
トラック運転手等の運送業界のドライバーは、長時間労働が当たり前になっている一方で、時間外労働に対して法律上支払いが義務づけられている残業代の未払いも常態化しています。残業代を支払わない会社は「歩合給の支給」や「固定残業代」を理由にしたり、あるいは残業代を支払っていても、割増賃金から歩合給を差し引く等の違法な手段をとっていることが少なくありません。
また、近年働き方が多様化する中で、自己所有の車両により、他人の依頼・命令等に基づいて製品等の運送業務に従事する者にあたる「傭車運転手」が労働者にあたるかという問題があります。
また、近年では、ウーバーイーツ等フードデリバリーの配達員等、会社に雇用されずに業務委託契約で運送・配送業務に従事する人も増加しています。ウカイ&パートナーズ法律事務所でも、業務委託で働くドライバーや配達員の方から、「業務委託だからと言って残業代を払ってくれない」、「仕事上の縛りが多いのに、出来高が少ないと最低賃金以下の報酬しかもらえない」等の相談を頂くことが増えています。
そこで、本記事では、運送業者のドライバーが労働者として行使できる権利について、以下の点を中心に解説します。
運送業者のドライバーが会社に対して残業代請求等、労働関係法令で認められた権利を行使するためには、労働基準法や労働契約法の適用を受ける「労働者」に該当している必要があります。また、労働契約法、育児介護休業法等の多くの労働関係法令の適用を受ける「労働者」は、労働基準法の「労働者」と同様です。労働基準法等の「労働者」に該当することを「労働者性」といいます。ここではまず、労働者性の判断基準及び、運送業界のドライバーが労働者に該当するか否かについて解説していきます。
労働者性の判断基準について、現在は、厚生労働省が1985年に発表した「労働基準法研究会報告(労働基準法の「労働者」の判断基準について)」(以下「厚労省S60報告」)が用いられています。
上記①②をあわせて「使用従属性」と呼びます。使用従属性を判断する上で、特に重視されるのが上記①の「指揮監督関係」の中の次の基準です。
使用従属性の判断基準等、労働者性の論点について詳しくは、以下の記事を御参照ください。
それでは、運送ドライバーの労働者性について見ていきましょう。
まず、運送業者に雇用され、会社が所有するトラック等の車両を運転して運送業務に従事するドライバーが労働者に該当することについては問題ありません。労働者性が特に問題となるのは「傭車運転手」、つまり、自己所有の車両により、他人の依頼・命令等に基づいて製品等の運送業務に従事する者の場合です。
傭車運転手の労働者性の判断については、厚生労働省が1985年に発表した「労働基準法研究会報告(労働基準法の「労働者」の判断基準について)」において、以下の判断基準を示しています。
| 指揮監督関係 | (1)仕事の依頼・業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無 諾否の自由がある:指揮監督関係の存在を否定する重要な要素 諾否の自由がない:指揮監督関係の存在を補強する一要素にすぎない (2)業務遂行上の指揮監督の有無 ・業務の内容及び遂行方法に対する指揮命令の有無 運送物品、運送先及び納入時刻の指定は運送業務の性格上当然であるため、これらが指定されていることは指揮監督の有無に関係しない 運送経路、出発時刻の管理、運送方法の指示等がなされ、運送業務遂行が「使用者」の管理下で行われていると認められる場合は業務遂行上の指揮命令を受けていると考えられる ・その他 当該傭車運転手が、契約による運送の他、使用者の依頼・命令により他の業務に従事する場合がある→運送業務及び他の業務全体を通じて指揮監督を受けていることを補強する重要な要素となる (3)場所的時間的拘束性の有無 勤務場所・勤務時間が指定、管理されていないことは指揮監督関係の存在を否定する重要な要素となるこれらが指定、管理されている場合も、業務内容から必然的に必要となる場合もあり指揮監督関係の存在を肯定するひとつの要素となるに過ぎない (4)代替性の有無 他の者が代わって労務提供を行う、補助者を使う等が認められている→指揮監督性を否定する要素となる代替性が認められていない→指揮監督関係の存在を補強する要素となる |
| 報酬の労務対償性 | 報酬が出来高制ではなく時間・日単位で支払われる場合は、金額の多寡に関わらず報酬の労務対償性が強い |
