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タクシー運転手の労働問題を解説! タクシー運転手に残業代請求は認められる?労働者性や不当解雇・退職勧奨への対処法と併せて弁護士が解説

2026/07/08(水)

タクシー運転手の労働問題を解説! タクシー運転手に残業代請求は認められる?労働者性や不当解雇・退職勧奨への対処法と併せて弁護士が解説

「法人タクシーの運転手ですが、給料の歩合給の割合が多いので、売上げが多いと給料は上がります。しかし、深夜早朝に仕事をしても、歩合給に残業代が含まれているという理由で残業代がもらえていません。深夜早朝の勤務がかなり多いのに、保障されていない歩合給以上の残業代が出ないのはおかしくないでしょうか?」

「タクシー会社の業務委託でライドシェア運転手をしているのですが、勤務日、勤務時間や休憩時間が決められていて、走行ルートも細かく指示されています。勤務時間が深夜になることも多いのですが、業務委託だからということで歩合給しか出ません。また、売り上げがない日は給料もゼロです。業務委託では、深夜手当等は請求できないのでしょうか?それに、勤務時間が決められているのに給料がゼロになるのは法律上問題ないのでしょうか?」

当法律事務所では、タクシーやライドシェアの運転手の方から、このような相談を頂くことが増えています。タクシー業界では人手不足が続く一方で、給与制度を操作して残業代を支払わない、業務委託の運転手に対しては実態にかかわらず歩合給しか支払わない等の不正な慣行が常態化しています。

そこで、本記事では、タクシー運転手が残業代請求や解雇無効の主張等の権利を行使できるか否かについて、以下の点を中心に解説します。

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はじめに:労働者性の論点

ある業務に従事している人が、使用者に対して残業代請求等、労働関係法令で認められた権利を行使するためには、労働基準法第9条の「労働者」に該当している必要があります。また、労働基準法等の「労働者」に該当することを「労働者性」といいます。ここではまず、労働者性の判断基準及び、タクシー運転手が労働者に該当するか否かについて解説していきます。

労働者性の判断基準

労働者性の判断基準について、現在は、厚生労働省が1985年に発表した「労働基準法研究会報告(労働基準法の「労働者」の判断基準について)」(以下「厚労省S60報告」)が用いられています。

  • ①他人の指揮監督下において労務を提供している(指揮監督関係)
  • ②指揮監督下における労働の対価として賃金の支払を受けている(報酬の労務対償性)
  • ③事業性・専属性等(上記の2基準のみでは判断が難しい場合)

上記①②をあわせて「使用従属性」と呼びます。使用従属性を判断する上で、特に重視されるのが上記①の「指揮監督関係」の中の次の基準です。

  • 仕事の依頼・業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無
  • 業務遂行上の指揮監督の有無
  • 場所的時間的拘束性の有無

使用従属性の判断基準等、労働者性の論点について詳しくは、以下の記事を御参照ください。

労働者性についてのコラムはこちらへ
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タクシー運転手は労働者にあたるか?

1.一般タクシー業の場合

一般的なタクシー業の場合、タクシー会社(法人タクシー)に雇用されて乗務している運転手には上記の使用従属性が認められるため、労働者に該当することに問題ありません。これに対し、個人タクシーの運転手は個人事業主であるため、労働者に該当しません。タクシー運転手が「労働者」に該当する以上、残業代請求や不当解雇・退職勧奨に対して労働関係法令に基づいた権利行使ができることになります。

2.ライドシェア運転手の場合

日本の場合、個人事業主のライドシェア運転手であっても、タクシー会社の指揮命令を受けて乗務に従事していることから、労働者性が認めるべきという意見が強まっています。この点は、判例の蓄積がまたれるところではありますが、ライドシェア運転手の労働者性を判断する場合、以下のような事情について考慮することになります。これらが全て、あるいはほとんど全て認められる場合は、労働者に該当する可能性が高いでしょう。

【指揮監督の有無】
  • 勤務時間を会社が指定している
  • 勤務日や休日を会社が決めている
  • 休憩時間を会社が指定している
  • ルートや接客方法等、業務遂行について細かい指示を受けている

