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賃金仮払いの仮処分とは?賃金仮払いの申立要件や手続の流れを弁護士が解説

2026/07/16(木)

賃金仮払いの仮処分とは?賃金仮払いの申立要件や手続の流れを弁護士が解説

「10年以上勤めた会社を解雇されてしまいました。解雇理由に納得できないのですが、幼い子供がいることもあって当面の生活が心配で、会社と争うべきか迷っています。」このように、不当解雇についてのご相談で、生活への不安を挙げられる方は多くいらっしゃいます。労働トラブルに遭った方の生活を支える制度の1つとして、「賃金仮払いの仮処分」があります。本記事では、賃金仮払いの仮処分について、以下の点を中心に解説します。

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賃金仮払いの仮処分とは

ここではまず、賃金仮払いの仮処分とは何か、そもそも「仮処分」とはどのような制度かを解説していきます。

「仮処分」とはどのような制度か

「仮処分」とは、民事保全法に基づいて裁判所が行う民事保全処分の一種です。民事保全処分とは、訴訟の判決が確定した際に確実に権利を実現できるように、現状を保全する処分をいいます。たとえば、土地の所有権をめぐる争いで、所有権を主張する側は、相手方がその土地を勝手に売却してしまうことを防ぐために、不動産の処分を禁止する旨の仮処分の申立てを行うことができます。

不当解雇等の労働争訟の場合は、保全すべき「現状」は、その会社の従業員として賃金の支払いを受けていることを意味します。そのため、賃金仮払いの仮処分と併せて、従業員の地位を仮に定める仮処分の申立てを行うことが多いです。ただし、従業員の地位を仮に定める仮処分は「保全の必要性」が否定されることが多いため、認められる可能性は高くありません。

仮処分と仮差押えの違い

仮処分と似た民事保全制度に「仮差押え」があります。両者の違いは、保全する対象となる権利の種類にあります。仮処分が金銭債権以外の権利や地位の保全を目的としているのに対し、仮差押えは金銭債権の回収を目的としています。仮差押えの申立てが認められた場合、債権者は債務者の財産を一時的に差し押さえて、勝手に処分することを防ぐことができます。

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賃金仮払いの仮処分の申立要件

賃金仮払いの仮処分は裁判所が発令するため、認めてもらうためには労働者側が裁判所に申立てをする必要があります。賃金仮払いの仮処分の申立てができるのは、以下の要件を満たしている場合です。

被保全権利が存在する

まず、被保全権利、つまり保全すべき権利が存在することが必要です。賃金仮払いの仮処分の場合、雇用契約に基づく賃金請求権が被保全権利となります。会社と雇用契約を締結して賃金の支払いを受けていた事実があれば、この要件は問題なく満たしていることになります。

保全の必要性がある

「保全の必要性」が認められるのは、「争いがある権利関係について債権者に生じる著しい損害または急迫の危険を避けるためこれを必要とするとき」です(民事保全法第23条2項)。賃金仮払いの仮処分申立ての場合、「争いがある権利関係」は賃金請求権を指すことで問題ありません。「著しい損害または急迫の危険を避けるためこれを必要とするとき」については、解雇等によって賃金請求権を失うことで生活が困窮することを「著しい損害」とみなし、それを避けるために賃金請求権を保全する必要があると理由づけることができます。

裁判所側が「保全の必要性」を認めるか否かは、仮処分によって債権者(労働者)が受ける利益と債務者(会社側)が受ける不利益とを比較考量して決めると考えられています。賃金は生活費に充てることが予定される以上、会社側が訴訟で勝訴して仮処分が取り消されても返還を受けるのが困難であることや、下記のように無担保で発令されること等、会社側が受ける不利益も決して軽視できません。
本案判決が確定するのを待っていては労働者が回復しがたい損害を被る恐れがあり、労働者側の不利益が会社の不利益を明らかに上回ると判断されれば、保全の必要性が認められます。

このことから、労働者側の以下の事情が考慮されます。

  • 資産の有無(裁判所からは預金通帳の提示を求められます)
  • その会社から受ける賃金以外の固定収入の有無
  • 同居家族の収入の有無や状況
  • 負担するローンの有無や残高、子どもの学費負担の状況