| 労働者性の判断を補強する要素 | (1)事業性(事業者性)の有無 ①業務に必要な機械・器具類の負担 傭車運転手は高価なトラック等を所有しているため、事業者性があるものと推認される ②報酬額 報酬額が同社の同種業務に従事する正規従業員と比較して著しく高額な場合、当該報酬は「事業者に対する運送代金の支払い」と捉えられ労働者性を弱める要素となる(報酬の算定方法によっては、報酬額が著しく高額であっても労働者性を弱める要素とならない場合もある) (2)専属性の程度 ・他社の業務に従事することが制約され、または他社の業務に従事する場合であってもそれが「使用者」の紹介、斡旋等による場合は、専属性の程度を高め、労働者性を補強する要素のひとつとなる場合もある (3)その他 ・報酬について給与所得としての源泉徴収を行っているか、雇用保険の適用対象としているか、服務規律を適用しているか等は労働者性の判断にあたって重要な要素とはならないが労働者性を補強する要素となる |
近年、ウーバーイーツ等のフードデリバリーやメール便配達等で、発送元との雇用契約ではなく、配達業務委託を受けた個人事業主が貨物の配達に従事する形態が増えています。この点、個人事業主の配達員については、一般的には労働基準法上の使用従属性が否定されています。ですので、多くの方は「労働者」にあたらないと考えて下さい。もっとも、個別の配達員の働き方の実態に照らして、使用従属性が認められれば、例外的に労働基準法の「労働者」に該当する可能性があります。
また、労働基準法の「労働者」に該当するかの問題とは別に、労働組合法の適用については、近年の労働委員会が認める判断を下しています(東京都労働委員会2022年11月25日付決定)。また、2021年の労災保険法改正により、フードデリバリーや日用品の配達員が労災保険の「特別加入制度」の対象者になりました。現在、配達員の労働関係法上の権利行使については、次のような状況にあるといえます。
| 最低賃金の保障 | 原則なし(個別の業務遂行形態により認められる場合あり) |
| 残業代請求 | 原則不可(個別の業務遂行形態により認められる場合あり) |
| 契約解除に対する、解雇制限規定に基づく権利行使 | 同上 |
| 労働組合の結成・団体交渉権等行使・不当労働行為に対する救済申立て等 | 可能 |
| 労災保険給付の受給 | 可能(労働局承認の「特別加入団体」に加入して組合費や保険料を支払う必要あり) |
運送ドライバーの労働者性が問題になるケースとして、まず、残業代請求や不当解雇・退職勧奨に対して労働関係法令に基づいた権利行使ができるか否かの問題があります。これに加えて、運転手が仕事中に事故を起こした場合に、運転手が車の修理費を負担しなければならないかが問題となることがあります。修理費の負担については、事故を起こした車両が運送会社所有車両か、傭車(自己所有の車両)であるかによって原則が異なります。
運送会社所有の車両が事故を起こした場合、ドライバーはその運送会社に雇用されている従業員である場合がほとんどであるため、ドライバーの労働者性が認められることについては問題ありません。
ドライバーの労働者性が認められる場合、使用者が労働契約の不履行について違約金を定めること、または損害賠償額を予定する契約をすることを禁止した労働基準法第16条が適用されます。ただし、同条によっても、会社が運転手に対して修理代を請求すること自体が禁止されるわけではありません。通達によれば、「同条は賠償金額を予定することを禁止するのであって、現実に損じた損害について賠償を請求することを禁止する趣旨ではない」とされています(昭和22(1947)年9月13日発基第17号)。
判例上、被用者(従業員)が起こした事故について使用者(会社)が被害者に賠償した場合の被用者への求償については「損害の公平な分担という見地から、信義則上相当と認められる限度において」求償できるとしています(最高裁第一小法廷1976年7月8日付判決:茨城石炭商事事件)。運送会社の車両事故の場合、会社から運転手に対する全額一括請求が無条件に認められることはなく、運転手に重大な過失または故意がない限り、全額請求は制限されます。上記の最高裁判決のケースでは、会社が運転手に請求できるのは損害額の4分の1までとされました。また、福山通運事件(最高裁2020年2月28日付判決)では、被用者であるドライバーが自ら賠償した場合、使用者の運送会社に対して相当額を「逆求償」できると判断しています。
多くの場合、被害者に対する賠償については会社が加入している自動車保険(任意保険+車両保険)でカバーした上で、保険会社の免責額が生じた場合に、運転手の過失の程度に応じた割合を求償するのが妥当といえます。
