
「勤めていた工場が閉鎖されたのが理由で解雇されたのですが、同じ工場から他の事業所に移動になった同僚がいて、閉鎖前に声がかかってたらしいです。会社の業績が良くないのは聞いていたし、成績が良かった人を会社に残すのは理解できるとしても、事業縮小とか整理解雇について会社から何も説明がなかったので納得できません。不当な解雇として、解雇を撤回してもらうことはできるでしょうか?」
当法律事務所において、我々弁護士は、経営難の会社を整理解雇された方から、このような相談を頂くことがよくあります。整理解雇は、労働者側に非がなく、会社の経営上の理由のみによって行われることから、適法と認められるには厳しい条件をクリアしなければなりません。それでは、どのような場合に、整理解雇が不当解雇となる可能性があるでしょうか。
本記事では、整理解雇について、以下の点を中心に解説します。
整理解雇とは、業績が悪化した企業が、経営再建のための人員削減を目的として行う解雇をいいます。ここでは、まず整理解雇と他の解雇、及び「リストラ」との違いを確認しましょう。
解雇には、整理解雇の他に「懲戒解雇」と「普通解雇」があります。懲戒解雇は、就業規則等の会社の明文の規程で定められた懲戒事由に該当することを理由とする解雇で、業務関連の犯罪行為等の重大な規律違反があった場合に行われます。
普通解雇は、懲戒解雇と整理解雇のいずれにも該当しない解雇をいい、原則として就業規則または労働契約上の解雇事由に該当する場合に行われます。
これに対して、整理解雇は、労働者側に原因がなく、専ら会社の経営上の理由によって行われる点で異なります。
整理解雇と、懲戒解雇・普通解雇との違いを表にまとめると以下のようになります。
| 整理解雇 | 懲戒解雇 | 普通解雇 | |
| 解雇理由 | 経営上の理由(人員削減) | 就業規則、賞罰規程等に定められた懲戒事由に該当する非違行為 | 原則として就業規則、労働契約に定められた解雇理由に該当するもの(能力不足、勤務態度不良、勤怠不良) |
| 対象者 | 所属部署、年齢、会社への貢献度等を考慮して選定された従業員 | 懲戒事由に該当する非違行為を行った特定の従業員 | 著しい勤務態度不良、勤怠不良、能力不足等の特定の従業員 |
| 法的要件 | 人員削減の必要性 解雇回避努力義務の履行 対象者選定の合理性 適正な手続を経ている | 就業規則、賞罰規程等に定められた懲戒事由に該当すること | 原則として就業規則、労働契約に定められた解雇理由に該当すること |
| 実施手順の特徴 | 解雇予告または予告手当支払 対象者や労働組合への説明・協議を十分に行う必要 | 解雇予告または予告手当支払い(不要の場合あり) 弁明の機会を与える | 解雇予告または予告手当支払い 弁明の機会を与える |
| 失業手当の受給資格 | 会社都合退職扱い | 原則として会社都合退職扱い 雇用保険法第23条2項の重責解雇に該当する場合は自己都合退職扱い | 同左 |
| 退職金 | 請求できる | 就業規則または賞罰規程の定めによる(請求できない場合が多い) | 就業規則または賞罰規程の定めによる(請求できる場合が多い) |
日本では、1990年代後半から「整理解雇」の意味でリストラという言葉が使われだしました。しかし、リストラは「再構築」を意味するrestructuring(リストラクチャリング)の略語です。つまり、本来の「リストラ」が指すのは広い意味での組織再編・合理化の施策です。これには、業績悪化した会社の収益改善のための人員削減等に加えて、業績好調な会社が成長部門の強化を目的として行う人事異動や設備投資等も含まれます。
従って、整理解雇よりもリストラのほうが概念が広く、リストラに含まれる「業績が悪化した会社・低迷する会社が行う、会社再建のための人員削減」の手段の1つとして行われるのが整理解雇であるといえるでしょう。
前述のように、日本では、解雇が認められるためには合理性・相当性が必要です。特に、労働者に落ち度がなく、専ら会社の都合により行われる整理解雇では、合理性・相当性はより厳しく判断されます。判例上、整理解雇の合理性・相当性の基準として、以下の4つの要件を満たしていることが求められます。
以下、4要件について順にご説明します。
