
「勤め先の外資系企業で、突然PIPを言い渡された上、目標を達成できなければ退職してもらうといわれてしまいました。これは事実上の解雇もしくは、退職勧奨ではないでしょうか?それに、そんな厳しい条件でPIPをやれといわれるほど自分の勤務成績が悪いとは思えないのですが。」「外資系企業で、PIPの目標未達成を理由に解雇されました。PIPの目標は私には到底達成できないものばかりでした。このやり方に納得がいかないのですが、不当解雇を主張できるでしょうか?」
このように、外資系企業に勤める方から、到底目標達成できそうもないPIPや抽象的すぎる目標を定めたPIPを言い渡されたり、その結果、PIPの目標未達成を理由に解雇や退職勧奨されてしまったという相談を頂くことがよくあります。
本記事では、外資系企業でPIPを理由として解雇された、あるいは退職勧奨された場合の対処法について、以下の点を中心に弁護士が解説します。
ここではまず、「PIP」とは何か、外資系企業で行われるPIPの特徴などを解説します。
PIP(Performance Improvement Program)とは、人事評価が低い従業員に対して業績の改善を促すために行われる取り組みをいいます。一般的に、PIPは以下のように実施されます。
このように、PIPは本来、従業員の成長やそれによる会社の業績向上を目的として行うものです。一方、外資系企業では、PIPを解雇や退職勧奨の手段として行うケースが少なくありません。そのような場合、PIPを実施する前に対象従業員に対して「PIPで設定した目標を達成できない場合は退職する」旨の条項を含む同意書に署名させることが多くあります。その上、当該従業員には達成困難な目標を設定させ、精神的に追い詰められた従業員が自ら退職するということが常態化しています。
外資系企業で行われるPIPには、総じて以下のような特徴があります。
外資系企業でPIPによる事実上の退職勧奨が行われることが多い原因としては、以下が挙げられます。
一方、外資系企業であっても日本の法律が適用されるため、法令上の解雇制限に従わなければなりません。日本で会社が労働者を解雇する場合、その労働者を解雇する客観的合理的な理由と社会的相当性が認められなければ解雇権濫用として無効となります(労働契約法第16条)。この合理性・相当性の判断基準の1つとして「解雇回避義務を尽くしたこと」が挙げられ、この解雇義務には指導や教育等の「改善の機会の付与」が含まれます。外資系企業では、PIPが「改善の機会の付与」を行ったという名目となっている側面があります。
それでは、外資系企業でPIPを命じられた場合、どのように対処すればよいでしょうか。
PIPの指示は業務命令に該当します。労働契約上、労働者は会社の業務命令に従う義務がありますが、違法・不当な業務命令に対しては従う義務がありません。従って、「内容が不当である」等、主張できる理由があれば、拒否することは可能です。
しかし、PIPを拒否すると業務命令違反を理由に解雇されるおそれがあるため、PIP指示自体は拒否しないほうがよいでしょう。一方、後述のように、「PIPの目標未達成の場合は退職することに同意する」旨の同意書を示された場合、これに同意する義務はありません。
それでは、外資系企業でPIP未達成を理由に解雇される可能性はあるでしょうか。
外資系企業に勤める方は「本社が海外にあるから、労働基準法などの日本の法律が適用されないのでは?」と不安に思われるかもしれません。しかし、以下の法律上の根拠に基づき、外資系企業に対しても日本の法律が適用されます。
外資系企業が日本で雇用する労働者との労働契約の成立及び効力については、法の適用に関する通則法第8条の「当該法律行為に最も密接な関係がある地の法による」という規定が適用されると考えられます。加えて、「最も密接な関係がある地の法」については、同法第12条2項により「労働者が労務を提供すべき地の法」と推定されます。従って、外資系企業に対しても、日本国内の事業所で働く労働者に対しては、労働基準法等の強行規定が適用されます。
【法の適用に関する通則法】
