(業務改善プログラム) 「改善の見込みがあった」と判断されていたことの証拠
中途採用の場合に特に有効な証拠
(10) 履歴書・職務経歴書 どのような業務経験や能力を期待されて採用されたかを明らかにするため
(11) 求人票・採用時のメール等文書上のやり取り 同上
外資系企業で特に有効な証拠
(12) オファーレター・ジョブディスクリプション 履歴書・職務経歴書と同様の目的

証拠によっては、専ら会社が保管していて労働者側の手元に残っていないというものもあると思います。その場合は、会社に対して証拠開示請求を行うことができます。会社が労働者個人に対して証拠開示に応じない場合は、弁護士に依頼することで開示してもらえる可能性が高くなります。

弁護士に相談する
能力不足を理由とする解雇に対して納得できない場合、会社と交渉して解雇撤回請求や損害賠償請求を行う必要があります。しかし、労働者単独で会社と交渉したり、労働審判や裁判で争うことは困難です。また、行政や民間の相談窓口を利用した場合も、会社との交渉等は労働者本人が行わなければなりません。能力不足を理由に解雇された場合、弁護士に相談するメリットについてより詳しくは次章をご参照ください。
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「能力不足」で不当に解雇されたら弁護士にご相談ください

会社に対して解雇の撤回を求めたり、未払いの賃金や残業代を請求することは、法律上認められた権利です。しかし、労働者個人が会社と交渉してこれらの権利を実現することは容易ではありません。会社が交渉に応じてくれなかったり、顧問弁護士に依頼して解雇撤回も賠償金支払いも認めないということもよくあります。

弁護士に相談することで、弁護士が労働者の代理人として会社と対等に交渉できます。会社は、労働者から請求があった場合は会社が保管している資料を開示する義務がありますが、現実には労働者本人による開示請求に応じてくれる可能性は低いでしょう。この点、弁護士は労働者を代理して証拠開示請求することができます。なお、会社が証拠開示に応じない場合、訴訟手続で裁判所に文書提出命令申立てを行い、裁判所の命令を経て裁判での原告側の証拠とすることが可能です。

会社側との交渉がまとまらなかった場合でも、労働審判や訴訟等の手続きをすべて任せられます。ウカイ&パートナーズ法律事務所では、能力不足を理由とする解雇を含む労働問題の相談につき、30分無料相談が可能です。労働問題に知見のある弁護士が対応しますので、解雇等でお困りの方はお気軽にご相談ください。

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まとめ

日本では労働者の解雇に対して厳しい法的規制が行われているため、裁判でも能力不足を理由とする解雇が不当解雇と判断されるケースは少なくありません。それでも、多くの会社では、能力不足を理由に解雇をしてきますし、労働者の方々も仕事でミスをして叱責されたりすると「クビになるのでは?」と恐れる方は少なくないでしょう。

しかし、「職務能力」の判断は恣意的に行われていることがよくあります。また能力不足とされた原因に、パワハラ等のハラスメントによる心身の不調があるケースも珍しくありません。裁判所は能力不足を理由とする解雇の適法性について厳格に判断しているので、理不尽なパワハラ等が背景にある場合には不当解雇になる可能性が高いでしょう。能力不足を理由とする解雇が不当だと思える場合は、とるべき方法について弁護士にご相談ください。

ウカイ&パートナーズ法律事務所では、所属する全弁護士が、能力不足による解雇が有効か無効かを検討・判断した上で、とりうる対処法について懇切丁寧にお答えします。当事務所では、初回30分無料で法律相談をお受けしています。「能力不足」で解雇されて対処にお困りの方は、ぜひ当事務所の無料法律相談をお申込みください。

電話相談はできませんので、渋谷の事務所にご来所下さい。

 

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