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独立性のあるサービス業(マッサージ師・ネイリスト等)の労働問題を解説! 残業代請求は認められる?労働者性や不当解雇・退職勧奨への対処法と併せて弁護士が解説

2026/07/14(火)

独立性のあるサービス業(マッサージ師・ネイリスト等)の労働問題を解説! 残業代請求は認められる?労働者性や不当解雇・退職勧奨への対処法と併せて弁護士が解説

「ネイルサロンで働いているのですが、どれほど長時間働いても業務委託契約を理由に残業代を払ってもらえません。勤務時間や場所が決められていて、施術もマニュアルに従って行っているのに、業務委託では残業代請求はできないのでしょうか?」「整体院で働いています。開店前の準備や閉店後の後片付け、施術記録等で営業時間外も毎日2時間以上働いているのですが、営業時間外は労働時間にカウントされていません。サービス業ではこれは仕方ないのでしょうか?」

当法律事務所では、マッサージ師やネイリスト、エステティシャン、配達員等の独立性のあるサービス業の方から、このような相談を頂くことがよくあります。独立性のあるサービス業の仕事は、一つの組織にしばられずにライフスタイルに合わせた働き方ができるのが大きなメリットです。一方で、契約形態が雇用ではないことを理由に残業代が出ない、恣意的に契約解除される等のトラブルが起こる可能性もあります。そこで本記事では、独立性のあるサービス業の従事者が労働者として行使できる権利について、以下の点を中心に解説していきます。

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はじめに:労働者性の論点

(1)労働者性の基準

会社に対して残業代請求等、労働関係法令で認められた権利を行使するためには、労働基準法や労働契約法の適用を受ける「労働者」に該当している必要があります。ここではまず、労働者性の判断基準及び、マッサージ師・ネイリスト等の独立性のあるサービス業従事者が労働者に該当するか否かについて解説していきます。労働者性の判断基準については、以下の通りです。

  • ①他人の指揮監督下において労務を提供している(指揮監督関係)
  • ②指揮監督下における労働の対価として賃金の支払を受けている(報酬の労務対償性)
  • ③事業性・専属性等(上記の2基準のみでは判断が難しい場合)

上記①②をあわせて「使用従属性」と呼びます。使用従属性を判断する上で、特に重視されるのが上記①の「指揮監督関係」の中の次の基準です。

  • 仕事の依頼・業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無(=依頼や指示を断れるか否か)
  • 業務遂行上の指揮監督の有無(=会社側の指揮監督下に置かれているか否か)
  • 場所的時間的拘束性の有無(=働く場所や時間が決められているか否か)

使用従属性の判断基準等、労働者性の論点について詳しくは、以下の記事を御参照ください。

労働者性についてのコラムはこちらへ

(2)あてはめ

1.マッサージ師・ネイリスト等は労働者にあたるか

整体・リラクゼーション業界や、ネイリスト等の仕事は、サロン開業も可能である等独立性があるため、働き方によっては労働者にあたるか否かが問題となります。

まず、治療院やサロン(またはそれらを運営する会社)に正社員またはアルバイトとして雇用されている場合は、労働者に該当します。一方、独立して治療院やサロンを開業している場合は、労働者に該当しません。労働者性の判断が難しくなることがあるのは、業務委託契約により治療院やサロンで就業する場合です。

業務委託契約によって治療院やサロンで就業するマッサージ師やネイリストについては、以下のような事情がある場合、労働者性が認められる可能性があるといえるでしょう。

①指揮監督関係
  • 勤務時間やシフトをサロン側が指定している
  • 労働時間をタイムカード等で管理されている
  • 施術内容、接客方法、服装等について細かく指示されている
  • 休憩や休日の取り方について制限がある

②報酬の労務対償性
  • 報酬が時給や日給で支払われている
  • 来客の有無にかかわらず、指定された時間に出勤すれば一定の報酬が支払われる

③事業性・専属性等
  • 専属性:顧客との直接契約や他サロン勤務・フリーランス営業等が禁止されている
  • 代替性:本人が一時的に代わりの施術者を立てることをサロンが認めていない
  • 営業リスク負担:サロンが施術料金設定・集客・顧客管理を行っている
  • 同:材料費・備品代等をサロンが負担している
  • 社会保険に加入できる仕組みがある