まず、人員を整理しなければならない経営上の合理的な理由があることが必要です。「倒産が予見される」などの緊急性が必要か否かについては判断が分かれています。緊急性が認められない場合は、他の要件をより厳格に判断するなどの調整が行われます。
人員削減の必要性については、従業員や労働組合との協議で根拠資料を示すことが必要です。
たとえば、以下に挙げるような「解雇を回避するための手段」を最大限に講じていることが求められます。
これらを全部実施しなければならないわけではありませんが、その会社が実施できる限りの措置を講じても、経営難を克服できないといえることが必要です。
整理解雇の対象選定の基準及び、基準の適用についても公平で合理的なものであることが求められます。
解雇対象選定の基準として相当なものの例として、勤務地、年齢、担当業務、家族構成、会社への貢献度等が挙げられます。
たとえば、「単に給与削減等の労働条件切り下げに従わない者」を解雇したり、同じ事業所の一部の従業員には「他部署に配転できる」と通知し、その他の従業員に対して解雇通知する等の対象選定は、判例上合理性を欠くとして無効とされています。
整理解雇を行うにあたっては、会社が労働者側に対して整理解雇の必要性、時期、方法等を十分に説明し、両者が十分に協議を行って合意を得た手続を経ることが求められます。このような手続を経ずに、抜き打ち的に整理解雇を行うことはできません。
上記の4要件は法令で明文化されていないため、4要件すべて満たしていなければ整理解雇が無効になるか、4要件を総合的に判断するかで判例の立場が分かれています。最近は後者の立場をとる判例が主流となっています。なお、裁判では被告である会社側が、要件を満たしている旨を証明しなければなりません。
整理解雇は、以下の手順で行われます。
①整理解雇の具体的方針を決定する
②従業員や労働組合と協議する
③希望退職者募集・退職勧奨・有期雇用従業員の雇止めを行う
④対象者に解雇予告を行う
以下、順に確認していきましょう。
まず、以下のような事項について、基準や条件を明確にします。
整理解雇する人数は、経営指標等の具体的な数値に基づき、必要人数を算出して決定します。定年退職者等、確実に退職が見込まれる人員の存在や人数も考慮する必要があります。
対象者の選定は、整理解雇の4要件の3番目の要件である「解雇対象選定の合理性」に沿うように、明確な基準を設けて行います。
退職金の金額は、会社の就業規則や退職金規程に従って算出します。退職金の支払額の基準の定め方について法律上の規定はありませんが、整理解雇の場合は普通解雇や自主退職の場合に比べて上乗せすることが望まれます。
従業員全体への説明、解雇対象者との面談、労働組合との協議等について、設定方法や説明・協議の内容、頻度等を決定します。
解雇日の決定にあたっては、特に以下の点を考慮する必要があります。
整理解雇の4要件には、従業員や労働組合との間で十分に説明と協議を行うことが含まれます。整理解雇の具体的方針が決まったら、会社側から対象者や労働組合に方針を伝えます。労働者側の意見聴取も十分に行い、希望退職に応じる、退職条件を改善する等の柔軟な対応をとる必要があります。
整理解雇の4要件の1つである「解雇回避努力義務の履行」として、前章の「要件2」で例示した代替手段を講じる必要があります。
整理解雇の対象者が希望退職募集に応じなかった場合、まず退職勧奨を行います。退職勧奨に応じる場合は、特別退職金が支給される可能性があります。希望退職・退職勧奨いずれにも応じなかった場合は、解雇予告が行われます。
ここでは、整理解雇の適法性が争われた裁判例をご紹介します。
整理解雇が有効とされた裁判例として、日本航空[大阪]整理解雇事件及びカーニバル・ジャパン事件を見てみましょう。
大手航空会社が、会社更生手続期間中に客室乗務員の休職者を対象に行った整理解雇の「除外要件」である復職基準日の設定の合理性が争われたケースです。
A社は、客室乗務員の休職者を対象として整理解雇を行うと発表した際、当初2010年8月末の「基準日」までに職場復帰した場合は解雇対象から除外していました。その後、労働組合との団体交渉の結果、基準日は9月末に延長されましたが、その旨が公表されたのは同年11月でした。これに対して、客室乗務員Xは基準日が9月末に延長された事実が公表される前の10月に復職したところ、Xを含む客室乗務員84名が同年12月末付で解雇されました。