| 第7条 (当事者による準拠法の選択) | 法律行為の成立及び効力は、当事者が当該法律行為の当時に選択した地の法による。 |
| 第8条 (当事者による準拠法の選択がない場合) | 前条の規定による選択がないときは、法律行為の成立及び効力は、当該法律行為の当時において当該法律行為に最も密接な関係がある地の法による。 |
| 第12条 (労働契約の特例) | 第1項 労働契約の成立及び効力について第7条または第9条の規定による選択または変更により適用すべき法が当該労働契約に最も密接な関係がある地の法以外の法である場合であっても、労働者が当該労働契約に最も密接な関係がある地の法中の特定の強行規定を適用すべき旨の意思を使用者に対して表示したときは、当該労働契約の成立及び効力に関しその強行規定の定める事項については、その強行規定をも適用する。 第2項 前項の規定の適用に当たっては、当該労働契約において労務を提供すべき地の法(中略)を当該労働契約に最も密接な関係がある地の法と推定する。 第3項 労働契約の成立及び効力について第7条の規定による選択がないときは、当該労働契約の成立及び効力については、第8条第2項の規定にかかわらず、当該労働契約において労務を提供すべき地の法を当該労働契約に最も密接な関係がある地の法と推定する。 |
民事訴訟法第3条の4(消費者契約及び労働関係に関する訴えの管轄権)により、労働者から事業主に対する訴えについては、労務の提供地が日本国内にあれば、日本の裁判所に提起することが認められています。従って、外資系企業と被用者の間で発生した労働トラブルに対しては、「労働者が日本国内で労務を提供している」限り、日本の裁判所を管轄裁判所とすることができます。
このように、外資系企業に対しても日本の法律が適用されるので、労働者を解雇する場合も、解雇に関する労働基準法・労働契約法・男女雇用機会均等法等による様々な制限が設けられています。
PIPを理由とする解雇に対しても、当該労働者を解雇することに客観的合理的な理由と社会通念上の相当性(合理性・相当性)がなければ、解雇権濫用にあたり無効となります(労働契約法第16条)。そして、合理性・相当性については、後述のブルームバーグ事件を始めとする判例によって厳格な解釈がなされています。従って、能力主義を徹底する外資系企業にあっても、PIP未達成の従業員を容易に解雇することは認められません。
しかし、実際には、外資系企業ではPIPの目標未達成の従業員に対して退職勧奨が行われ、応じなければ解雇する等と言われて退職合意書への署名を強要されるケースが少なくありません。
外資系企業で解雇や退職勧奨の手段として用いられるPIPに対しては、「解雇または退職勧奨(以下「解雇等」と表記)を避けるための対策」と「解雇された場合に解雇の違法性を証明するための対策」をとることをおすすめします。
解雇等を避けるための対策、そして不当解雇を主張するための対策ともに、基本となるのは、この労働者を解雇することが違法であること、つまり、「その労働者を解雇することには客観的合理的理由・社会通念上の相当性(合理性・相当性)がない」ことを証明できる行動をとることです。まず、解雇を避けるための対策をとることによって解雇を回避できれば、ひとまずPIPによる解雇の問題は解決します。さらに、仮に解雇されてしまった場合も、解雇の合理性・相当性を否定できるだけの対策をとっておくことで、不当解雇が認められやすくなります。
解雇の合理性・相当性の判断には、以下のような事情を考慮することがあります。
PIPを言い渡された時点では、「解雇等を回避するための対策」と、「解雇された場合に解雇の違法性を証明するための対策」をとることが可能です。具体的には、次のような方法をとることをおすすめします。
改善の意欲を示すことは、解雇等を回避するためにも、また解雇等の違法性を主張するためにも重要です。
ただし、会社側がその従業員に対して、改善を求める根拠となる事実を十分に示していない場合、会社側が改善のための教育・指導を十分に行っていない(解雇が違法になる根拠の1つ)といえます。改善すべき点を具体的に示された場合は、その点に対して「改善のために努力する」意思を伝えましょう。改善すべき点を具体的に示されていなかった場合は、「改善すべき点に対して」真摯に努力する旨の意思を伝えるようにしましょう。
