
「会社から退職勧奨を受けたのですが、提示された解決金は賃金1か月分だけでした。また、退職日が最初の面談の3日後、退職理由が自己都合退職になっていました。これでは転職活動も安心してできません。条件を改善してもらうことはできるでしょうか?」
当法律事務所では、退職勧奨を受けた方から、会社から受けた退職条件についてこのような相談を頂くことが増えています。退職勧奨は、解雇規制が厳しい日本で従業員を退職させる方法として広く行われていますが、あくまで任意の退職を促すものである以上、退職に応じる義務はありません。また、条件次第で退職に応じる意思がある場合も、条件の全てに同意できるまで、改善を求めることができます。それでは、提示された退職条件の一部または全てに同意できない場合は、どのように対処すればよいでしょうか?
そこで、本記事では退職勧奨で会社から提示された退職条件に納得できない場合の対処法について、以下の点を中心に解説していきます。
労働者が退職条件アップを求めたのに、会社が交渉に応じなかったり即時に拒否したとすれば、労働者はそのまま退職する義務はありません。労働者側が条件の改善を要求した場合、会社としては、退職してもらうために条件交渉に応じることが多いです。これは、退職勧奨を行う場合に、硬直した姿勢をとることによって労働者側と対立し、労働審判や訴訟に発展するリスクを意識しているためです。そのため、会社側に「合意退職で円満に解決する」「会社側に費用や労力の負担がかかっても早期に退職を確定させたい」という動機が強く、交渉余地が生まれやすいといえます。
退職可能条件について納得できなければ「退職に応じない」と拒絶し、逆に条件を突きつけることもあるでしょう。具体的な退職条件としては、以下のような項目が考えられます。
上記の各条件が改善されやすい理由をまとめると、以下のようになります。
| 交渉で改善されやすい退職条件 | 改善を見込める理由 |
| 解決金・退職金 | ・裁判や労働審判に進んだ場合に増大するコストや企業イメージ低下に比べて負担が少なく済むため |
| 退職日(在籍期間延長) | ・金銭に比べると会社側の譲歩コストが低い ・数か月単位の退職日延期を提示することにより退職金上積みの縮小で労使双方が妥協しやすい |
| 有給休暇の全消化・買取り | ・有給休暇は労働基準法で明確に認められた権利であるため会社が拒否しにくい ・実際には業務引継ぎが不要なケースが多いため会社の負担が少ない ・有給休暇買取りは会社側から要求することは労基法違反となるが労働者側の同意を条件に慣行的に認められている |
| 退職理由(会社都合退職への変更) | ・会社側の直接的な金銭負担がない ・能力不足等の労働者側の問題が乏しい場合や整理解雇に近い場合は特に認められやすい |
| 競業避止義務・秘密保持条項緩和 | ・過度な競業避止義務は無効になりやすいため労働者側が主張しやすい |
| 会社からの不利益情報の非開示・証明書の内容 | ・会社側の金銭的負担がない ・会社側が在職証明書、退職証明書の記載内容に固執するケースは少ない |
ここで、退職条件交渉にあたって会社側に提示する要求書の例をご紹介します。要求書は、内容証明・メール・PDF添付等の形式で送ることができます。退職金の上乗せ金額等、記載する改善要求の内容については弁護士への相談をお勧めします。
【要求書の記載例】
令和〇年〇月〇日
〇〇株式会社
代表取締役 〇〇〇〇 様
退職条件に関する要求書
私は、貴社から提案を受けている退職勧奨について、現在までの経緯及び貴社の対応を 踏まえ、以下の条件が整わない限り、退職には応じられません。
1.解決金(特別退職金)として金〇〇円(賃金〇か月分相当)を支払うこと
2.退職日を令和〇年〇月〇日とすること
3.上記退職日までの賃金及び未消化有給休暇を全て清算すること
4.退職理由は「会社都合」とし、離職票その他の公的書類においても不利益な記載をしないこと
5.本件に関する清算条項は、本退職に直接関連する事項に限定すること
6.競業避止義務その他、再就職を制限する条項を新たに設けないこと
上記条件について、書面による回答を令和〇年〇月〇日までにご提示ください。
なお、誠意ある回答を頂けない場合には、外部機関(弁護士・労働審判等)への相談も検討致します。
以上
住所
氏名
退職条件の改善を求める場合は、おおむね以下の流れで条件交渉を行います。
(1)初動対応(最初に退職勧奨を受けた際の対応)
↓
(2)退職勧奨の内容・背景の整理
↓
(3)退職条件の希望を整理する
↓
(4)会社と条件交渉を行う(場合によっては、弁護士に依頼)
↓
(5)会社・労働者間の条件すり合わせと最終合意
↓
(6)退職手続きを行う
以下、それぞれの段階で重要となるポイントを見ていきましょう。
最初に退職勧奨を受けた段階で、最も重要なのは「その場で退職に合意しない」ことです。会社側の人事担当者は、最初の面談時に退職届や退職合意書等の書類への署名を求めることが少なくありません。しかし、一度退職に同意する旨の書類にサインしてしまうと、後から取り消したり、条件の改善を要求したりすることが非常に難しくなってしまいます。また、違法な退職強要に該当する言動がある場合に備え、可能な限り面談内容を録音しておきましょう。
次に、退職条件以外の交渉材料を整理します。会社側に違法性が疑われる点があるほど交渉が有利になるため、以下のような点を確認しておきましょう。