担保は必要か

一般的に、仮処分の申立てを行う際、債務者が被る可能性のある損害を担保するために、担保金の提供が求められることがあります。賃金仮払いの仮処分の場合、労働者が賃金という唯一の収入源を失うことにより困窮していることが前提となるため、通常は担保は不要です。ただし、滅多にないですが、裁判所の裁量によって担保金の提供が求められる場合があります。

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賃金仮払い仮処分手続

それでは、賃金仮払い仮処分の申立ては、どのように行っていけばよいでしょうか。ここでは、賃金仮払い仮処分申立手続きの流れについて解説します。

申立て

まず、債権者(労働者)が、雇用契約で定められた管轄地方裁判所に仮処分の申立てを行います。

審尋

申立てを受けた裁判所は、申立日から1週間後〜2週間後の日に審尋期日を設定します。初回の審尋期日の後は、1週間〜2週間程度の間隔で審尋期日を開催します。審尋期日では、労働者側と会社側が主張書面や疎明資料の提出を行います。当事者尋問や証人尋問等の口頭の審理手続は行われません。

決定

裁判所は、審理の結果として仮払いを認めるか認めないかの決定を行い、両当事者に通知を送達します。申立てから仮処分の決定までは、平均3か月ほどかかります。保全処分の手続も訴訟の場合と同様、裁判所が当事者に和解を促すことが多くあります。労働者と会社の間で和解が成立すると、賃金支払いが行われます。仮処分と和解でどちらが早く進むかはケースバイケースといえます。

決定に不服がある場合

仮処分決定に不服がある場合、決定通知の送達を受けた日から2週間以内に、決定を行った地方裁判所に対して「保全異議」の申立てを行うことができます。ただし、保全異議の申立てを行ったことで決定の執行が停止することはありません。「認容」の決定に対して会社側が異議申し立てを行う場合、賃金仮払いを止めるためには執行停止の申立てを行う必要があります。労働者側が「却下」の決定に不服がある場合は、執行停止の申立てを行う必要はありません。

保全異議の申立てを行うと、裁判所は当事者双方の立会いが可能な審尋期日を設定します。保全異議申立てによる審尋では、労働者・会社以外の第三者の審尋も可能です。審査を経て、再決定の通知が送達されます。

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仮払い金額と仮払い期間

仮払いを受けられる金額と、期間についてはおおよそ以下の通りです。

仮払い金額

仮払い仮処分の趣旨が「生活資金が得られない」という緊急事態から労働者を保護するものであるため、仮払いの金額は当該労働者の生活に必要な金額に限定されます。おおむね1か月あたり20万円〜25万円程度、最大で30万円程度が目安となります。

仮払いを受けられる期間

仮払いを受けられる期間については事案により幅がありますが、解雇後または仮処分後1年間程度、または本案の第一審判決確定までとされることが多いです。本案訴訟の第一審の審理期間に1年程度かかることから、3か月以下等に制限されることはあまりないといえるでしょう。一方、会社側が本案訴訟で勝訴しても仮払い金の返還が困難であることや、争訟中に労働者が就労する可能性があることなども考慮されます。

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賃金仮払いの仮処分が認められた場合の注意点

賃金仮払いの仮処分申請が認められた場合、以下の点に注意する必要があります。

本訴を提起しなかった場合のリスク

賃金仮払いの仮処分は、労働者側が解雇無効の判決を求める訴訟(本訴)を提起することを前提としています。そのため、賃金仮払いの仮処分を受けた労働者が本訴を提起しなかった場合、次のようなリスクがあることに注意してください。ただし、和解により賃金支払が認められた場合には、本訴を提起しなかった場合も以下の問題は生じません。

1.仮処分決定を取り消される可能性

まず、賃金仮払いの仮処分が出された場合、会社側は労働者に対して本訴を提起するよう求めることができます(起訴命令の申立て)。裁判所が申立てを認めて起訴命令を出したにもかかわらず本訴を提起しなかった場合、会社側は仮処分取消の申立てをすることができます。裁判所がこれを認めると、仮処分が取り消されることになります。