2.サロンの店長は労働者に当たるか

整体院、リラクゼーションサロン、エステサロン、ネイルサロン等の店長は、それらを運営する会社に雇用されている場合がほとんどなので、労働基準法等の「労働者」に該当することについては問題ありません。ただし、店長の場合、労基法の「労働時間」の章の規定の適用が除外される「管理監督者」に該当するとして、同章に含まれる労基法第37条に基づく時間外労働手当が支払われないことがよくあります。「店長は管理職だから、労基法第41条2号の管理監督者に該当する」「給与に役職手当が含まれている」というものです。

しかし、会社側が店長を管理職扱いしている場合でも、同法の管理監督者に該当しない「名ばかり管理職」である可能性があります。「管理職」が全て管理監督者に該当するわけではなく、ある役職に就く従業員が管理監督者に該当すると言えるためには、以下の要件を満たしていなければならないからです。

  • ①企業(団体)の経営に関与し、労務管理上の決定権限を有していること(経営者との一体性)
  • ②自身の労働時間についての裁量権を有していること(労働時間の裁量権)
  • ③役職にふさわしい賃金等の待遇を受けていること(対価の正当性)

サービス業の各店舗の店長については、日本マクドナルド事件判決(東京地裁2008年1月28日)に代表されるように、裁判で「管理監督者に該当しない」と判断されるケースが大半です。「肩書は店長だが、決定権があるといってもアルバイトの採用に限られている」「労働時間も自分で決められないし、残業代が出ないから実質給料が下がっている」等、上記の要件に照らして「残業代が出ないのはおかしい」と思われる場合、残業代請求ができる可能性が高いです。

3.ウーバーイーツ等の配達員は労働者に当たるか

フードデリバリーやメール便配達等の配達員は、発送元の会社に雇用されている場合は労働者に該当します。一方、近年はウーバーイーツに代表されるように、配達業務委託を受けた個人事業主が貨物配達に従事する形態が増えています。この点、個人事業主の配達員については、一般的には労働基準法上の使用従属性が否定されています。ですので、多くの方は「労働者」にあたらないと考えてください。もっとも、個別の配達員の働き方の実態に照らして、使用従属性が認められれば、例外的に労働基準法の「労働者」に該当する可能性があります。

具体的には、次のような事情がある場合に使用従属性が認められる可能性があります。

①指揮監督関係
  • 配達の日時、ルート、件数等を会社が指定している
  • 業務中の配達員の行動を会社がGPSで監視している
  • 業務報告義務がある
  • 服装、対応マナー等を会社が細かく指示している

②報酬の労務対償性
  • 売上や利益に対してではなく、働いた時間や回数に応じて報酬が支払われる
  • 名目が「業務委託料」であっても出来高や時間単価が固定している

③事業性・専属性等
  • 専属性:自分で取引先を選ぶことができず、配達アプリのシステム内でしか仕事を受けられない
  • 代替性:仕事を他人に替わってもらったり、他人に替わって行うことができない
  • 営業リスク負担:会社名義で取引・顧客対応している
  • 事業者性:支給された制服の着用や指定バッグ使用を義務付けられている

判例では、ウーバーイーツ配達員に対しては労働基準法上の労働者性は否定されています(東京地裁2022年11月25日判決:ただし、労働組合法上の労働者には該当すると判断しました)。一方、メール便配達員の労働者性が問題になったヤマト運輸ドライバー事件(東京地裁2013年9月27日判決)では、「配達区域、時間、方法等を会社に指定されている」「代替要員の自由がない」等の事情に照らして労働者性が認められました。

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マッサージ師・ネイリスト等の残業代請求は認められるか

整体院、リラクゼーションサロン、エステティックサロン、ネイルサロン等を運営する会社に雇用されている従業員は労働者に該当するので、労基法第37条に基づいて未払いの残業代を請求できます。また、業務委託で働く場合も、業務の実態に照らして使用従属性が認められれば、残業代請求が可能です。

サービス業界では、店の営業時間外でも開店準備や後片付け、レジ締めや物販商品の在庫管理等の様々な作業を行う必要があります。これは、従業員に国家資格の有資格者や個人事業主が多いサービス業界にあっても同様です。その一方で、営業時間外の作業に要した時間が労働時間にカウントされず、未払い残業代が発生していることが少なくありません。ここでは、独立性のあるサービス業界の従業員の残業代の請求方法について解説していきます。

