
「外資系企業でマーケティングマネジャーをしていたのですが、突然このポジションを廃止する、他に配置できそうな部署がないので退職してほしいといわれました。会社の業績は悪くないし、この部門を縮小する必要があるとも思えません。転職も考えてはいますが、退職金も出ないのですぐ辞めてしまうと当面の生活が不安です。今の会社はそのまま退職するしかないのでしょうか?」
最近、当法律事務所ではこのような、外資系企業でポジションクローズに遭った方からの相談を頂くことが増えています。外資系企業の多くはジョブ型雇用をとっているため、ポジション廃止により解雇や退職勧奨を行うことが少なくありません。ポジションクローズを告げられたら、どのような行動をとればよいでしょうか?
本記事では、外資系企業のポジションクローズについて、以下の点を中心に弁護士が解説します。
ポジションクローズとは、会社(主に外資系企業)が特定の部署・役職等のポジションを廃止するとともに、そのポジションに所属していた従業員に対して退職や異動を求めることです。ここでは、ポジションクローズの目的や違法性の有無等を解説していきます。
ポジションクローズは、経営合理化を目的として行われます。企業が経営合理化を目指す場合、事業所廃止や従業員の整理解雇等の大規模なリストラを行うこともあります。一方、大規模なリストラを迫られているほどではないものの、コスト削減を求められる状況ではポジションクローズが行われることがあります。
経営合理化を目的としてポジションクローズを行う場合、次のような理由で廃止する部署や役職が選ばれることが多いです。
一方、会社の経営状態に関係なく、特定の従業員を退職させることを目的としてポジションクローズを行う場合もあります。
経営合理化を目的として行われるポジションクローズそれ自体は違法ではありません。しかし、ポジションクローズ後の対応によっては違法になる場合があります。
また、特定の従業員を辞めさせるための理由付けとしてポジションクローズを行う場合は、ポジションクローズ自体が退職強要行為として違法です。また、従業員を辞めさせる目的で行ったポジションクローズ後に従業員を解雇した場合は、不当解雇となる可能性が高いです。この場合には、外資系企業の不当解雇の専門家たる弁護士に相談すると良いでしょう。
ウカイ&パートナーズ法律事務所では、外資系企業のポジションクローズも含めた不当解雇の対応につき、初回30分無料相談を受け付けております。渋谷駅徒歩5分の法律事務所ですので、外資系企業の方のオフィスも近いかと思われます。ぜひ、外資系企業の不当解雇のご相談にいらして下さい。
外資系企業でポジションクローズされた場合、会社側からそのポジションに就いていた労働者に対して次のような措置がとられる可能性があります。
ポジションクローズを行う場合、会社から他の部署への異動や募集中の役職への応募、関連会社への出向等を打診されることが多いです。この点、異動や配置転換は、雇用者側の配置転換権が広く認められています。もっとも、雇用者と労働者との間の雇用契約において、職種や勤務地が限定された上で契約している場合は、その条件に合わない異動命令は認められません。また、実際には退職させる目的で行っていると思われるような遠隔地への転勤を伴う異動命令、前職とかけ離れた職種での異動命令などに対しては、配置転換自体が権利の濫用にあたるとして拒否することができる場合もあります。また、ポジションクローズ後に行われた、労働者にとって不当な異動命令に対する拒否によって解雇された場合は、不当解雇となる可能性があります。
ポジションクローズ後に、異動の打診なしで退職勧奨を受ける場合もあります。退職勧奨とは、会社が労働者に対して自主的な退職を促す行為です。日本では解雇に対して法的に厳しく規制されているため、辞めさせたい従業員に対しては最初に退職勧奨を行うのが通常です。
退職勧奨は、あくまで労働者側の自由な意思に基づく退職を促すものです。しかし、強引に退職を迫る働きかけが行われた場合は、「退職強要」として違法になります。
外資系企業がポジションクローズ後に退職勧奨を行う場合、特別退職金や労務免除期間付与(ガーデンリーブ)等の退職条件の提案が行われることが多いです。
ポジションクローズ後に従業員が退職勧奨に応じない場合、解雇される可能性があります。
ポジションクローズ後であっても、対象者を解雇する場合には客観的に合理性のある理由と、社会通念上の相当性が求められます。解雇の種類として普通解雇・整理解雇・懲戒解雇の3種類がありますが、ポジションクローズ後の解雇は通常、能力不足等の労働者側の問題を原因とする普通解雇ではなく、経営合理化目的で行う整理解雇にあたります。そのため、以下の整理解雇の要件を満たしていることが求められます。
ポジションクローズ後の整理解雇の場合、「廃止された部署や役職でなければその労働者を雇用継続できない」といえるだけの合理的理由が必要です。また、合理的理由があったとしても、他の部署への異動の検討や、対象者への異動打診が全く行われなかった等の事情がある場合、解雇回避努力義務を履行したとはいえないでしょう。