Xらは、解雇無効を主張し、従業員の地位にあることの確認及び未払賃金支払等を求めて提訴しました。第一審(大阪地裁2015年1月28日付判決)は、人選基準について「基準日を遡って設定したことは合理性を欠く」として整理解雇を無効と判断したため、Y社側が控訴しました。
大阪高裁は、以下の理由により整理解雇を有効として、原審を破棄差戻しました。
会社更生手続は、いわゆる再建型の手続であり、基本的には事業継続が前提とされていることから、会社清算や破産手続中の場合とは異なり、整理解雇の4要件を適用することには合理性がある。すなわち、①人員削減の必要性・②解雇回避努力義務の相当性・③人選基準の合理性・④解雇手続の相当性をそれぞれ検討し、これらを総合的に考慮して判断するのが相当である。
Y社の削減目標人数の算定は合理的であり、会社更生のために速やかな人員削減を行う必要があったと認められる。
以下の理由により、Y社は必要とされた余剰人員の削減の大部分を、特別早期退職措置及び希望退職措置の募集によって実現したものといえるから、解雇回避努力義務は果たされていたと認められる。
①病欠・休職者を基準とすることについて
整理解雇の人選において、過去における企業への貢献度を考慮することによって将来の貢献度を判断することは合理的である。このことからすれば、過去の貢献度を評価するにあたって、過去の一定期間において、病気欠勤や休職により労務の提供ができない期間(欠務期間)の有無を確認することも合理性を有する。そうすると、過去の一定期間に欠務期間があった者は、そのような欠務期間なしに勤務を行ってきた者と比較して、Y社に対する過去の貢献度が低いと評価することは合理的である。
②復帰日の基準を設けることについて
Y社が、団体交渉における譲歩として復帰日の基準を設けるにあたっては、①の基準とその例外としての復帰日基準の設定は異なる価値基準をどの範囲で採用するかの問題であるから、復帰日基準の適用範囲の設定につき、裁量の余地が認められる。この見地に照らせば、本件復帰日基準を9月27日と設定したことについても、合理的裁量の範囲内であると解すべきである。
③人事考課基準について
人事考課基準について、仮に「整理解雇の方針を検討する時点」での人事考課によって判断するとすれば、会社が整理解雇対象を選別するために人事考課を操作することが可能になり、解雇者選定の基準の定め方として合理性を欠くことになる。このことから、Y社が人事考課基準を「整理解雇を実施する年度以前の3年間の人事考課」とすることには、合理性があるといえる。
④年齢基準について
以下の観点から、Y社が定めた年齢基準は合理的である。
Y社は労働組合との間で十分な協議・交渉を経て、組合の要求にも譲歩しながら基準を定めて整理解雇を行ったものと言えるから、解雇手続は相当性を有する。
(判決理由ここまで)
本件では、会社更生手続という、極めて業績の悪化した局面で行われた整理解雇であったことから、まず「整理解雇の4要件を適用すべきか」について問題となっていました。仮に会社清算や破産手続であったとすれば、経営再建の目的で行われる整理解雇の4要件は適用されないためです。高裁判決では、会社更生手続が「事業継続を前提とする、いわゆる再建型の手続である」ことを理由に、整理解雇の4要件が適用されると判断しました。
また、主要な争点となった「解雇者選定基準の合理性」について、以下の判断を示した点で注目されます。
ダイヤモンド・プリンセス号運航会社の日本法人におけるコロナ禍での整理解雇の有効性につき、主に解雇回避努力義務の相当性が問題となったケースです。
旅客船運航を業とするY社が従業員Xを整理解雇したことに対し、Xは解雇無効を主張し、以下の請求により提訴しました。
東京地裁は、主な争点であった解雇回避努力義務の相当性及び解雇手続の相当性につき以下のように判示して、整理解雇を有効と判断し、Xの請求を棄却しました。
Y社が以下の施策を実施したことについては、解雇回避のために一定の経費削減を行ったものと評価できる。
以下の事情が認められることから、Y社が希望退職者募集をしなかったことをもって、解雇回避努力が不十分であったとはいえない。