【事業性等】
  • 会社所有の車両を使っている
  • 制服や名札の着用を義務づけられている
  • 仕事を他人に代わってもらうことができない

【報酬】
  • 走行距離や売り上げにかかわらず固定給が支払われる
  • 交通費やガソリン代を会社が負担している
  • 社会保険に加入している
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仕事中の事故で会社から車の修理費を請求されたら

タクシー運転手の労働者性が問題になるケースとして、運転手が仕事中に事故を起こした場合に、運転手が車の修理費を負担しなければならないかが問題となることがあります。

タクシー運転手の労働者性が認められる場合、使用者が労働契約の不履行について違約金を定めること、または損害賠償額を予定する契約をすることを禁止した労働基準法第16条が適用されます(つまり、タクシー運転手の労働者性が認められるかどうかが非常に重要になります)。
ただし、同条によっても、会社が運転手に対して修理代を請求すること自体が禁止されるわけではありません。通達によれば、「同条は賠償金額を予定することを禁止するのであって、現実に損じた損害について賠償を請求することを禁止する趣旨ではない」とされています(昭和22(1947)年9月13日発基第17号)。

判例上、被用者(従業員)が起こした事故について使用者(会社)が被害者に賠償した場合の被用者への求償については「損害の公平な分担という見地から、信義則上相当と認められる限度において」求償できるとしています(最高裁第一小法廷1976年7月8日付判決:茨城石炭商事事件)。タクシーの事故の場合、会社から運転手に対する全額一括請求が無条件に認められることはなく、運転手に重大な過失または故意がない限り、全額請求は制限されます。上記の最高裁判決のケースでは、会社が運転手に請求できるのは損害額の4分の1までとされました。

多くの場合、被害者に対する賠償については会社が加入している自動車保険(任意保険+車両保険)でカバーした上で、保険会社の免責額が生じた場合に、運転手の過失の程度に応じた割合を求償するのが妥当といえます。

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タクシー運転手の残業代請求は認められるか?

タクシー運転手の残業代請求は認められるか?

タクシー運転手に労働者性が認められる場合、労働時間が法定労働時間を超えた場合や、法定休日、22時~5時に労働した場合は労働基準法第37条に基づいて割増賃金が支払われなければなりません。一方、タクシー運転手の給与は歩合制によることが多く、会社側は「歩合給に時間外労働手当が含まれている」あるいは「売上げがなければ残業代は発生しない」等として、残業代を支払っていないことがよくあります。

そこで本章では、給与の一部または全部が歩合給である場合も、残業代請求が認められるか否かについて解説します。

歩合制でも残業代は発生する

タクシー運転手の給与は、固定給と歩合給を組み合わせて支払われることが多いですが、会社によっては完全歩合制を採用していることがあります。この点、まず、タクシー運転手に労働者性が認められる場合は、完全歩合制であっても売上高にかかわらず、一定額の賃金が保障されています。これは、労働基準法第27条により、「出来高払い制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない」と定められているためです。また、保障する賃金額は、同法第28条及び最低賃金法で定められた最低賃金額を下回らない額でなければなりません。

そして、完全歩合制であっても、時間外労働等に対して割増賃金が支払われなければなりません(労働基準法施行規則第19条1項6号)。最高裁判決でも、完全歩合制をとっているタクシー会社の乗務員に対する割増賃金支払い義務が認められています(最高裁第1小法廷1994年6月13日付判決:高知県観光事件)。

歩合制の残業代の計算方法

残業代(時間外労働・休日労働・深夜労働に対する割増賃金)の計算方法の原則は、【1時間あたりの基礎賃金x残業時間x割増率】です。

タクシー会社の給与形態には、以下の3種類があります。

  • A型:基本給に歩合給と賞与が加わる給与体系
  • B型:完全歩合制
  • AB型:A型とB型の中間形態(歩合給の一部を賞与に分配する)

近年は、AB型の給与形態を採用する会社が最も多くなっています。
以下、それぞれの場合の残業代の計算方法を見ていきましょう。

1.A型(固定給+歩合給)の場合

基本給、職能給等の固定給に、売上げに応じた歩合給が加算される併用型の場合、残業代は固定給の部分と歩合給の部分に分けて計算する必要があります。また、割増率はそれぞれ以下のようになります。