傭車(自己所有の車両)トラックの場合、業務委託契約で原則自己負担(保険手配)と定められていることが多いです。ただし、実態に照らして使用従属性が認められる場合、運送業者従業員の場合と同様に相当額を逆求償できる可能性があります。「委託者の細かい規制や指示に縛られたために事故を回避できなかった」等、修理費の全額自己負担が不当だと思われる場合は、弁護士への相談をおすすめします。
運送業者に雇用されているドライバーは労働者に該当するので、労基法第37条に基づいて未払いの残業代を請求できます。また、業務委託のドライバーの場合も、業務の実態に照らして使用従属性が認められれば、残業代請求が可能です。運送業界では、出来高の一定の割合が支払われる「歩合給」を含む給与体系をとっている会社が多くあります。一方で、割増賃金から歩合給を差し引いたり、割増賃金の対象となる基本給を最低賃金以下にする等、巧妙に給与を増やさない仕組みを作っているケースが少なくない状況です。ここで、運送業者のドライバー(以下「運送ドライバー」)の残業代の請求方法について解説していきます。
残業代請求する上で、残業時間にカウントできるのは、労働基準法上の「労働時間」として認められる時間です。「労働時間」とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間をいいます。運送ドライバーの場合、厚生労働省の定めた「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準)によって、労働時間が細かく定められています。改善基準によれば、労働時間に含まれる可能性があるのは以下の時間です。
労働基準法では、運送ドライバーの時間外労働の上限規制が設けられています。加えて、前述の厚労省「改善基準」の改正によって、(休憩時間や手待ち時間等)業務を行っていない時間を含む「拘束時間」について新たな上限規制が適用されています。従って、これらの上限規制を超える時間の時間外労働や拘束が違法となるため、残業時間にカウントできる時間にも上限があることに注意が必要です。
運送ドライバーの残業代請求は、以下の方法で行います。
まず、残業代の証拠となる資料を集めます。運送ドライバーの残業代の有効な証拠として、次のようなものが挙げられます。
(1)勤務時間の証明となる資料これらの資料のうち、労働者の手元に残らないものについては、可能な限り写しや写真を撮っておくことをおすすめします。
(2)労働契約・給与体系に関する資料証拠がそろったら、未払いの残業代を分単位で計算します。残業時間が時間外労働、休日労働、深夜労働のいずれに該当するかについては、判断が難しい場合があります。また、残業代請求権は、「行使できるとき」つまり各月の給料日から3年で消滅時効にかかるため、時効期間を経過した残業代の有無や金額についても調べる必要があります。これらを労働者自身が判断して正確な請求額を算出することは難しいため、弁護士への相談をおすすめします。
未払い残業代の計算ができたら、会社に対して内容証明郵便で請求書を送付して、交渉を申し入れる必要があります。内容証明郵便による請求書送付が必要なのは、残業代の請求権が消滅時効(労働基準法第115条)にかかるのを防ぐためです。
会社との任意交渉が成立しなかった場合、労働審判申立てを行うか、訴訟提起によって残業代請求を行います。労働審判と訴訟には以下のような違いがあります。
| 労働審判 | 訴 訟 | |
| 適した状況 | 相手方に譲歩の余地がある 当事者が早期解決を望んでいる | 証拠が揃っている 強制力のある解決を望んでいる |
| メリット | 原則3回の期日で手続が終了するため早期解決が可能 審理が非公開で行われるためプライバシーが守られる | 判決または和解により強制力のある解決ができる |
| デメリット | 以下の場合審判が無効になるため強制力が弱く、また手続にかかった時間と労力が無駄になる ・審判結果に対して一方が異議を申し立てた ・労働審判委員会の判断で審判を終了させた場合 | 解決まで時間がかかる 事実上弁護士への委任が必要なので弁護士費用がかかる |
労働審判結果が無効になった場合や、最初から訴訟提起するのが望ましいと判断された場合は、訴訟提起により解決を目指します。訴状を提出する裁判所は、以下の条件に従って決まります。
| 労働審判を経ている | 労働審判を経ていない | |
| 請求額140万円以下 | 労働審判を行った地方裁判所(会社の所在地を管轄する地裁) | 会社の所在地を管轄する簡易裁判所 |
| 請求額140万円超 | 同上 | 会社の所在地を管轄する地方裁判所 |