残業時間にカウントされる労働時間

残業代請求する上で、残業時間にカウントできるのは、労働基準法上の「労働時間」として認められる時間です。「労働時間」とは、「使用者の指揮命令下に置かれている時間」をいいます。マッサージ師・エステティシャン・ネイリスト等の労働時間に含まれる時間として、以下の場合が挙げられます。

(自由に外出できない、読書やスマホ利用ができない等)
労働時間に含まれる時間備 考
営業時間または勤務シフト・予約時間内の時間雇用契約または業務委託契約で明確に「勤務時間」とみなされている時間
開店前の準備時間・閉店後の片付け時間タオル・ガウン等の洗濯、施術台準備、清掃等が義務付けられている場合
待機時間施術が入っていなくても店内で待機を命じられている場合
顧客対応準備予約確認、電話対応、カウンセリングシート記入
ミーティング・研修サービス向上、施術技術研修、接客マナー講習、商品説明会等、業務に関連するミーティングや研修で、明示または事実上参加が義務付けられている場合
売上管理・事務作業施術後のカルテ記入、レジ締め、物販品の在庫チェック等
宣伝・営業活動SNS更新、チラシ配布、口コミ依頼等で会社から指示を受けて行っている場合
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残業代の請求方法

マッサージ師・エステティシャン・ネイリスト等が勤務先の店舗を運営する会社に対して残業代請求する場合、以下の方法で行います。

1.証拠を収集する

まず、残業代の証拠となる資料を集めます。残業代の有効な証拠として、次のようなものが挙げられます。

(1)勤務時間の証明となる資料

マッサージ師・エステティシャン・ネイリスト等の勤務時間を証明できる資料として、以下が挙げられます。

勤怠・出退勤時刻を示す資料・タイムカード
・勤怠アプリ記録(シフト管理システム・LINE打刻等)
・施術予約システムのログ(予約開始・終了時間が勤務時間を証明できる)
・防犯カメラの映像(出退勤時刻証明の補助的証拠となる)
店舗での拘束を示す資料・シフト表や出勤予定表
・開店準備、閉店作業のマニュアルや業務日報(施術以外の作業が義務付けられていることの証拠となる)
・待機中のルールを示す文書やLINE指示(外出禁止、店舗SNSは勤務時間中に更新する等)
・店側とのLINE等のやり取り(「予約が入るまで店内待機」等)
実際に業務に従事していたことを示す資料・施術記録(開始時刻、終了時刻の記載があるもの)
・レジ締め記録、売上報告(閉店後に作業を行っていた事実を証明できる)
・物販商品在庫チェックや清掃の記録(同上)
ミーティング/研修への参加の事実を示す資料・研修案内通知(メール、LINE等)
・参加者リスト(義務的な研修であることを証明できる)

(2)労働契約・給与体系に関する資料

  • 雇用契約書(個人事業主の場合は業務委託契約書)
  • 労働条件通知書
  • 就業規則
  • 給与明細

2.未払残業代を計算する

証拠がそろったら、未払いの残業代を分単位で計算します。残業時間が時間外労働、休日労働、深夜労働のいずれに該当するかについては、判断が難しい場合があります。また、残業代請求権は、「行使できるとき」つまり各月の給料日から3年で消滅時効にかかるため、時効期間を経過した残業代の有無や金額についても調べる必要があります。これらを労働者自身が判断して正確な請求額を算出することは難しいため、弁護士への相談をおすすめします。

3.会社と交渉する

未払い残業代の計算ができたら、会社に対して内容証明郵便で請求書を送付して、交渉を申し入れる必要があります。内容証明郵便による請求書送付が必要なのは、残業代の請求権が消滅時効(労働基準法第115条)にかかるのを防ぐためです。

4.法的手段をとる

会社との任意交渉が成立しなかった場合、労働審判申立てを行うか、訴訟提起によって残業代請求を行います。労働審判と訴訟には以下のような違いがあります。

労働審判訴 訟
適した状況相手方に譲歩の余地がある当事者が早期解決を望んでいる証拠が揃っている強制力のある解決を望んでいる
メリット原則3回の期日で手続が終了するため早期解決が可能
審理が非公開で行われるためプライバシーが守られる
判決または和解により強制力のある解決ができる
デメリット以下の場合審判が無効になるため強制力が弱く、また手続にかかった時間と労力が無駄になる
・審判結果に対して一方が異議を申し立てた
・労働審判委員会の判断で審判を終了させた場合/td>
解決まで時間がかかる
事実上弁護士への委任が必要なので弁護士費用がかかる