外資系企業が行うポジションクローズは、日本の労働法に照らして違法であることが少なくありません。ポジションクローズが不当だと思われたら、次のような対処をとることをおすすめします。
外資系企業のポジションクローズは、特定の従業員を辞めさせる目的で行われることも少なくありません。ポジションクローズが不当だと思われたら、まず弁護士に相談することをおすすめします。外資系企業のポジションクローズへの対処について弁護士に相談、依頼するメリットについて詳しくは後述します。
ポジションクローズ後に解雇されたり、強迫的な退職勧奨が行われた場合は、不当解雇や退職強要を主張して、従業員の地位の確認や慰謝料請求等を行うことができる場合があります。解雇や退職勧奨の無効を主張する場合、証拠収集等の対処について弁護士にご相談ください。また、退職勧奨に対しては、退職合意書への署名を強要されたとしても、署名しないようにしてください。一度退職合意書に署名してしまうと、後から退職勧奨の違法性を主張することが難しくなるためです。
専門性の高いポジションに就いていた場合等は、その会社に残るよりも自分のスキルが活かせる分野で転職するほうがメリットが大きいといえます。ポジションクローズを機に転職する際の退職条件交渉については、次章を御参照ください。
ポジションクローズを受けて他の会社に転職する場合には、可能な限り有利な条件で退職できるよう、退職する会社に対して次のような条件について交渉することをおすすめします。
解雇や退職勧奨による退職は、会社都合退職(失業保険の「特定受給資格者」)扱いとなります。しかし、会社によっては、会社都合退職者が出ることによる信用低下や助成金の受給資格喪失等の不利益を避けるために、自己都合退職扱いにしようとする可能性があります。
会社都合退職は、自己都合退職に比べて失業保険の待期期間・受給期間等の受給条件が優遇されるメリットがあります※。原則としては、会社都合退職扱いを受けられるよう会社側に確認することをおすすめします。一方、転職先の会社に対して「キャリアアップのために自分の意思で退職した」という前向きなイメージを与えるために、あえて自己都合退職扱いにしてもらうという選択肢もあります。
※2025年4月の改正雇用保険法施行により、自己都合退職者に対する失業保険の給付制限期間が2か月から1か月に短縮されたため、待期期間のデメリットは減少しています。
ポジションクローズに伴い退職勧奨を受けた場合、会社側からパッケージと呼ばれる特別退職金等の提示を受けることがあります。また、提示を受けなかった場合も、退職する条件として労働者側から申し出ることができます。退職パッケージには特別退職金のほか、有給の就労免除期間(ガーデンリーブ)等も含まれます。
外資系企業では、日系企業のような退職金の制度がない会社が大半です。退職金制度が存在しない代わりに、退職勧奨を行う場合には特別退職金を支給することがよくあります。ただし、特別退職金は個々の会社が任意に定める制度であり、金額や、金額に反映される要素も会社によって異なります。退職勧奨が行われた際に特別退職金が提示されなかった場合は、特別退職金の支給を求め交渉することもよくあります。また、提示された場合も、金額にどのような要素が反映されているかを確認しましょう。金額や会社の説明に納得できない場合は、増額を求めることもできます。
退職パッケージについて詳しくは、以下の記事を御参照ください。
また、特別退職金とセットで「ガーデンリーブ」と呼ばれる有給の労務免除期間を与えられることがあります。転職する場合、ガーデンリーブ期間を利用して、会社に在籍したまま転職活動を進めることができます。ガーデンリーブが提示されていない場合は、付与してもらえるよう交渉してみましょう。また、提示されたガーデンリーブ期間が不十分だと思われる場合は、期間延長を求めることもできます。ただし、ガーデンリーブと特別退職金はセットで与えられることが多いため、ガーデンリーブ期間が長くなるほど特別退職金が減額される可能性があることに注意が必要です。
ガーデンリーブについて詳しくは、以下の記事を御参照ください。
外資系企業では、退職勧奨の際に未消化の有給休暇を買い取ってくれることが多いです。法律上、会社側から買取を提示することは年次有給休暇制度の趣旨に反するため認められません。しかし、従業員が退職の際に会社に対して買取を求めることは違法ではないので、未消化の有給休暇が残っている場合は会社に買い取ってもらうよう申し出ることができます。
外資系企業のポジションクローズ後の対応の適法性が問題となったケースとして、下記のアボットジャパン合同会社事件が挙げられます。
在籍していたポジションが廃止され、別のポジションへの配置転換を命じられた従業員が、当該配置転換は職場からの排除を目的としたパワハラ行為である等と主張して、会社に対して従業員の地位確認と慰謝料等を請求した事件です。
医薬品の販売等を業とするY社は、同社の「マーケティングマネジャー」のポジションで勤務していたXに対して、当該ポジションの廃止に伴い、次の内容を告げて退職条件を提示しました。