条件次第で退職に応じる意思がある場合は、「どのような条件であれば退職に応じるか」を明確にしていきます。各条件の希望については、最低ラインと理想ラインを分けて整理しておきましょう。例えば「解決金は最低でも賃金3か月分の120万円、理想は賃金6か月分の240万円」「退職日は最低2か月後の〇月〇日、理想は年度末の3月31日」等です。
条件の希望の整理ができたら、会社と退職条件交渉を行います。交渉方法は対面、オンライン面談等個別に異なりますが、証拠を残せるよう書面やメールを含めたやり取りが望ましいでしょう。会社側はしばしば次のように反応してくるので、法的な根拠を示しながら冷静に対処する必要があります。場合によっては、弁護士に依頼することも検討します。そのために、この段階で弁護士の無料相談を利用するといいでしょう。
条件がまとまると、会社から改めて退職合意書が提示されます。署名する前の最終確認が非常に重要となるため、以下の点を中心として退職条件全てに同意できるか慎重に確認してください。
退職合意書に署名したら、合意書の記載通りに退職します。退職の際、必ず行うこととして以下が挙げられます。
退職勧奨を受けても退職に応じる義務がない以上、会社から提示された条件に納得できない場合は、改善を要求することができます。しかし、労働者が単独で会社と交渉して要求を認めてもらうことは困難です。納得できるまで条件を改善してもらうためには、労働問題に知見のある弁護士への相談をお勧めします。弁護士に相談の上、会社との交渉代理を依頼することにより、条件を大幅に改善させることが可能になると言ってよいでしょう。これは、弁護士の介入により会社側の態度が変わり、訴訟リスクをより意識して条件改善に応じやすくなるためです。
弁護士の介入によって、以下の項目については労働者側に有利な変更が行われる可能性が高くなります。
| 弁護士の介入により大幅に改善されやすい退職条件 | 改善を見込める内容や程度 | 左記の改善を見込める理由 |
| 解決金・退職金 | ・会社側提示額からの増額 | ・裁判になった場合の会社の敗訴リスクを具体的に示すことができる ・会社側が「争うより金額上積みで解決したほうが得策」と判断しやすくなる |
| 退職日(在籍期間延長) | ・即日退職→数か月後退職 ・賞与支給後または勤続年数の区切りまで在籍が認められる ・社会保険・厚生年金継続 | ・会社側の譲歩コストの低さや退職金上積み縮小との妥協が容易であることに加えて、弁護士の介入により会社側のリスク回避意識がより高くなるため |
| 有給休暇の全消化・買取り | ・有給休暇放棄条件の撤回 ・全日数消化+退職日調整 ・未消化分の金銭換算 | ・有給休暇は労働基準法上の権利であるため弁護士介入により拒否が難しくなる ・不当な放棄条件に対して無効を主張できる |
| 退職理由(会社都合退職への変更) | ・自己都合→会社都合(退職勧奨) ・特定理由離職者扱い | ・会社がハローワーク対応や行政指導リスクを回避しようとする ・直接の金銭負担がないため会社側が妥協しやすい |
| 競業避止義務・秘密保持条項緩和 | ・競業禁止期間短縮 ・競業禁止対象地域や業種の限定 ・義務の実質的免除 | ・過度な競業避止義務は裁判で無効になる可能性が高く、会社が訴訟リスクを避けようとするため |
| 会社からの不利益情報の非開示・証明書の内容 | ・退職証明書や在職証明書の記載から「能力不足」や懲戒的表現が削除される 「双方の合意」「円満退職」の文言記載 ・第三者の照会対応の制限 | ・名誉棄損や違法な不利益取扱いの訴訟リスクを避けようとする ・会社側に金銭的負担がない |
上述の「退職条件の大幅な改善を見込める」ことに加えて、弁護士に相談することには次のようなメリットもあります。
退職勧奨は、あくまで従業員の任意の退職を促すものである限り適法と認められます。しかし実際には、長時間にわたる面談を繰り返す、解雇をちらつかせて退職合意書への署名を迫る等の強迫的な退職勧奨が行われることが少なくありません。弁護士に相談することにより、強迫的な退職勧奨の中止を求める要求書を弁護士名義で送付する等の効果的な対処をとることができます。
退職勧奨を受けると、退職に合意するかしないかの決断や、転職活動等で精神的負担がかかってしまいます。また、退職条件の交渉を労働者自身が行おうとすると、さらに心身に負担がかかることになります。交渉を弁護士に依頼することで、会社側の担当者と顔を合わせる必要もなくなり、精神的な負担やストレスが大きく軽減されるでしょう。
ウカイ&パートナーズ法律事務所では、初回30分無料で法律相談をお受けしています。次のような点を含め、退職勧奨についてお悩みやご質問のある方は、お気軽にご相談ください。
会社から退職勧奨を受けた場合、最初に提示する退職条件は「条件による改善」を前提としているといえます。一方で、会社から「今日中に決めてください」等と、即時の合意を要求してくることも少なくありません。しかし、一度合意してしまうと弁護士が介入してもそれ以後の条件改善は非常に難しくなります。退職勧奨を受けて、提示された条件に少しでも納得できない点や疑問点があれば、その時点で弁護士にご相談ください。
ウカイ&パートナーズ法律事務所では、所属する弁護士全員が、相談者様に提示された退職条件をどの程度改善できるか検討し、とりうる対処法について懇切丁寧にお答えします。当法律事務所では、初回30分無料で法律相談をお受けしています。退職勧奨を受けてお困りの点がありましたら、ぜひ当法律事務所の無料法律相談をお申込みください。
