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退職を強要する違法な退職勧奨に対する損害賠償請求は認められる?違法性の判断や請求方法を弁護士が解説

2026/07/01(水)

退職を強要する違法な退職勧奨に対する損害賠償請求は認められる?違法性の判断や請求方法を弁護士が解説

「会社からの執拗な退職勧奨が続いて困っています。何回も面談に呼び出されて、担当者が机をばんばん叩きながら退職合意書へのサインを強要したり、こんな無能を雇い続けられないとか、断ったらオフィスから締め出すなどとも言われています。結果的に辞めるとしても、黙って何もせずに辞めたくはありません。会社に対して慰謝料請求等はできるでしょうか?」

当法律事務所では、このように退職を強要されている方から、損害賠償請求の可否等について相談を頂くことがよくあります。退職勧奨は原則として適法ですが、執拗な退職勧奨や強引な退職勧奨を違法と認めた判例もあります。それでは、どのような場合に退職勧奨が違法となり、会社に対する損害賠償請求はどのように行えばよいでしょうか。

本記事では、退職を強要する違法な退職勧奨に対する損害賠償請求について、以下の点を中心に解説していきます。

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どのような請求ができるか

退職を強要する違法な退職勧奨に対しては、次のような請求が可能です。

給与・退職金等の逸失に対する損害賠償

違法な退職勧奨によって退職を余儀なくされたことにより、受けられるはずであった給与や退職金に対する損害賠償請求が可能です。請求できる金額については個別に異なりますが、交渉次第で増額できる可能性もあります。また、給与・退職金の逸失額と次項の慰謝料を合わせた「解決金」あるいは「特別退職金」の形式で支払われることもあります。

名誉棄損や人格権侵害に対する損害賠償(慰謝料)

労働問題の事案において、慰謝料が認められるにはそれなりにハードルがあります。もっとも、退職勧奨の方法や内容によっては、名誉棄損(民法第723条)や、人格権侵害として損害賠償請求が可能な場合があります。名誉棄損や人格権侵害に対しては、多くの場合、これによって受けた精神的損害に対する慰謝料(民法第710条)を求めることになるでしょう。判例では、能力不足を誇張した言動を繰り返したケースや、退職勧奨の事実を記載した文書を本人の許可なく全従業員に配布したケースで「名誉棄損に該当する」と判断したものがあります。また、前述の例に挙げた「退職勧奨が違法となりうる場合」、つまり長時間にわたる面談や、その際の反復的・強迫的に退職を求める言動等は、人格権侵害にあたることが多いです。

請求権の消滅時効に注意

違法な退職勧奨に対する損害賠償請求権は民法第709条・第710条に基づくため、被害者が「損害及び加害者を知ったとき」から3年で消滅時効にかかります(民法第724条1号)。このため、損害賠償請求については早めに弁護士にご相談ください。また、厳密な消滅時効の起算点、つまり「いつから起算して3年か」については個別の損害により異なるため、弁護士に確認することをお勧めします。なお、物理的な暴力により負傷した場合、治療費等の損害賠償請求権及び慰謝料請求権の消滅時効期間は5年となります(同法第724条の2)。

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賠償金額の相場

違法な退職勧奨に対して損害賠償請求する場合、慰謝料等がどのくらい請求できるか、あるいは認められるかについても気になるところです。主な請求である慰謝料についてみると、裁判で認められる額は数十万円から100万円程度が相場といえます。退職勧奨以前から悪質なパワハラが続いていた場合等、労働者の精神的苦痛の度合いによっては100万円以上の慰謝料が認められる可能性もあります。どのような請求がどのくらい認められる可能性があるかについて、個別の事情に応じた目安については弁護士にご相談ください。