以下の事情に照らして、Y社が2020年6月4日時点で雇用調整助成金を受給することなく従業員23名に対し退職勧奨をしたことはやむを得ないというべきである。
以下の事実が認められることから、Y社の解雇手続は相当と認められる。
(判決理由ここまで)
本件では、コロナ禍で経営がひっ迫した企業が、解雇回避の施策として希望退職者募集を行わなかったこと、及び雇用調整助成金を受給せずに約3分の1の従業員に対して退職勧奨を行ったことが、整理解雇の要件2「解雇回避義務の履行」を満たさないのではないかが特に問題となりました。
希望退職者募集を実施しなかった点については、「Y社の正規従業員数が少ない中で各従業員の役割が細分化されていたため、少人数でも退職者が出ると組織の存続が危うくなる」という見解を示しています。正社員の人数、役割分担等がY社と同様の状況にある企業が少なくない中で、この見解は希望退職者募集の必要性について一つの判断材料となるでしょう。
また、雇用調整助成金を受給せずに退職勧奨を行った点についても、受給可能額や受給期間に照らして、仮に受給したとしてもY社の雇用維持は困難であったため、やむを得ない措置であったと判断しています。解雇回避策として、雇用調整助成金受給が「企業規模や経営状況にかかわらず必須であるとまではいえない」と解釈できる点で、企業が解雇回避策を講じる上で参考になると考えられます。
整理解雇が無効とされた裁判例として、千代田化工建設事件及び森山事件をご紹介します。
経営規模縮小のために分社化を行い、その過程で会社が命じた転籍を拒否した労働者に対する整理解雇の有効性が争われたケースです。
石油等の産業用設備の設計、設置、管理等を目的とするY社は、経営が悪化してきたことから、まずA工場を分社化して、A工場に勤務する従業員を移籍させることにしました(以下「第一次非常時対策」)。第一次非常時対策では賃金が30%減額される一方で退職金が加算されることにつき、労働組合との協定が成立していました。この移籍には、A工場の技能従業員175名のうち168名が同意し、6名が同意せずに退職を希望しました。しかし、溶接工Xだけが移籍を拒否して残留を希望したため、Xは本社人事課に配属されました。
その後、Y社は第二次非常時対策として子会社に余剰従業員を移籍することにしましたが、Xはこの移籍も拒否しました。Y会社の人事部長Zは、Xと6回にわたり面談を行い、他方でY社内でXを活用できるポストを探したものの適切なポストが見つからず、またXの従来の処遇で行える仕事を同業他社や職業安定所に照会しましたが、適当な仕事は見つかりませんでした。
そこでY社がXを解雇したところ、Xは解雇無効を主張し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めて訴えを提起しました。
第一審(横浜地裁1992年3月26日付判決)はXの請求を認容したため、Y社が控訴しました。
東京高裁は、以下の理由により控訴を棄却しました。
Y社の規模、経営内容からして、Xを直ちに解雇しなければならない切迫性、緊急性があったとは認めがたい。とすれば、本件会社の正当性は、他の移籍に応じた者との人事の公平を図ることにある。
確かに、移籍の対象となった技能系労働者は、希望退職者を除きすべてが賃金の低下を受け入れて移籍に応じたのに、Xだけ従前の賃金を維持したまま居続けることは不公平と映る面があるかもしれない。しかし、もともと同意による移籍は、労働者と旧使用者との合意解約と新使用者との労働契約の締結であり、人員削減の相当の必要がある場合に限り使用者の一方的意思表示により認められる整理解雇とは本質を異にする。従って、単に移籍者と、移籍に同意しない者との待遇を比較し、その均質化のために整理解雇が許容されるということにはならない。
たしかに、「移籍に応じない場合はどうなるか」という労働者の質問に対して、Y社が「その場合は社外で仕事を見つけてもらうほかない」等と、暗に解雇を示唆した発言をしていたことも認められる。しかし、整理解雇の場合は、その認められる要件が厳格に制限されるのであり、使用者側で「移籍に応じない者は解雇する」旨ほのめかしたからといって整理解雇の要件が緩和されるものではない。また、逆にそのような状況の下でXが移籍を拒否することが労働契約上の信義にもとり、被用者としての権利を濫用するものであるとも認めがたい。