PIPは人事評価が低い社員に対して行われます。しかし、後述のブルームバーグ事件の判決では、問題点に対する指示・指摘が具体的に行われていなかったことや、改善のための具体策を講じていなかったこと等を理由として、解雇を無効と判断しています。
そこで、労働者側でとりうる対策として、PIPが出される原因となった具体的な事実を確認し、具体的な改善策を示してもらうことが挙げられます。課題点となった事実や、具体的な改善策を示してもらえれば改善しやすくなるでしょう。また、そのような事実や改善策が示されなかった場合、不当な解雇や強迫的な退職勧奨に対して違法性を指摘することが可能です。
会社側が、従業員の意見を聞かず一方的に達成困難な目標を設定することは、パワハラに該当する可能性があります。会社から提示された目標設定が極端に実現できない設定であると思われた場合、修正を求めるようにしましょう。会社が目標の修正に応じない場合、事実上の退職勧奨の手段としてPIPを行おうとしている疑いが強いと言えます。
外資系企業のPIPでは、自身の業務と無関係な目標や業務改善に資すると言い難い目標設定が行われることがあります。しかし、これに対して修正を求めずに同意書に署名してしまうと、「目標設定に同意していた」ことを理由に、未達成の場合に会社側から労働者側の落ち度を指摘されてしまいます。そこで、目標が不相当である場合は、修正を求めるようにしましょう。
外資系企業のPIPでは、しばしば合意書に「目標未達成の場合は解雇を含む措置が行われることに同意する」、「目標未達成の場合は退職することに同意する」旨の記載が含まれています。これに対して異議を唱えずに署名してしまうと、目標未達成により解雇された場合、不当解雇を主張しても会社側から反論されやすくなります。また、労働契約法では解雇以外の懲戒処分に対しても、合理性・相当性を欠く場合は無効になると定められています(同法第15条)。合意書に目標未達成の場合のペナルティについての記載がある場合は、「業務改善を目的とするPIPで解雇を含めたペナルティを科すことは相当でない」旨主張して、削除を求めるようにしましょう。
ブルームバーグ事件の判決も示しているとおり、労働者側が業務改善の試みを行ったことを証明できれば、解雇された場合に不当解雇を主張する根拠となります。PIPで作成・提出した書類をメディアに保存する等、可能な限り証拠として残すようにしましょう。
ウカイ&パートナーズ法律事務所では、外資系企業に勤務している方からPIPに伴う退職勧奨を受け対応に苦慮しているというご相談をよく受けます。PIPは、英文で記載されていることが通常であり、弁護士として、英文対応できる必要があるところ、当事務所では英文対応も可能でございます。また、PIPと言っても千差万別あるため、それぞれどのような対応をすべきか熟慮した上で対応する必要があります。外資系企業においてPIPを受けて困っている方は、是非、30分無料の労働相談をして下さればと思います。
解雇や退職勧奨された場合は、①不当解雇を主張する場合、②強迫的手段で退職に合意させられた場合、③退職勧奨されたが応じる意思がない場合、そして④条件次第で退職に応じる意思がある場合でそれぞれ以下のような対処を行うことをおすすめします。
①②:証拠収集
③:証拠収集、退職合意書署名の保留
④:特別退職金(パッケージ)に関する事項の交渉
不当解雇を主張する場合や、強迫的手段で行われた退職勧奨の違法性を主張する場合、及び退職勧奨を拒否する場合は、裁判に備えて証拠を集めておくようにしましょう。解雇通知や退職勧奨通知を受けてから証拠を集める場合は、録画・録音データがない・証拠となる書類が残っていないなどのハードルがあるかもしれません。しかし、会社側が保管している証拠については開示を求めることができます。労働者本人による証拠開示請求が難しい場合は、弁護士に依頼することで請求が可能になります。