2.担保金を取り戻せない可能性

賃金仮払いの仮処分は、解雇によって生活資金に困窮している労働者に対して出される仮処分であるため、通常は担保なしで申し立てることができます。もっとも、裁判所の裁量により担保金を求められる場合もごく稀にあります。この場合、担保金を供していた場合には、本訴不提起によって担保金を取り戻せなくなる可能性があります。

再就職した場合賃金が控除される可能性がある

また、賃金仮払いの仮処分の決定を受けた労働者がその後再就職した場合、それをもって仮処分を取り消されることはありませんが、再就職先で得た賃金を仮払い金から控除される可能性があります。

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解雇に納得できない場合は弁護士にご相談ください

解雇が不当だと思っても、「家族もいるし、争うよりは早く再就職したほうがいい」と思われるかもしれません。しかし、選択肢は「不当解雇を争う・争わずに再就職する」の二つだけではありません。弁護士に相談することで、その方にとって最善の手段をとることができます。不当に解雇された場合、弁護士に相談することには、以下のようなメリットがあります。

解雇の適法性を判断してもらえる

解雇に対して、争うか争わないかの判断も含めて適切に対処するためには、解雇が適法かどうかを判断する必要があります。弁護士に相談することで、判例や業務経験に照らして的確な判断が可能です。

証拠収集方法のアドバイスとサポートが受けられる

解雇に対して、違法であると主張して従業員の地位確認やバックペイ(解雇後の期間分の賃金相当額)の請求等の権利行使を行うためには、解雇の違法性を立証するための証拠が必要になります。しかし、労働者本人が、どのような証拠が有効となるかを判断した上で証拠を揃えることは困難です。弁護士に相談することにより、必要な証拠の収集方法を詳しく教えてもらうことができます。また、会社側が証拠を保持している場合は、弁護士が開示請求を行うことが可能です。証拠収集のアドバイスとサポートを受けることで、問題解決に向けて大きく前進できるでしょう。

生活費を確保する方法のアドバイスとサポートが受けられる

本記事でご説明した賃金仮払いの仮処分のように、労働事件の当事者となった場合、労働者を保護する制度の利用が可能です。また、解雇された場合でも、争訟中に他社で働くことは可能です。弁護士に相談することで、不当解雇を争う中で生活の不安を解消するためにできることについて、詳しく教えてもらうことができます。また、賃金仮払いの仮処分の申立手続を任せることもできます。

会社との交渉を任せられる

不当解雇を主張して、会社に対して要求を認めてもらうためには、まず会社に内容証明で請求書を送った上で交渉する必要があります。しかし、労働者が単独で会社と交渉して要求を認めてもらうことは容易ではありません。会社が対応してくれないことも多く、また顧問弁護士に依頼して一方的に請求を拒否される可能性もあります。交渉を弁護士に依頼することで、対等に交渉を進められます。

ウカイ&パートナーズ法律事務所では、初回30分無料で法律相談をお受けしています。労働トラブルのご相談では、無料相談の時間内に生活の不安解消方法のアドバイスを受けることができます。解雇や退職勧奨等でお困りの方は、お気軽にご相談ください。

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まとめ

不当解雇を争う労働者やその家族の生活を保護する制度として、賃金仮払いの仮処分と失業保険の仮給付があります。それぞれ審査がありますが、両方申請することも可能です。賃金仮払いの仮処分の方が時間がかかるため、まず失業保険仮給付を申請して最低限の生活資金を確保した上で、賃金仮払いの仮処分を認めてもらうために十分な準備をするという方法もとりえます。弁護士に相談することで、これらの手続きを迅速に進めることができます。生活資金の問題を解決するためにも、解雇されて対処に困ったらできるだけ早く弁護士にご相談ください。

ウカイ&パートナーズ法律事務所では、所属する弁護士全員が、解雇の適法性を検討・判断した上で、相談者の方の生活の不安の解消方法等を含めて、とりうる対処法について懇切丁寧にお答えします。当法律事務所では、初回30分無料で法律相談をお受けしています。「解雇に納得できない」「退職勧奨を受けて解雇をほのめかされている」等、解雇に関わる問題でお困りの方は、ぜひ当法律事務所の無料法律相談をお申込みください。

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