労働審判結果が無効になった場合や、最初から訴訟提起するのが望ましいと判断された場合は、訴訟提起により解決を目指します。訴状を提出する裁判所は、以下の条件に従って決まります。

労働審判を経ている労働審判を経ていない
請求額140万円以下労働審判を行った地方裁判所(会社の所在地を管轄する地裁)会社の所在地を管轄する簡易裁判所
請求額140万円超同上会社の所在地を管轄する地方裁判所

先に労働審判を申し立てるか、最初から訴訟提起するかを的確に判断するのは労働者単独では難しいため、弁護士への相談・依頼をおすすめします。

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マッサージ師・ネイリスト等の残業代請求の可否が争われた裁判例

ここでは、マッサージ師やエステティシャン等の残業代請求の可否が争われた裁判例をご紹介します。以下、文末の(〇)は労働者性を肯定する要素、(X)は否定する要素であることを意味します。

1.マッサージ師の残業代請求が認められたケース

【イヤシス事件:大阪地裁2019年10月24日付判決】

リラクゼーションサロン経営等を業とするY社の運営する店舗で、整体やリフレクソロジー等の施術等の業務に従事していたXらは、XらとY社の契約は業務委託契約ではなく雇用契約であると主張して、Y社に対して、未払いの時間外割増賃金及び遅延損害金の支払い、及び同額の付加金の支払いを求めて提訴しました。

大阪地裁は、以下の各要素を考慮して、Xらの労働者性を肯定し、時間外割増賃金及び付加金の請求を認めました。

(1)諾否の自由の有無
Xらは、顧客からの業務依頼を自由に断れるわけではなかった(〇)

(2)業務遂行上の指揮監督の有無①Xらは研修を受けることが義務づけられ、発注者が求める水準のサービスを提供する必要があった(〇)②発注者に対して、各日の売上、顧客数、リピート顧客の数、顧客の性別、作業状況等について詳細な業務報告をしていた(〇)

(3)拘束性の有無
①契約書に「委託時間は1日8時間~10時間を目途とする」と記載され、送付されたハンドブックにも「10分前出勤を徹底」「休憩は8時間勤務で1時間」「(※休憩中でも業務に入らなければいけない場合あり)」等の記載があった(〇)
②店舗はスタッフ不足を理由とする閉店ができないため、スタッフ間で休日の希望日が重なれば、業務に従事せざるを得なかった(〇)
③2人体制の日にシフトで割り当てられた業務時間中の中抜け(休憩や私用等の都合で一時的に業務から外れること)が困難だった(〇)
④配置されているスタッフの休日希望日が重なった場合に、(他店からの従業員に勤務してもらう等の)スタッフが自由に休む体制が構築されていなかった(〇)
⑤出勤簿において出退勤時間を報告していた(〇)
⑥契約書において、業務従事場所である店舗が定められていた(〇)

(4)報酬の労務対償性
報酬は歩合制であったが、1日あたりの最低保証額が定められており、従業時間が8時間に満たない場合には減額されていた(〇)

(5)事業者性の有無
①店舗はYが賃借しており、施術に必要な設備や道具類はすべてYから提供を受けていた(〇)
②報酬は最低保証額であって最低賃金を下回るものであり、Yの他の従業員と比較して高額ではなかった(〇)

(6)その他の事情
①業務委託契約を締結した者と労働契約を締結した者とで、従業時間の管理や報酬、評価制度の有無等で異なった取扱いがされていた(X)
②業務委託契約を締結した者の契約書に「遅刻」や「始末書」等、労働契約を前提とした文言が記載されていた(〇)

【クリエーション事件:東京地裁2021年7月13日付判決]

Xは、Y社と業務委託契約を締結して、Y社が運営するまつげエクステ店に勤務していました。Y社が2020年2月28日にXとの契約を解除したところ、XはY社と労働契約を締結していたと主張し、Y社の「解雇」が無効であるとして、Y社に対して労働契約上の地位の確認、解雇日以降の賃金及び遅延損害金の支払を求めて提訴しました。