退職勧奨されたが退職の意思がない場合は、退職合意書への署名を求められてもサインしないようにしましょう。退職勧奨の場合、一度サインしてしまうと「退職に同意した」とみなされるため、後から復職を求めることが難しくなります。ただし、退職合意書の署名要請が強迫的な手段で行われた場合は無効を主張できることがあります。仮に、強制的に署名させられた場合には、直ぐに、退職の意思を撤回し、署名を強制された旨を訴える必要がありますので、あきらめずに我々、弁護士にご相談ください。
外資系企業では、PIPによる退職勧奨を行う一方で、退職勧奨の際に「パッケージ」と呼ばれる特別退職金を支給することが多くあります。ただし、パッケージ支給は法律上の義務ではないため、退職勧奨に応じれば必ずパッケージを受けられるとは限りません。従って、退職勧奨された場合に、条件次第で応じても良いと考えるとすれば、会社に対してパッケージ支給の有無、支給がある場合の金額等を確認しましょう。
PIPを言い渡された時点、解雇・退職勧奨された時点のどの状況においても、会社の対応に納得できない場合は、対処法について弁護士に相談することをおすすめします。
ウカイ&パートナーズ法律事務所では、外資系の不当解雇や、退職勧奨などの労働問題について、30分の無料相談が可能です。労働問題に知見のある弁護士が対応しますので、外資系の不当解雇等の労働問題でお困りの方はお気軽にご相談ください。
ここで、外資系企業でのPIPによる解雇が争われた裁判例をご紹介します。これらのケースでは、PIP実施後に能力不足を理由として行われた普通解雇に対して、従業員側が解雇無効と従業員地位の確認、慰謝料、PIP差止等を求めています。
PIPを理由とする解雇の効力が争われた裁判の代表例といえる事件です。同事件では、3回にわたる課題点改善プランの実施後に行われた「能力不足」を理由とする普通解雇の効力が争われました。
Xは、通信記者として他社に約13年勤務した後、米国に本社を置くY社に2005年11月に中途採用されました。Xは2006年11月の勤務評価で「期待に満たない」との評価を受け、2007年6月から3か月間、課題点改善のための「アクションプラン」が実施されました。Xは、当該アクションプランで設定された目標をすべて達成しました。しかし、同年12月及び2008年11月の勤務評価では「課題に改善が見られない」と評定され、Xはその時期から2009年2月まで、心身の疲労を理由に休職しました。
復職後、Y社は部署を移動した上、2009年12月10日から3回にわたってPIPを実施し、目標を達成できなかったとして2010年4月8日に自宅待機を命じました。その後、Y社はXに対して2010年7月20日付で、同年8月20日をもって解雇する旨の解雇予告通知書を送付しました。Xは、解雇の無効を主張し、従業員の地位確認及び2010年8月分以降の賃金支払いを求めて提訴しました。
一審(東京地裁2012年10月5日付判決がXの請求を認容したのに対して、Y社が控訴したのが本件です。
東京高裁は、以下の理由により、控訴を棄却しました。
職務能力の低下を理由とする解雇に「客観的に合理的な理由」があるかについては、次のような点を総合考慮して決するべきである。
①について:Xに労働契約上求められていた職務能力は、社会通念上一般的に中途採用の記者職種限定従業員に求められる職務能力と異ならない。
②について:Y社が主張する「Xが2回目のPIPで翌週の行動予定の提出を怠った」「上司との協力関係構築の努力を怠った」「執筆スピードが遅く執筆本数が少ない、記事内容の質が低い」等のいずれについても、労働契約の継続を期待できないほどに重大なものとまでは認められない。
③④について:以下の事実に照らして、「Y社は改善矯正を促して努力反省の機会を与えたのに改善がなかった」とはいえず、またXには今後の指導による改善の見込みがあったといえる。
従って、それぞれの基準に照らして、解雇に客観的合理性があるとは認められない。