  • 固定給部分:時間外労働125%、休日労働135%、法定時間外+深夜労働150%
  • 歩合給部分:時間外労働25%、休日労働35%、法定時間外+深夜労働50%

これは、労働基準法第37条により、「出来高払い制その他の請負制によって賃金が支払われている場合」であっても割増賃金の基礎に参入すべき旨定められているためです。

※タクシー会社の場合、1年単位の変形労働時間制を採用している会社が多くあります。この場合、基礎賃金は1年分の固定給と歩合給を合計した額を1年分の労働時間で割った額となります。

これにより、残業代は次の方法で算出します。

  • (1)固定給部分の基礎賃金を算出して、該当する割増率を掛ける%
  • (2)歩合給部分の基礎賃金を算出して、該当する割増率を掛ける%
  • (3) (1)と(2)それぞれの1時間あたりの残業代の合計額に残業時間を掛ける

例:所定労働時間月160時間、固定給月24万円、歩合給=月間売上の20%(賞与は別途支給)の会社で、ある月の売上が60万円、時間外労働が10時間だった場合

(1)固定給部分の基礎賃金:24万円÷160=1,500円
 固定給部分の1時間あたりの残業代:1,500x1.25=1,875円

(2)歩合給部分の基礎賃金:60万円x0.2 ÷160=750円
 歩合給部分の1時間あたりの残業代:750x0.25≒187円

(3)その月の残業代:(1,875円+187円)x10=20,620円

2.B型(完全歩合制)の場合

完全歩合制の場合、残業代は歩合給を総労働時間で割った1時間あたりの賃金(基礎賃金)に、残業時間と割増率を掛けて算出します。ただし、歩合給の場合は、すでに歩合給に基礎賃金が含まれているとみなされるため、割増率は時間外労働25%、深夜労働25%、休日労働35%、法定時間外かつ深夜50%となります。

例:所定労働時間月160時間、歩合給=月間売上の50%の会社(最低賃金は保障される)で、ある月の売上が60万円、時間外労働が10時間だった場合

(1)基礎賃金:60万円x0.5 ÷160=1,875円
 1時間あたりの残業代:1,875x0.25≒468円

(2)その月の残業代:468円x10=4,680円

3.AB型(歩合給の一部を賞与に分配する賃金形態)の場合

AB型賃金形態の場合、計算の手順はA型と同じです。ただし、歩合給のうち賞与に分配される部分は基礎賃金の対象から除外されます。

例:所定労働時間月160時間、固定給月24万円、歩合給=月間売上の40%、歩合給の30%が賞与として年2回支給される会社で、ある月の売上が60万円、時間外労働が10時間だった場合

(1)固定給部分の基礎賃金:24万円÷160=1,500円
 固定給部分の1時間あたりの残業代:1,500円x1.25=1,875円

(2)歩合給の基礎賃金対象額:60万円x0.4x0.7=16万8,000円
 歩合給部分の基礎賃金:16万8,000円÷160=1,050円
 歩合給部分の1時間あたりの残業代:1,050円x0.25≒262円

(3)その月の残業代:(1,875円+262円)x10=21,370円

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タクシー運転手の残業代の請求方法

タクシー運転手が会社に残業代請求する場合、以下の方法で行います。

1.証拠を集める

まず、残業代の証拠となる資料を集めます。タクシー運転手の残業代の有効な証拠として、次のようなものが挙げられます。

(1)勤務時間の証明となる資料

  • 車両に設置された運行記録装置(速度、走行時間、休憩等が記録されている)
  • 点呼記録簿(出庫、帰庫時の点呼の時間場記録された書類)
  • 配車記録・乗務日報
  • GPS記録・ドライブレコーダーのデータ(稼働時間が記録されている場合がある)

これらのうち、会社が保存しているものについては、開示請求が可能です。会社が応じない場合は、弁護士に依頼することで労働者を代理して開示請求ができます。

(2)労働契約・給与体系に関する資料

  • 雇用契約書、就業規則
    労働時間や賃金体系を証明する資料となります。
  • 給与明細書
    給与明細は、実際に支払われた賃金や歩合給の割合、時間外・休日・深夜手当の支払の有無や金額等が確認できます。