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損害賠償請求する方法

ここでは、違法な退職勧奨に対する損害賠償請求を請求する方法について解説していきます。

証拠を収集する

まず、退職勧奨の違法性や、労働者が受けた損害を証明するための証拠を収集してください。具体的には以下のような資料が、有効な証拠となります。

有効な証拠となりうる資料備 考
面談の記録面談日時、面談担当者、発言内容を時系列で記録したもの
社内メッセージ(メール・チャット)画面スクショまたはメールをプリントアウトした紙、保存データ
面談の録音音声会社側の同意がない場合も録音は適法(自身が参加している会話の録音は違法な盗聴に該当しないため)
面談立会者や同僚の証言単独では客観性が不十分なので他の証拠と合わせる必要がある
医師の診断書・意見書退職強要及びそれ以前からのパワハラが原因で精神疾患を発症したことや、暴力により負傷した事実の証拠となる

会社に示談を求める

証拠が揃ったら、会社に対して内容証明で損害賠償請求を求める書面を送付します。書面には、請求内容とともに、示談を希望する旨記載してください。内容証明を弁護士名義で差し出すことにより、会社が示談に応じる可能性が高くなります。

労働審判申立てまたは訴訟提起

会社との交渉がまとまらなかった場合は、労働審判申立てまたは民事訴訟を提起して解決を目指していきます。労働審判と訴訟には以下のような違いがあります。

労働審判訴 訟
適した状況相手方に譲歩の余地がある
当事者が早期解決を望んでいる
証拠が揃っている
強制力のある解決を望んでいる
メリット原則3回の期日で手続が終了するため早期解決が可能
審理が非公開で行われるためプライバシーが守られる
判決または和解により強制力のある解決ができる
デメリット以下の場合審判が無効になるため強制力が弱く、また手続にかかった時間と労力が無駄になる
・審判結果に対して一方が異議を申し立てた
・労働審判委員会の判断で審判を終了させた場合
解決まで時間がかかる
事実上弁護士への委任が必要なので弁護士費用がかかる

労働審判結果が無効になった場合や、最初から訴訟提起するのが望ましいと判断された場合は、訴訟提起により解決を目指します。訴状を提出する裁判所は、以下の条件に従って決まります。

労働審判を経ている労働審判を経ていない
請求額140万円以下労働審判を行った地方裁判所(会社の所在地を管轄する地裁)会社の所在地を管轄する簡易裁判所
請求額140万円超同上会社の所在地を管轄する地方裁判所

先に労働審判を申し立てるか、最初から訴訟提起するかを的確に判断するのは労働者単独では難しいため、弁護士への相談・依頼をおすすめします。

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違法な退職勧奨に対する損害賠償請求が認められた裁判例

ここでは、退職を強要する違法な退職勧奨に対する損害賠償請求が認められた裁判例をご紹介します。

下関商業高校事件(最高裁1980年7月10日付判決)

自主退職を拒否した高校教員に対して、高校側が繰り返し退職勧奨を行ったことが違法な退職強要にあたるか否かが問題となったケースです。

【事実の概要】

Y市教育委員会は、同校に勤務する男性教諭X1・X2に対して、退職勧奨の基準年齢である57歳に達したとして退職勧奨を行いました。X1・X2は一貫して退職に応じない意思を明確に表示していましたが、Y市職員が翌年度まで執拗に退職勧奨を続けたため、Y市と教育長・同次長を被告として、違法な退職勧奨により受けた精神的損害としてそれぞれ50万円の慰謝料支払いを求めて提訴しました。一審の広島地裁及び控訴審の広島高裁は、ともにX1・X2の請求を認容しました(ただし、教育長・同次長に対する請求は棄却)。これに対してY市が上告しました。

【裁判所の判断】

最高裁は、以下の理由により上告を棄却し、Y市に対して慰謝料の支払いを命じました。

(1)退職勧奨の意義と違法になる場合について

退職勧奨は、任命権者が雇用関係のある者に対して、自発的に退職するよう説得する行為であり、勧奨される者は自由にその意思を決定できる。しかし、勧奨される者の任意の意思形成を妨げ、あるいは名誉感情を害する勧奨行為は、違法な権利侵害として不法行為を構成する場合がある。