上記の判決(第一次解雇事件)では労働者Xが完全勝訴し、XはY社に復職しました。しかし、第一次解雇事件の高裁判決前の和解交渉では、Y社が給与が半減する倉庫業務への配置転換を提案していました。判決後、復職したXが配置転換を拒否し、配置転換に関する協議に応じない意思を表示したため、これを理由にY社はXを再び解雇しました。Y社がXに対して、第一次解雇事件の効力を失わせるための「請求異議訴訟」を東京地裁に提起したのが「第二次解雇事件」です。
第二次解雇事件判決(東京地裁2015年5月28日付判決)では、東京地裁は以下の理由でY社の請求異議を棄却しました。
Xが倉庫業務への配置転換の提案を応諾し、配置転換を復職の前提とする協議に応じる法律上の義務を負うとか、あるいは協議に応じるべきであった等と解すべき根拠は乏しい。提案に応じるか否かは、基本的にXの自由な判断に委ねられるべきものであり、Xがこれに応じない意思を明らかにしたからといって、そのこと自体に何ら責められるべきではない。
Xが倉庫業務への配置転換に応じなかったことに何らの義務違反が認められないことに鑑みて、Y社の主張する解雇理由に客観的合理性はなく無効である。
Y社は控訴しましたが、高裁の審理中にX・Y社間でXの主張を認める内容の和解が成立しました。
(裁判の経緯・判決理由ここまで)
本件では、特に第一次解雇で、PIPを経た普通解雇の「客観的合理的理由」についての「労働契約上求められる職務能力の内容」「職務能力の低下の程度」「改善の機会の付与」「指導による改善の見込み」という明確な判断基準を示した点で注目されています。
PIPやその後解雇に至るまでの期間の指導・教育が十分ではなかったとして、PIP実施後の普通解雇が無効とされたケースです。
情報通信機器の開発等を行うY社に月給60万円で中途採用されたXは、2018年8月から同社に勤務していました。Y社はXの勤務成績不良に伴い、2019年9月から同年10月までの間PIPを実施しました。その後Y社は、XがPIPで多くの項目について目標を達成できなかったことや、PIP後の任務懈怠等を理由に、2020年3月13日付でXを解雇しました。なお、解雇に先がけて、2019年11月から2020年3月までの間、Y社はXに対して退職勧奨を行っていました。
XはY社に対して解雇の無効を主張し、雇用契約上の地位の確認及び損害賠償やPIP差止等を求めて提訴しました。
東京地裁は以下の理由により、解雇を無効としました。ただし、損害賠償やPIPの差止については認められませんでした。
Xには、責任感や協調性、分析や考察能力の欠如を伺わせる事情や、デジタルマーケティングにおける専門的能力が求められるY社従業員としての適格性を疑わせる事情があるため、Y社がPIPを実施したことは相当といえる。
PIP期間を終えて退職勧奨を行う前に、Y社には業務の在り方についてより踏み込んだ指導や教育を施す余地があったと考えられる。これを示す例として、Y社側は繰り返し「分析」を求めたが、XはY社が求める「分析」が何を指すかを理解できないまま、「分析」とは評価できない程度のコメントを繰り返していたことが挙げられる。
XY双方の主張と提出された証拠からは、以下の事情が明らかになっておらず、指導・教育内容が相当であったとは認められない。
Xはデジタルマーケティングの経験者として中途採用されたとはいえ、管理職ではないデジタルマーケティング「担当者」に過ぎない。給与水準が相応に高いとはいえ、会社内部における相対的位置づけは明らかではなく、入社から長い期間が経過していたともいえない。
これらの事情に鑑みれば、十分な指導・教育が行われた事実が認められないにもかかわらず、能力不足を理由としてXを解雇したことには、客観的合理的理由があり社会通念上相当であるとはいえない。
(判決理由ここまで)
本件は、PIP実施自体には相当性があるとしつつ、PIPでの指導・教育内容について「目標が明らかにされず、フィードバックの有無や内容も不明である」ことを理由に「相当性を欠く」と判断した点で特に注目されます。なぜなら、外資系企業が解雇や退職勧奨の手段として行うPIPで、「目標未達成」の結論を出すために「(故意に)目標を不明確にしておき、フィードバックも行わない」というやり方が横行していることに対して、裁判所が示した判断といえるためです。