(3)本人が記録したデータ

本人が記録したデータは証拠としての客観性は劣りますが、他の資料と併せると証拠価値が認められます。以下のような資料が、できれば2種類以上あることが望ましいでしょう。

  • 勤務時間、終業時間、休憩時間、業務内容の記録
  • スマホのGPSアプリの移動履歴
  • 出庫・帰庫時の写真(メーター、車庫等:フォトアプリで撮影日時を確認できます)

2.未払い残業代を計算する

証拠がそろったら、未払いの残業代を分単位で計算します。残業時間が時間外労働、休日労働、深夜労働のいずれに該当するかについては、判断が難しい場合があります。また、残業代請求権は、「行使できるとき」つまり各月の給料日から3年で消滅時効にかかるため、時効期間を経過した残業代の有無や金額についても調べる必要があります。これらを労働者自身が判断して正確な請求額を算出することは難しいため、弁護士への相談をおすすめします。

3.会社と交渉する

未払い残業代の計算ができたら、会社に対して内容証明郵便で請求書を送付して、交渉を申し入れる必要があります。内容証明郵便による請求書送付が必要なのは、残業代の請求権が消滅時効(労働基準法第115条)にかかるのを防ぐためです。

4.法的手段をとる

会社との任意交渉が成立しなかった場合、労働審判申立てを行うか、訴訟提起によって残業代請求を行います。労働審判と訴訟には以下のような違いがあります。

労働審判訴 訟
適した状況相手方に譲歩の余地がある
当事者が早期解決を望んでいる
証拠が揃っている
強制力のある解決を望んでいる
メリット原則3回の期日で手続が終了するため早期解決が可能
審理が非公開で行われるためプライバシーが守られる
判決または和解により強制力のある解決ができる
デメリット以下の場合審判が無効になるため強制力が弱く、また手続にかかった時間と労力が無駄になる・審判結果に対して一方が異議を申し立てた
・労働審判委員会の判断で審判を終了させた場合
解決まで時間がかかる
事実上弁護士への委任が必要なので弁護士費用がかかる

労働審判結果が無効になった場合や、最初から訴訟提起するのが望ましいと判断された場合は、訴訟提起により解決を目指します。訴状を提出する裁判所は、以下の条件に従って決まります。

労働審判を経ている労働審判を経ていない
請求額140万円以下労働審判を行った地方裁判所(会社の所在地を管轄する地裁)会社の所在地を管轄する簡易裁判所
請求額140万円超同上会社の所在地を管轄する地方裁判所

先に労働審判を申し立てるか、最初から訴訟提起するかを的確に判断するのは労働者単独では難しいため、弁護士への相談・依頼をおすすめします。

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タクシー運転手の残業代請求の可否が争われた裁判例

タクシー運転手の残業代請求訴訟では、歩合給に時間外労働等の割増賃金が含まれているといえるかが争点となることが多いです。ここでは、主に歩合給への時間外労働手当組入れの適法性が争われた最高裁判決2件と、最近の地裁判決をご紹介します。

1.高知県観光事件(最高裁第二小法廷1994年6月13日付判決)

時間外労働等の割増賃金を歩合給に組入れて支払うことの適法性が争われた事件の最高裁判決で、国際自動車事件と並んで代表的な裁判例です。

【事実の概要】

タクシー会社Yの従業員Xらは、以下の労働条件でタクシー乗務員として勤務していました。

  • 隔日勤務
  • 労働時間は午前8時から翌日午前2時まで、うち休憩2時間
  • 賃金は月間売上高に一定の歩合を乗じた金額

一方、午前2時以降等の深夜や、午前5時~8時の時間外に労働した場合も、歩合給以外の賃金は支給されていませんでした。また、歩合給のうち、通常労働時間に当たる部分と時間外・深夜労働の割増賃金に当たる部分が給与明細等で判別できない状態でした。Xらは、時間外労働及び深夜労働の割増賃金及び同額の付加金の支払を求めて提訴しました。一審はXらの請求を認めましたが、控訴審(高松高裁1990年10月30日付判決)は原判決を一部変更したため、Xらが上告しました。