(2)本件へのあてはめ

本件退職勧奨は、多数回かつ長期にわたる執拗なものであり、許容される限界を超えている。また、従来と異なり、年度を超えて勧奨が行われ、Y市職員は「X1・X2が退職するまで続ける」と述べて、X1・X2に「際限なく勧奨が続くのではないか」との心理的圧迫を加えたものである。さらに、教職員組合からの要求に対しても、Y側は「X1・X2が退職しない限り応じない」との態度を示し、X1・X2に対して二者択一を迫るような心理的圧迫を加えたものである。これらはいずれも不当といえる。

(3)結論

本件退職勧奨は、X1・X2の任命権者であるY市教育委員会の決定に基づき、Y市の職員が自己の職務として勧奨するにあたり、その限度を超えてX1・X2に対して義務なきことを強要したものであり、少なくとも過失に基づくものとして、Y市はX1・X2に対して損害を賠償すべき義務がある。

日本航空事件(東京高裁2012年11月29日付判決)

自己都合退職を拒否した航空会社従業員に対して、上司が解雇を示唆したり「記憶障害」「若年性認知症」等の言葉を浴びせたことが退職強要にあたるか否かが問題となったケースです。

【事実の概要】

航空会社の契約社員(客室乗務員)として勤務していたXに対し、会社は2009年5月頃から勤務成績・勤務態度不良等を理由として継続的に自主退職を求めていました。Xは一時的に自主退職を考えたものの、同年9月5日に書面で明確に「自主退職しない」旨を会社に伝えました。上司Yは、9月14日・15日及び19日にXと長時間面談し、以下のような言葉を用いて退職を求めました。

「いつまでしがみつくつもりなのかなって」
「辞めて頂くのが筋です」
「懲戒免職(正しくは解雇)とかになったほうがいいんですか。」
「懲戒になると、会社辞めさせられたことになるから、それをしたくないから言ってる。」
「1年を過ぎて、OJTと同じようなレベルでしか仕事ができない人に、もう会社はそこまでチャンス与えられないって言ってるの。」
「もう十分見極めたから。」
「この仕事は、もう無理です。記憶障害であるとか、若年性認知症みたいな」

Xは、Yの言動が違法な退職強要にあたり、これにより精神的損害を受けたとして、Y及び会社※に対して慰謝料500万円の支払いを求めて提訴しました。一審はYの行為が退職強要に該当すると判断しつつ、X側の落ち度等を考慮してY及び会社に対して20万円の慰謝料請求を認めました。

※使用者責任(民法第715条1項)

【裁判所の判断】

東京高裁は、以下の理由により、一審と同様Y及び会社に対して20万円の慰謝料支払いを命じました。

(1)上司Yの言動の違法性について

Yの(上記)言動は、いずれも、Xが度重なる指導にもかかわらず寝坊やミスを犯した数日後であったことから、対応が厳しくなるのもやむを得ないという事情がうかがえる。しかし、文書で明確に自主退職を拒否していたXに対して、長時間にわたる面接を行い、強く直接的な表現を用いた点で社会的相当性を逸脱したものであり、不法行為に該当すると言える。

(2)慰謝料額について

Xは、一審が認めた慰謝料額が低すぎると主張する。しかし、X側にも指導を受けてもミスを繰り返す等の落ち度があったことや、Yが(長時間面談が行われた)9月19日以降は長時間の面談や退職勧奨を行っていないこと等に照らして、一審の判断は相当と言える。

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まとめ

退職勧奨を受けた場合、退職を拒否するか、退職に合意するかは労働者本人次第です。しかし、違法な退職勧奨に対しては、慰謝料などの損害賠償請求が正当な権利の行使として認められます。退職を強要されている場合は、損害賠償請求の可否や請求できる金額等についても、弁護士にご相談ください。

ウカイ&パートナーズ法律事務所では、所属する弁護士全員が、相談者様が会社から受けた退職勧奨の違法性について検討し、とりうる対処法について懇切丁寧にお答えします。当法律事務所では、初回30分無料で法律相談をお受けしています。「退職しなければ解雇すると言われた」「退職勧奨を断り続けていたら社用のパソコンとスマホを取り上げられてしまった」等、強引に退職を要求されてお困りの方は、ぜひ当法律事務所の無料法律相談をお申込みください。

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