なぜなら、業務縮小などに伴う整理解雇が許容される要件は、客観的に定まるものであって、労働者として「移籍か解雇か」の二者択一を迫られるものではないからである。以上より、本件解雇は、いわゆる整理解雇の要件を満たしておらず、解雇権を濫用したものとして無効である。
(判決理由ここまで)
本件では、整理解雇の有効要件の1つである「解雇回避の努力」を検討する上で、「子会社化、及び転籍という施策自体には経営上の合理性がある」としつつ、大半の従業員が転籍に応じたことで会社は「既に経営規模の縮小を達成したのであるから、残る一人を解雇するまでの必要性がない」と判断し、かつ「転籍に応じない労働者を解雇しなければ不公平」とする会社の主張を退けている点で注目されます。
コロナ禍で観光バス会社が行った、業務縮小を理由とする整理解雇の効力が争われたケースです。
主に貸切観光バス事業を営むY社は、2020年2月中旬以降、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、海外から日本への観光客が激減したことによって貸切バスの運行事業ができなくなりました。Y社は廃業を回避するために、以下の措置をとりました。
2020年3月17日、全従業員が参加するミーティングを開催し、以下の内容を従業員に説明しました。
その上で、Y社社長が運転手らに対して、夜行バスの運転に協力してもよい者は挙手するよう促したところ、15名の運転手のうち、挙手したのは3名にとどまりました。
Y社は、翌3月18日、人員削減をしなければ同社が廃業になるとして、前日のミーティングで挙手しなかったXを含む3名の運転手を整理解雇することを決定しました。3月20日、Xは他の運転手1名とともに営業所長から解雇を言い渡されました。営業所長はこの際、Xらが解雇対象となったのは、Y社が開始する予定の高速バスの運転を希望しなかったためと説明しました。
同年3月25日、XがY社から受領した解雇予告通知書には、同月31日付で解雇する旨及び、解雇理由として「コロナウイルス被害の拡大による業務縮小のため」と記載されていました。Xを含む4名の従業員が同日付で解雇または雇止めとなり、さらに同年6月1日付で1名が自主退職しました。その後、Y社は翌2022年7月2日に高速バス事業を開始するため運転手2名を雇入れましたが、観光バス事業についてはほとんど受注がなく、観光バス運転手4名は自宅待機となっていました。
Xは、解雇無効を主張して、雇用契約上の地位確認及び賃金仮払いの仮処分命令の申立てを行いました。
福岡地裁は、以下の理由により解雇を無効として、従業員の地位及び賃金仮払いの仮処分を認めました。
債務者(Y社)につき、以下の事情を考慮すると、その後高速バスの運転手2名を雇用したことを考慮しても、人員削減の必要性があったことは一応認められる。
しかしながら、Y社は、人員削減の規模や人選基準等は説明せず、希望退職者を募ることもないまま、翌日の幹部会で解雇対象者の人選を行い、解雇対象者から意見聴取を行うこともなく、直ちに解雇予告をしたことは拙速といわざるを得ず、本件解雇の手続は相当性を欠くというべきである。
Xが解雇の対象に選ばれたのは、高速バスの運転手として働く意思を表明しなかったことが理由とされている。しかし、Y社が、全従業員参加のミーティングの中で、高速バスによる事業計画を乗務員に示して乗務の必要性を十分に説明したとは認められないうえ、高速バスを運転するか否かの意向確認は突然であり、当該ミーティングの場で挙手しなかったことをもって直ちに高速バスの運転手として稼働する意思は一切ないものと即断し、解雇の対象とするのは人選の方法として合理的なものとは認めがたい。
そうすると、本件解雇は、客観的な合理性を欠き、社会通念上相当とはいえないから、無効といわざるを得ない。従って、Xは、Y社の従業員としての地位を有することが一応認められるから、Y社に対し、賃金請求権を有するというべきである。
(判決理由ここまで)
本件決定は、人員削減の必要性について認める一方、解雇回避のための「希望退職者募集」を全く行わなかったこと、解雇対象者の人選の基準を説明しておらず、「ミーティングで高速バス運転希望の挙手をしていない」ことのみでは人選基準として不十分であり、またその説明も不十分であると判断しています。コロナ禍の観光バス会社のように、やむをえない状況で行われた整理解雇に対しても、適法要件を厳格に判断したものといえます。