【裁判所の判断】

最高裁は、以下の理由により、原判決を破棄し、Y社に対して消滅時効期間が経過した部分を除く割増賃金及び付加金の支払いを命じました(破棄自判)。

Xらに支給された歩合給の額が、時間外及び深夜の労働を行った場合においても増額されるものではなく、通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外及び深夜の割増賃金に当たる部分とを判別できないものであったことからして、この歩合給の支給によって、労働基準法第37条の規定する時間外及び深夜の割増賃金が支払われたとすることは困難というべきである。従って、Y社には、Xらに対して、労基法第37条及び労基法施行規則第19条1項6号の規定に従って計算した額の割増賃金を支払う義務がある。

(判決理由ここまで)

本判決は、労働者側からみて通常賃金分と割増賃金分との判別ができない状態でまとめて支払を行い、その支払をもって割増賃金分の支払もなされていると判断することはできないとの判断を示した点で注目されます。

2.国際自動車事件(最高裁第一小法廷2020年3月30日付判決)

歩合給の計算において、売上高の一定割合から残業代相当額を差し引く旨定めた賃金規則の適法性が問題となったケースです。

【事実の概要】

Y社は、就業規則の一部である賃金規則において、以下のように定めていました。

  • タクシー乗務員の[歩合給(1)]は、売上高に基づき計算した[対象額A]から、割増金(時間外労働手当+深夜手当+公出手当)及び交通費を差し引いたものとする
  • 上記[歩合給(1)]の算定にあたり、[対象額A]から割増金と交通費を差し引いた金額がマイナスになる場合は[歩合給(1)]の支給額を0円とする

この賃金規則の下で、実際にXらタクシー運転手への[歩合給(1)]支給額が0円とされたこともありました。Xらは、かかる賃金規則は無効であるとして、差し引かれた時間外労働手当等に相当する賃金等の支払いを求めて提訴しました。

一審~第二次控訴審では、以下のように判断されました。

判決結論主な判示
一審
第一次控訴審
請求認容
控訴棄却
Y社の当該賃金規則は公序良俗に違反し無効(民法第90条)
第一次上告審
(最高裁第三小法廷2017年2月28日付判決)
破棄差戻当該賃金規則の定めは当然に労基法第37条の趣旨及び公序良俗に反するとはいえない
第一次控訴審では、通常賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別できるか否かの審理・判断がなされていないため原判決を破棄し差し戻す
第二次控訴審請求棄却本件賃金規則では通常賃金相当部分と割増賃金相当部分が明確に区分されている
当該賃金規則に基づいて割増賃金として支払われた額は労基法第37条等に基づいて算定した割増賃金額を下回らないから、Xらに支払われるべき未払い賃金があるとはいえない →Xらが上告

【裁判所の判断】

最高裁(第二次上告審)は、以下の理由により、原判決を破棄して事件を高裁に差し戻しました。

(1)労基法第37条の割増賃金が支払われたといえるか

使用者が労働者に対して、労基法第37条の定める割増賃金を支払ったといえるか否かを判断するためには、「割増賃金として支払われた金額」が、「通常の労働時間の賃金相当額を基礎として、労基法第37条等に定められた方法により算定した割増賃金額」を下回らないか否かを計算することになる。
その前提として、労働契約における賃金の定めにつき、「通常賃金に当たる部分」と「同条の定める割増賃金に当たる部分」とを判別できることが必要である。

そして、会社側が「労働契約に基づく特定の手当を支払うことにより、労基法第37条の定める割増賃金を支払った」と主張している場合において、上記判別ができるというためには、当該手当が「時間外労働等に対する対価」として支払われていることを要する。かかる「対価性」の判断にあたっては、以下のような事情を考慮して判断すべきである。

  • 当該労働契約にかかる契約書等の記載内容
  • 当該手当の名称や算定方法
  • 当該労働契約の定める賃金体系全体における当該手当の位置づけ
(2)本件へのあてはめ