XとY社は配置転換について半年以上話し合いを行い、結局Xは「セールス・オペレーション・マネジャー」に配置転換されました。Xは、Y社がマーケティング本部の他のポジションではなく、セールスオペレーションマネジャーへの配置転換命令を出したことは、Xを職場から排除する目的で行ったパワハラに該当すると主張し、マーケティング本部所属の従業員の地位確認と、パワハラに対する慰謝料等を求めて提訴しました。
東京地裁は、以下の理由により、ポジションクローズ及び配置転換命令は違法とはいえず、パワハラにあたらないとして慰謝料請求を棄却しました。また、従業員の地位確認の訴えについては、訴えの利益を欠くとして却下しました。
Y社が、経営戦略の変更に伴いマーケティング本部を再編成する際に、同部の業務量を考慮して、マネージャーポジションを常設する必要はないとした判断には、業務上の必要性が認められる。また、ポジションクローズは、Y社日本支部にとどまらず、同社アジア・パシフィック部門や米国本社とも議論の上での判断であったといえる。
従って、本件配置転換命令は、権利の濫用として無効とすべき特段の事情があるとはいえず有効である。「マーケティング業務からの排除を受けない労働契約上の地位を有する」旨の従業員の主張は採用できない。
また、本件地位確認の訴えは、従業員が本件配置転換命令が無効であることを理由に、本件配置転換命令前の特定のポジションにおいて特定の業務(顧客管理業務)に従事する労働契約上の地位の確認、すなわち権利・義務の確認を求める訴えであるが、労働者には原則として就労請求権はないものと解すべきである。また他方で、Xの訴えを特定のポジションにおいて特定の業務に勤務する義務の存在確認の訴えと解したとしても、自己の負担する義務の存在を確認する利益はないから、確認の利益を欠く不適法なものであって却下すべきである。
Xが主張するパワハラ等は、いずれも当該事実が認められないか、あるいは事実自体が認められるとしても、Xが主張する行為が違法な行為ないし会社の債務不履行であるとは認められないから、会社は従業員に対し不法行為または債務不履行に基づく損害賠償義務を負わない。」
(判決理由ここまで)
本件判決は、①ポジションクローズ自体が経営合理化の必要性に基づいて行われた適法なものといえるか、そして②配置転換命令がパワハラに該当するか否かについて一定の判断基準を示したものとして注目されます。
ポジションクローズ後の会社の対応に納得できない場合、まず弁護士に相談することをおすすめします。ポジションクローズ後の不当な取扱いに対して、弁護士に相談することには以下のようなメリットがあります。
ポジションクローズの適法性のみを争うことは難しいのですが、ポジションクローズ後に不当な取扱いを受けた場合は、会社に対して一定の請求ができます。弁護士に相談することで、解雇や退職勧奨、異動・配置転換命令等の対応が適法か否か、過去の判例や業務経験に照らして適切に判断してもらうことができます。
ポジションクローズ後の対応に対して、会社に何らかの請求を行う場合は、請求の根拠となる事実の証拠が必要になります。しかし、労働者側に十分な証拠がなく、有力な証拠を会社側が所持していることも少なくありません。弁護士に相談することで、どのような資料が証拠となりうるか、証拠資料の収集方法等について詳しく教えてもらうことができます。また、会社側が所持している証拠については、弁護士が労働者を代理して会社に開示を求めることが可能です。
会社に対して従業員の地位確認や慰謝料等を求める場合には、請求を認めてもらえるよう会社と交渉することになります。しかし、労働者が単独で会社と交渉して請求を認めてもらうことは容易ではありません。弁護士に交渉を依頼することで、対等な立場で冷静に話を進めることができます。また、転職する場合も、弁護士の介入により、特別退職金増額等の退職条件の交渉が可能です。
会社との交渉が折り合わなかった場合は労働審判を申し立てるか、地方裁判所に訴訟提起することになります。弁護士に依頼することで、労働審判や訴訟等の法的手続も全て任せることができます。
ウカイ&パートナーズ法律事務所では、外資系企業の労働問題に関して、弁護士が初回30分無料相談をお受けしています。外資系企業に勤務していて、突然、ポジションクローズを告げられてお困りの方は、是非当法律事務所にご相談ください。
ポジションクローズは、業務量の減少等の前兆があって労働者自身が予期できる場合もありますが、予測できない状況で突然告げられることも多いです。その部署や役職での仕事、待遇等に満足できていたのに、そのポジションを廃止すると言われたら納得できないのも当然です。また、転職を考えるとしても、できるだけ有利な退職条件を認めてもらいたいところです。ポジションクローズ後に解雇や強迫的な退職勧奨、事前打診なしの一方的な異動・配置転換命令等の不当な取扱いを受けた場合は、弁護士にご相談ください。
ウカイ&パートナーズ法律事務所では、所属する弁護士全員が、外資系企業のポジションクローズ後の対応の適法性を検討・判断した上で、とりうる対処法について懇切丁寧にお答えします。当事務所では、初回30分無料で法律相談をお受けしています。外資系企業でポジションクローズ後に解雇されたり、ポジションクローズに伴う不当な異動命令や退職勧奨を受けてお困りの方は、ぜひ当事務所の無料法律相談をお申込みください。