整理解雇の通知を受けた場合、次のような対処を行うことをおすすめします。
会社は、解雇通知を受けた従業員が解雇理由証明書の発行を求めた場合、遅滞なく発行する義務を負います(労働基準法第22条2項)。従業員が解雇理由証明書の発行を請求したのに会社が発行しなかった場合は労働基準法違反となるため、適正な手続を経ない不当解雇となります。従って、解雇通知を受けた場合は、すぐに解雇理由証明書の発行を請求してください。
解雇理由証明書の発行を受けたら、記載を確認した上で、弁護士に相談することをおすすめします。
整理解雇の通知を受けた場合、対処する方針はおおよそ次の3通りがあります。
①②③ではそれぞれ、会社に対して行うことができる請求が異なります。労働問題に知見のある弁護士に相談することで、解雇の有効性について判断した上で、どれを選択するか、選択に沿ってどのような請求をするか具体的な道筋をたてることができます。
経営が悪化した会社であるからといって、整理解雇が簡単に認められるわけではありません。例えばコロナ禍で倒産の危機に陥った会社による整理解雇であっても、裁判で無効とされたケースがあります。解雇に納得がいかない場合は、弁護士への相談をおすすめします。
整理解雇された場合に、弁護士に相談することには、以下のようなメリットがあります。
整理解雇の有効性については、雇用習慣の変化や企業規模による体力の違い等を考慮して、4要件を基準としつつケースバイケースで判断されています。従って、個々の整理解雇が有効か否かの判断には詳細な知識が必要となります。弁護士に相談することで、多数の判例の知識や事務所で共有されている情報等に基づき、的確に判断してもらうことができます。
不当解雇を主張する場合は、解雇の撤回やバックペイ・慰謝料等を請求するための交渉を行います。また、不当解雇を主張しない場合も、未払い賃金や残業代、立替費用の未払いがある場合は、未払い額の請求が可能です。しかし、労働者が単独で会社と交渉して請求を認めてもらうことは容易ではありません。会社が交渉に応じてくれないことも多く、また交渉に応じる場合は顧問弁護士に依頼して一方的に請求を拒否する可能性もあります。
弁護士に交渉を依頼することで、労働者の代理人として会社と対等に交渉することができます。
会社との交渉がまとまらなかった場合も、労働審判や裁判等、より専門知識や労力を必要とする法的手続をすべて任せることができます。
弁護士に相談すると相談料がかかりますが、ウカイ&パートナーズ法律事務所では初回30分無料相談を行っています。無料相談の時間内で、以下のようなアドバイスを受けることができるでしょう。
無料相談を利用したうえで、弁護士に依頼するか検討しましょう。
ウカイ&パートナーズ法律事務所では、解雇や退職勧奨を含む労働問題の相談につき、30分無料相談が可能です。労働問題に知見のある弁護士が対応しますので、整理解雇への対処についてもお気軽にご相談ください。
整理解雇は、普通解雇や懲戒解雇と異なり、会社の都合のみによって労働者から従業員の地位を奪うものであるため、裁判では整理解雇独自の適法要件による厳格な判断が行われています。
「人員削減が必要といいながら新卒を採用している」
「残業がなくならないし、3か月くらい前から残業代も払われていない」
「同僚は配置転換で自分だけ解雇された」
「解雇の前日に1回きりの面談で解雇すると言われた」
例えば、このような事実がある場合、整理解雇の要件を満たさず不当解雇になる可能性があります。弁護士に相談することで、整理解雇が適法か、不当解雇の可能性があるか、どのような請求ができるかについて適切な判断とアドバイスを受けられます。また、整理解雇が適法と考えられる場合でも、未払い残業代等の請求ができる可能性もあります。整理解雇された場合は、できるだけ早く弁護士にご相談ください。
ウカイ&パートナーズ法律事務所では、所属する全弁護士が、業績悪化を理由とする解雇が有効か無効かを検討・判断した上で、とりうる対処法について懇切丁寧にお答えします。当事務所では、初回30分無料で法律相談をお受けしています。業績悪化を理由に解雇されて対処にお困りの方は、ぜひ当事務所の無料法律相談をお申し込みください。