[Y社の「本件賃金規則に基づく割増金」は、労基法第37条の割増賃金として支払った」旨の主張について]この割増金は、時間外労働等の時間数に応じて支払われる一方で、通常賃金である[歩合給(1)]の算定にあたり[対象額A]から控除される額としても用いられる。そのため、時間外労働等の時間数が多くなれば、[対象額A]から控除される金額が大きくなる結果として、[歩合給(1)]が0円となることもある。

とすれば、本件賃金規則の定めるこのような仕組みは、実質において、元来は[歩合給(1)]として支払うことが予定されている賃金の一部につき名目のみを割増金に置き換えて支払っているものというべきである。それゆえに、当該割増金は、その一部に時間外労働等に対する対価が含まれているとしても、通常賃金である[歩合給(1)]として支払われるべき部分を相当程度含んでいると解さざるを得ない。

そして、割増金のうちどの部分が時間外労働等の対価に当たるかは明らかでないから、当該賃金規則につき、「通常賃金に当たる部分」と「労基法第37条に定める割増賃金に当たる部分」とを判別できないことになる。従って、当該割増金の支払いにより、労基法第37条の定める割増賃金が支払われたということはできない。

よって、本件において[対象額A]から控除された割増金は、割増賃金にあたらず、通常賃金にあたるものとして、労基法第37条等に定められた方法により、Xらに支払われるべき割増賃金の額を算定すべきである。

(判決理由ここまで)

本件判決後、差戻審の審理中に、Y社がXらに対して残業代を支払う旨の和解が成立しました。

タクシー会社の中には、賃金規則で歩合給の計算にあたり、売上高の一定割合に相当する金額から「残業手当等に相当する金額」を控除する旨定めているところが少なくありません。本判決は、かかる賃金規則の有効性を事実上否定した点で注目されます。

3.洛東タクシー事件(京都地裁2021年12月9日付判決)

歩合給を時間外労働手当を含める給与制度の適法性及び、乗客なしでのいわゆる「流し」の走行時間等が労働時間に含まれるか否かが争点となった事件です。

【事実の概要】

京都市にあるタクシー会社グループ(Y)は、長時間の流し走行、休憩場所に向かう時間、休憩場所から客待ち場所に戻る時間等を労働時間から除外した上、「基準外手当」(歩合給)の支給に割増賃金が含まれるとして残業代を支払っていませんでした。

Yグループのタクシー会社及びホテルハイヤー会社従業員のXら27名は、長時間の客無し走行等が労働時間に含まれるとした上で、それらの時間を含めて算定した法定時間外労働の割増賃金(合計1億900万円)の支払いを求めて提訴しました。

【裁判所の判断】

京都地裁は、以下の理由により、Xらの請求をほぼ認めて、会社に対して未払いの時間外労働手当及び付加金合計約1億500万円の支払いを命じました。

(1)歩合給に時間外労働手当を含める給与制度の適法性について

歩合給の中に一定時間分の時間外労働手当を含める給与制度が適法であるというためには、いわゆる「固定残業代」として、何時間分の時間外労働に対する残業代が何円支払われるかを明確にした上で、その支払方法について労使で合意しなければならない。また、その残業代に相当する時間数を超えて時間外労働が行われた場合には、超過時間相当の残業代が追加支給されなければならない。しかし、本件では、各労働者、労働組合とも会社から歩合給に残業代が含まれる旨の説明を受けたことはなく、それゆえ支払方法についての労使間の合意も存在しない。従って、歩合給をいわゆる固定残業代の支払いとして有効と認めることはできない。

(2)乗客無しでの長時間走行等が労働時間に含まれるか否かについて

(下記「これらの走行時間」は、①乗客無しでの長時間走行、②休憩場所に向かって走行する時間、③休憩場所から客待ち場所に戻る時間、④車庫内で機器にSDカード挿入後出庫して営業車両を短時間使用した上で帰庫した場合の営業車両の使用時間を指します)

(これらの走行時間のいずれについても)当該時間について労働から解放されていたとは認めがたく、乗車を希望する客がいた場合にはすぐに運送業務を行うこととなるのであるから、当該時間についても労働契約上の役務の提供が義務づけられていたものであり、Yの指揮命令下に置かれていたと認めるのが相当である。従って、これらの走行時間は、労働時間に当たるというべきである。