先に労働審判を申し立てるか、最初から訴訟提起するかを的確に判断するのは労働者単独では難しいため、弁護士への相談・依頼をおすすめします。
ここで、運送業者のドライバーの残業代請求の可否が争われた裁判例をご紹介します。
保冷が必要な荷物を運送するトラック運転手の出荷場や配送先での待機時間が労働時間に該当するか否かが問題となったケースです。
運送事業者Y社にトラック運転手として雇用されていたXは、会社による詳細な指示、要求に従い1日2回の配送業務に従事していました。Xの業務遂行状況については以下のような事情が認められました。
Xは、Y社に対して未払い残業代の支払いを求めて提訴しました。裁判では、上記の待機時間が残業代計算の対象となる労働時間に該当するか否か、及び歩合給に相当する手当の支払いが割増賃金支払いと認められるか否かが争点となりました。
横浜地裁は、待機時間の争点について以下の理由により、Xら原告4名の請求を認めて、Y社に対して未払い残業代、付加金合計4,200万円の支払いを命じました。また、上記手当の支払いについては、割増賃金支払いとは認められないと判断しました。
「このような事情(上記4点の認定事実)を考慮すると、出荷場や配送先における待機時間は、いずれも実作業時間にあたり、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価できる。また、その待機時間中に従業員がトイレに行ったり、コンビニエンスストアに買い物に行く等してトラックを離れる時間があったとしても、休憩時間であると評価するのは相当ではない。」
(判決理由ここまで)
Y社は控訴しましたが、2014年7月に東京高裁で、横浜地裁判決に沿った内容の和解が成立しました。待機時間を労働時間にカウントしない運送会社が少なくない中で、本件は「待機時間であっても行動が制限され、自由な過ごし方ができない場合は労働時間に含まれる」と判断した点で画期的な判決といえます。
労基署の指導を受けて就業規則を変更した運送会社の、変更後の賃金体系に基づく「割増賃金」が労基法第37条の割増賃金として適法といえるかが問題となったケースです。
一般貨物自動車運送事業等を業とする株式会社であるY社は、設立当初は従業員(運転手)の給与を運送先によって決めていましたが、その後、以下のような賃金体系をとっていました(旧給与体系)。
しかし、2015年5月に労働基準監督署から指導を受けたために、同年10月頃、Y社は賃金体系を以下のように変更しました(新給与体系)。
Y社に2012年2月頃雇用された運転手Xは、雇用当初から2015年11月までは、旧給与体系に基づく給与を支給されていました。
2017年12月に退職する際に、新給与体系の下での2015年12月~2017年12月の時間外労働等に対する賃金と付加金の支払いを求めて提訴したものです。本件では、Y社の「新給与体系」のもとでの「本件割増賃金」(上記⑤)が、労基法第37条1項等に従った割増賃金の支払として認められるか否かが問題となりました。
第一審(熊本地裁2021年7月13日付判決)は、本件割増賃金を「時間外手当」と「調整手当」に分けて検討した上で、以下のように判断しました。
(1)時間外手当(本件割増賃金から調整手当を差し引いた額)は、適正に労働時間を管理して支払われたことから対価性と明確区分性を有するといえるから、通常賃金には含まれない(時間外手当として認められる)
(2)調整手当については、時間外労働や深夜労働の時間数に応じて支給されていたとはいえないため、労基法第37条に従った割増賃金とは認められない
控訴審(福岡高裁2022年1月21日付判決)も、上記については一審を維持しました。
最高裁は、以下の理由により、控訴審の判断に誤りがあるとして同判決を破棄し、事件を福岡高裁に差し戻しました。
新給与体系のもとでは、時間外労働の有無や、その時間数と関係なく決定される本件割増賃金の総額のうち、基本給等を通常の労働時間の賃金(以下「通常賃金」)として労基法第37条等に定められた方法により算定された額が「本件時間外手当」の額となり、その余が「調整手当」の額となる。これにより、本件時間外手当と調整手当とは、前者の額が定まることにより当然に後者の額が定まるという関係にあり、両者が区別されることについては、「本件割増賃金の内訳として計算上区別された額に、それぞれ名称が付されている」という以上の意味を見出すことができない。
そうすると、本件時間外手当の支払いによって労基法第37条の割増賃金が支払われたといえるかを検討するにあたっては、本件時間外手当と調整手当から成る割増賃金が、「全体として、時間外労働等に対する対価として支払われた」といえるかを問題とすべきである。