PIP未達成を理由とする解雇・退職勧奨に遭った場合、正当な法的権利を行使するためには弁護士への相談をおすすめします。PIPによる解雇・退職勧奨への対処について弁護士に相談することには、以下のような大きなメリットがあります。
前述のように、外資系企業に対しても日本の法令が適用されるので、不当な解雇や強迫的な手段による退職勧奨に対しては法的手段をとることができます。また、退職勧奨に応じて退職する場合は、パッケージと呼ばれる特別退職金の支払いを受けられる可能性があります。解雇通知や退職勧奨を受けた場合に、弁護士に相談することで、とりうる対処法について詳細なアドバイスを受けられます。
不当な解雇や退職強要に対しては法的手段をとることができますが、労働者が単独で会社と交渉して解雇撤回や損害賠償請求等を通してもらうことは困難です。まず、会社が交渉自体応じてくれないことも少なくありません。また、交渉に応じたとしても。顧問弁護士に依頼して会社側に有利な証拠のみを提示して要求を拒絶したり、わずかな解決金の支払いのみで終わらせようとするからです。
労働者側が弁護士に依頼することにより、会社側は交渉に応じてくれるようになります。また、会社側が顧問弁護士を立てている場合も、対等に交渉を進めることができます。さらに、交渉がまとまらなかった場合も、労働審判や労働裁判などの法的手続をすべて弁護士に任せられます。
会社を解雇された場合に、一番心配になることは当面の生活資金ではないでしょうか。この点、不当解雇に対して、解雇の効力を争わずに退職する場合は、ハローワークで失業手当の申請をすることで、当面の生活資金は確保できます。
一方、解雇の撤回と復職を求める場合は、失業手当の仮給付申請が可能であることに加えて、裁判所に対して「賃金仮払い仮処分命令」の申立てを行うという手段があります。賃金仮払仮処分命令については、会社側が当該労働者と同居の親族の収入・資産が一定以上あることを反証した場合を除いて、認められる可能性が高いものです。仮払いの金額と期間についてはケースバイケースで判断されますが、生活に必要な程度の金額を最大1年程度受けられる可能性があります。
弁護士に依頼することで、賃金仮払仮処分命令申立ての手続も任せることができます。
弁護士に相談すると費用がかかりますが、当法律事務所では初回法律相談につき、30分無料相談を行っています。無料相談の時間内で、問題解決の見通しや、弁護士費用見積もりなどを詳しく聞くことができます。相談したうえで、弁護士に依頼するか検討して頂ければと思います。また、PIPに関わる労働問題の場合、PIPを命じられた時点で無料相談を利用することで、将来の労働問題に対する対応策について詳細なアドバイスを受けることもできます。
ウカイ&パートナーズ法律事務所では、外資系企業の不当解雇や退職勧奨を含む労働問題の相談につき、30分無料相談が可能です。労働問題に知見のある弁護士が対応しますので、外資系企業のPIPについてもお気軽にご相談ください。
外資系企業では、PIPを解雇や退職勧奨の手段として行うことがよくあります。しかし、解雇をちらつかせながら達成困難な目標を設定して従業員を追い詰めることは、それ自体がパワハラ(不法行為)に該当する可能性があります。また、解雇回避義務の1つである「改善機会の付与」の名目としてPIPを実施したとしても、業務の改善点について具体的な指示やフィードバックを行っていなければ、改善の機会を与えたとはいえないことが、ブルームバーグ事件の判決等で明らかになっています。
外資系企業にお勤めの方で、PIPの実施を強制されている方や、PIP後の退職勧奨・不当解雇が不安な方は、PIPを受けた時点で弁護士に相談することをおすすめします。
ウカイ&パートナーズ法律事務所では、所属する全弁護士が、PIPを理由とする解雇や退職勧奨の有効性を検討・判断した上で、とりうる対処法について懇切丁寧にお答えします。当事務所では、初回30分無料で法律相談をお受けしています。外資系企業でPIPを言い渡されたり、PIPの目標未達成を理由に解雇・退職勧奨されて対処にお困りの方は、ぜひ我々弁護士に無料法律相談をして下さい。