((判決理由ここまで)

京都地裁はさらに、訴訟提起以前にYグループ労働組合に対する不当労働行為や、個別の組合員に対する不利益取扱い等が行われていたこと等を考慮して、未払い残業代と同額の付加金の支払いも命じました。

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タクシー運転手が不当解雇に遭った場合の対処法

タクシー運転手に労働者性が認められる場合、不当解雇に対して従業員の地位確認、バックペイ(解雇時から現在までの賃金相当額)や慰謝料等の請求が可能です。タクシー会社から解雇通知を受けた場合は、以下のように対処してください。

  • 会社に解雇理由証明書の交付を請求する
  • 請求できる権利を確認する
  • 解雇の違法性を証明する証拠を集める
  • 会社と交渉する
  • (交渉不成立の場合)労働審判申立てまたは訴訟提起
  • 失業保険の仮給付申請(復職を希望する場合)
  • 同・本給付申請(復職を希望しない場合)

解雇通知を受けた場合の対処法について詳しくは、以下の記事を御参照ください。

能力不足を理由とした解雇についてのコラムはこちらへ
整理解雇についてのコラムはこちらへ
懲戒解雇についてのコラムはこちらへ
バックペイの請求についてのコラムはこちらへ

解雇が違法か否かを判断するためには裁判例も含めた専門知識が必要であるため、できるだけ早く弁護士にご相談ください。

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タクシー運転手が不当な退職勧奨に遭った場合の対処法について

日本では解雇に対する法的規制が厳しいため、辞めさせたい従業員に対しては退職勧奨を行うことが多いです。ここでは、タクシー運転手に対する退職勧奨が違法になる場合や、退職に応じたくない場合にとるべき対処法について解説していきます。

タクシー運転手に対する退職勧奨が違法になる場合

退職勧奨は自発的な退職を促す行為なので本来は違法ではありません。しかし、退職勧奨の方法によっては違法になる場合があります。違法な「退職強要」に該当する可能性があるのは次のような場合です。

  • 暴力や侮辱的な発言、脅迫を伴う退職勧奨(パワハラ行為)
  • 退職勧奨を拒否しても執拗に退職を迫る
  • 欺瞞的な説明により退職に誘導する

退職勧奨の違法を主張する場合、労働者側から退職の取消、慰謝料請求、バックペイ(退職時から現在までの期間分の賃金相当額支払)等の請求が可能です。

退職勧奨に応じたくない場合の対処法

退職に応じたくない場合は、次の対処を行うことをおすすめします。

1.退職合意書にサインしない

退職に応じたくない場合に、一番大切なのは「退職合意書にサインしない」ことです。退職勧奨が行われる場合、会社から面談に呼び出されていきなり退職合意書を提示され、署名を促されるという流れになることがよくあります。さらに、「退職しなければ解雇する」「あなたの成績ではこれ以上うちの会社にはいられない」等の言動により心理的に追い込まれることも少なくありません。しかし、一度退職合意書にサインしてしまうと、退職の合意の意思表示を取消すことが難しくなります。法律的には強迫による意思表示の取消を主張できる可能性はありますが、そのために必要な証拠が残っていないことが多く、実際には困難です。退職合意書を提示された場合は、拒否するか、応答を保留してください。

2.弁護士に相談する

退職勧奨を受けた場合は、できるだけ1回目の退職勧奨の時点で弁護士に相談してください。弁護士が介入することで、適切な対処法を教えてもらえる他、代理人弁護士による書面送付や会社との交渉が可能になります。

3.書面で退職に応じない旨の意思表示をする

労働者には退職勧奨に応じる義務がない以上、会社に対して退職勧奨をやめるよう求めることができます。退職勧奨の停止を求める場合は、弁護士に依頼して、弁護士名義で会社に送付する受任通知に「従業員に対する退職勧奨行為を停止してください」と記載してもらうことをおすすめします。