(つまり、控訴審が「時間外手当」と「調整手当」の対価性を別々に検討した点に誤りがあると判断したことになります。)
Y社は、新給与体系を導入するにあたり、賃金総額の算定については従前の取扱いを継続する一方で、旧給与体系において「通常賃金」と位置づけていた基本歩合給に相当する部分を新たに「調整手当」として支給することにしたといえる。そうすると、旧給与体系の下では、基本給及び基本歩合給のみが通常賃金であったとしても、その額は新給与体系の下における基本給等及び調整手当の合計に相当する額と大きく変わらない水準、具体的には1時間あたり平均1,300円~1,400円程度であった。
一方、調整手当の導入の結果、新給与体系の下では、通常賃金は基本給のみであり、本件割増賃金は時間外労働等に対する対価として支払われると仮定すると、Xに対する通常賃金の額は1時間あたり平均約840円となり、旧給与体系の下での水準から大きく減少することとなる。
また、新給与体系の導入にあたり、Y社からXら労働者に対しては、基本給の増額や調整手当の導入等に関する一応の説明があったにとどまり、基本歩合給相当部分を調整手当として支払うことに伴い上記の変化が生じることについて、十分な説明がされたとはいえない。
以上によれば、新給与体系は、実質において、時間外労働等の有無や時間数に関係なく決定される賃金総額を超えて労基法第37条の割増賃金が生じないようにするために、旧給与体系において通常賃金に含まれる基本歩合給として支払われていた賃金の一部について、名目のみを本件割増賃金に置き換えて支払うことを内容とする賃金体系であるといえる。
そうすると、本件割増賃金は、その一部に時間外労働の対価として支払われているものを含むとしても、通常の労働時間の賃金として支払われるべき部分をも相当程度含んでいるものと解される。そして、本件割増賃金のうちどの部分が時間外労働等の対価にあたるかが明確になっていない以上、本件割増賃金について、通常賃金にあたる部分と労基法第37条の割増賃金にあたる部分とを判別できないこととなるから、Y社のXに対する本件割増賃金の支払いにより、同条の割増賃金が支払われたということはできない。
(判決理由ここまで)
本件の最高裁判決は、一見割増賃金を適正に支払っているように見せながら、割増対象となる基本給部分を最低賃金以下の低額に設定する等により、巧妙に賃金を増やさない仕組みを作っていた会社に対して、労基法第37条に基づく適法な支払いとはいえないと判断した点で注目されます。
運送ドライバーに労働者性が認められる場合、不当解雇に対して従業員の地位確認、バックペイ(解雇時から現在までの賃金相当額)や慰謝料等の請求が可能です。会社から解雇通知を受けた場合は、以下のように対処してください。
解雇通知を受けた場合の対処法について詳しくは、以下の記事を御参照ください。
解雇が違法か否かを判断するためには裁判例も含めた専門知識が必要であるため、できるだけ早く弁護士にご相談ください。
日本では解雇に対する法的規制が厳しいため、辞めさせたい従業員に対しては退職勧奨を行うことが多いです。ここでは、運送ドライバーに対する退職勧奨が違法になる場合や、退職に応じたくない場合にとるべき対処法について解説していきます。
退職勧奨は自発的な退職を促す行為なので本来は違法ではありません。しかし、退職勧奨の方法によっては違法になる場合があります。違法な「退職強要」に該当する可能性があるのは次のような場合です。
退職勧奨の違法を主張する場合、労働者側から退職の取消、慰謝料請求、バックペイ(退職時から現在までの期間分の賃金相当額支払)等の請求が可能です。
退職に応じたくない場合は、次の対処を行うことをおすすめします。
退職に応じたくない場合に、一番大切なのは「退職合意書にサインしない」ことです。退職勧奨が行われる場合、会社から面談に呼び出されていきなり退職合意書を提示され、署名を促されるという流れになることがよくあります。さらに、「退職しなければ解雇する」「あなたの成績ではこれ以上うちの会社にはいられない」等の言動により心理的に追い込まれることも少なくありません。
しかし、一度退職合意書にサインしてしまうと、退職の合意の意思表示を取消すことが難しくなります。法律的には強迫による意思表示の取消を主張できる可能性はありますが、そのために必要な証拠が残っていないことが多く、実際には困難です。退職合意書を提示された場合は、拒否するか、応答を保留してください。
退職勧奨を受けた場合は、できるだけ1回目の退職勧奨の時点で弁護士に相談してください。弁護士が介入することで、適切な対処法を教えてもらえる他、代理人弁護士による書面送付や会社との交渉が可能になります。