電話相談はできませんので、渋谷の事務所にご来所下さい。

弁護士にタクシー運転手の労働問題を相談

タクシー運転手が会社とトラブルになった場合、タクシー運転手の労働者性が認められるか否かが重要な意味を持つ一方、その判断には専門知識が必要です。適切に対処するために、我々弁護士に相談することをおすすめします。タクシー運転手が労働トラブルについて弁護士に相談することには、次のようなメリットがあります。

タクシー運転手が「労働者」にあたるか判断してもらえる

残業代請求等、労働関係法令に基づく請求を行うためには、その法律で定義される「労働者」の要件(ほとんどの場合、労働基準法第9条と同義)を満たしている必要があります。タクシー運転手の場合、法人タクシーの従業員が労働者に該当することについては問題ありません。一方、業務委託のライドシェア運転手のように、個別の事情により労働者性が認められるか否かが異なり、その判断が難しい場合も少なくありません。

弁護士に相談することで、判例や業務経験に基づいて、相談者様が「労働者」に該当する可能性について、的確に判断してもらうことができます。

どのような請求ができるか判断してもらえる

労働者性が問題になるケースでは、残業代や不当解雇のバックペイ(解雇後の期間分の賃金相当額)の請求の可否が争われることが多いですが、可能な請求は個別の事案により異なります。また、業務委託のケースで労働者性が認められる可能性が低い場合でも、債務不履行や不法行為に基づく損害賠償請求等、何らかの請求ができる可能性があります。

弁護士に相談することで、労働者性を主張できる場合とできない場合でそれぞれどのような請求が可能であるか、的確に判断してもらうことができます。

証拠収集のアドバイスとサポートが受けられる

残業代等を請求する場合、主張を証明できる証拠を揃える必要があります。しかし、タクシー運転手の場合、給与明細が未払い残業代発生の証拠として使えないことも多く、従業員自身で有効な証拠を揃えることは容易ではありません。また、労働者性が問題となる場合は、使用従属性があることを証明する資料も必要となります。

弁護士に相談することで、労働者性と請求それぞれを証明するためにどのような証拠が役立つか、それらはどのように収集するか等について、詳しく教えてもらうことができます。また、会社側が保持している証拠の開示請求等、適宜証拠収集のサポートも受けられます。

相手方との交渉を任せられる

タクシー運転手が会社に対して残業代等の請求を行う場合、請求書類を内容証明で会社宛てに送付した上で、請求を認めてもらえるように交渉する必要があります。しかし、従業員本人が、労働者性の根拠を主張して請求を認めてもらうことは困難です。会社が交渉に応じてくれないことも多く、また顧問弁護士に依頼して一方的に請求を拒否される可能性もあります。弁護士に相談することで、対等な立場で冷静に交渉を進めることができます。

ウカイ&パートナーズ法律事務所では、初回30分無料で法律相談をお受けしています。「深夜労働が多いのに歩合給を理由に残業代を支払ってもらえない」「業務委託を理由に、売上げが少ないと最低賃金以下の報酬しかもらえない」等、労働トラブルでお困りのことがありましたら、お気軽に当法律事務所の無料相談をご利用ください。

電話相談はできませんので、渋谷の事務所にご来所下さい。

まとめ

タクシー運転手の場合、タクシー会社に雇用されていれば「労働者」に該当することについては問題ありません。一方、タクシー会社との業務委託契約で働くライドシェア運転手の場合、契約形態にかかわらず、労働の実態によって労働者性が認められる場合があります。「歩合給があるから残業代が出ない」「業務委託だから売上げがなければ給料が出なくても仕方ない」等と諦めず、給料等の労働問題で疑問があれば、弁護士への相談をおすすめします。

ウカイ&パートナーズ法律事務所では、所属する弁護士全員が、タクシー運転手の労働者性の判断や使用者・業務委託者の行為の適法性を検討・判断した上で、とりうる対処法について懇切丁寧にお答えします。当事務所では、初回30分無料で法律相談をお受けしています。タクシー運転手の方が不当解雇や退職強要、未払残業代や不当な修理代金請求等でお困りの場合は、ぜひ当事務所の無料法律相談をお申込みください。

電話相談はできませんので、渋谷の事務所にご来所下さい。

 

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