労働者には退職勧奨に応じる義務がない以上、会社に対して退職勧奨をやめるよう求めることができます。退職勧奨の停止を求める場合は、弁護士に依頼して、弁護士名義で会社に送付する受任通知に「従業員に対する退職勧奨行為を停止してください」と記載してもらうことをおすすめします。
運送ドライバーが会社とトラブルになった場合、運送ドライバーの労働者性が認められるか否かが重要な意味を持つ一方、その判断には専門知識が必要です。適切に対処するために、我々弁護士に相談することをおすすめします。運送ドライバーが労働トラブルについて弁護士に相談することには、次のようなメリットがあります。
残業代請求等、労働関係法令に基づく請求を行うためには、その法律で定義される「労働者」の要件(ほとんどの場合、労働基準法第9条と同義)を満たしている必要があります。運送ドライバーの場合、運送会社の従業員従業員が労働者に該当することについては問題ありません。一方、個人事業主の傭車運転手のように、個別の事情により労働者性が認められるか否かが異なり、その判断が難しい場合も少なくありません。弁護士に相談することで、判例や業務経験に基づいて、相談者様が「労働者」に該当する可能性について、的確に判断してもらうことができます。
労働者性が問題になるケースでは、残業代や不当解雇のバックペイ(解雇後の期間分の賃金相当額)の請求の可否が争われることが多いですが、可能な請求は個別の事案により異なります。また、業務委託のケースで労働者性が認められる可能性が低い場合でも、債務不履行や不法行為に基づく損害賠償請求等、何らかの請求ができる可能性があります。
弁護士に相談することで、労働者性を主張できる場合とできない場合でそれぞれどのような請求が可能であるか、的確に判断してもらうことができます。
残業代等を請求する場合、主張を証明できる証拠を揃える必要があります。しかし、運送ドライバーの場合、給与明細が未払い残業代発生の証拠として使えないことも多く、従業員自身で有効な証拠を揃えることは容易ではありません。また、労働者性が問題となる場合は、使用従属性があることを証明する資料も必要となります。
弁護士に相談することで、労働者性と請求それぞれを証明するためにどのような証拠が役立つか、それらはどのように収集するか等について、詳しく教えてもらうことができます。また、会社側が保持している証拠の開示請求等、適宜証拠収集のサポートも受けられます。
運送ドライバーが会社に対して残業代等の請求を行う場合、請求書類を内容証明で会社宛てに送付した上で、請求を認めてもらえるように交渉する必要があります。しかし、従業員本人が、労働者性の根拠を主張して請求を認めてもらうことは困難です。会社が交渉に応じてくれないことも多く、また顧問弁護士に依頼して一方的に請求を拒否される可能性もあります。弁護士に相談することで、対等な立場で冷静に交渉を進めることができます。
ウカイ&パートナーズ法律事務所では、初回30分無料で法律相談をお受けしています。「深夜労働が多いのに歩合給を理由に残業代を支払ってもらえない」「業務委託を理由に、売上げが少ないと最低賃金以下の報酬しかもらえない」等、労働トラブルでお困りのことがありましたら、お気軽に当法律事務所の無料相談をご利用ください。
運送会社のドライバーの残業代未払いが起こりやすい背景として、割増賃金から歩合給を差し引く等の不正な給与制度をとる会社が多いことに加えて「会社に雇用されているのに個人事業主のように扱われる」場合があることも挙げられます。これは、雇用契約締結によって生じる社会保険料や残業代、労災保険料等の負担から免れるために他なりません。
しかし、労働者に当たるかどうかは、契約の名目ではなく、働き方の実態によって客観的に決まるものです。意図に反して個人事業主扱いされてしまったドライバーであっても、また自らの意思で個人事業主として業務委託で働くドライバーや配達員であっても、使用従属性が認められれば労働者の権利を行使できます。個々のドライバーの使用従属性が認められるか否かの判断には専門知識を要するため、弁護士にご相談ください。
ウカイ&パートナーズ法律事務所では、所属する弁護士全員が、運送ドライバーの労働者性の判断や運送会社の行為の適法性を検討・判断した上で、とりうる対処法について懇切丁寧にお答えします。当事務所では、初回30分無料で法律相談をお受けしています。運送ドライバーの方が、未払い残業代や不当解雇、退職強要等でお困りの場合は、ぜひ当事務所の無料法律相談をお申込みください。