東京地裁は、以下の理由により、Xの労働者性を認めた上で、労働契約法第16条に基づき解雇が無効であるとしてXの請求を認めました。

・本件契約が労働契約に該当するかについて:総論労働契約法上、労働者とは「使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者」(労働契約法第2条1項)とされる。また、労働基準法は同法の保護の対象となる労働者を「事業等に使用される者で、賃金を支払われる者」(同法第9条)と規定している。これらの規定に照らせば、労働契約の性質を有するか否かの判断に当たっては、形式的な契約形式にかかわらず、労務提供の形態や報酬の労務対償性及びこれらに関連する諸要素を総合的に考慮し、その実態が使用従属関係の下における労務の提供と評価できるか否かにより判断することが相当である。

・本件へのあてはめ
以下の事情を考慮すると、本件契約の性質は労働契約と認めることができる

(1)諾否の自由の有無
①Y社の代表取締役である訴外Aは、Xとの間でLINEグループにより頻繁に業務上の報告、連絡を行っていた(〇)

(2)業務遂行上の指揮監督の有無
①XはY社直営店舗において「本部長」の肩書で、各加盟店の販促物供給・連絡、事務用品購入、広告や販促物作成、セミナー及び講習会サポート、Aの秘書業務等を行っていた(〇)②Xが業務を行うにあたっては、上記LINEグループでAから具体的な指示を受けることが多くあった(〇)③原告本人尋問によれば、Aは、Xが(Aから依頼された)コピー取りを拒否したことを非難する旨の発言をしていた(〇)

(3)拘束性の有無
①AはXに対して、LINE上で再三タイムカード打刻を要請していた。また「早くても18時までは対応してもらいたい」「昼食をとるか否かは自由だが(店舗内に)8時間はいるようにしてください」等の内容のメッセージを送信していた(〇)
②Xは、休暇を取得する場合は都度Aに報告してAの了承を得ていた(〇)

(4)報酬の労務対償性
Xら従業員の最低報酬額が保障されていた(〇)

(5)事業者性の有無
店舗の備品の用意や管理は店舗側で行っていた(〇)

2.残業代請求が認められなかったケース

【リバース東京事件:東京地裁2015年1月16日付判決】

リフレクソロジー店に勤務するセラピストXは、店舗を運営するY社が2012年11月30日付でXとの「業務委託契約」を解除したことに対して、当該契約解除は解雇に相当すると主張し、Y社に対して以下の請求を行いました。

主位的請求:雇用契約上の権利を有する地位の確認及び2010年12月~2012年11月の未払い賃金、慰謝料の支払

予備的請求※:業務委託契約に基づく、受付業務に対する報酬の支払

※主位的請求が認められなかった場合に審理される請求

東京地裁は、以下の理由によりXの労働者は認められないとして、主意請求及び予備的請求のいずれも棄却しました。

・主位的請求について(XY間の契約は雇用契約に該当し、契約解除は解雇に相当するか→Xの労働者性が主争点)

(1)諾否の自由の有無
①セラピスト側で、自らのシフトを自由に決めることが可能で、シフト確定後も自らの都合により変更できたことに加えて、担当するシフトの稼働時間中であっても「指名以外は施術を行わない」旨受付係に要望を伝え、希望しない施術の担当を拒否することが可能であった(X)
②担当するシフトの時間帯であっても、中抜けして一定時間シフトを外れることにより包括的に施術の担当を拒否することが可能であった(X)

(2)業務遂行上の指揮監督の有無
①セラピストの業務遂行の実態は、個別の施術の実子についても各セラピストが自らの判断で施術の順序や方法等を決定して行っていたものと認められる。Yがセラピストの業務遂行について具体的に指揮、命令、監督をしていたとは認められない(X)
②Y側が作成した文書や教本については、Yがセラピストに対して注意喚起や基礎知識の習得又は確認の趣旨で作成・配布したものであり、これらによってセラピストがYから業務遂行上の指示や命令を受けていたとはいえない(X)

(3)拘束性の有無
①セラピスト側で、セラピストの希望を反映したシフト表を作成し、仮に稼働予定を調整する必要が生じた場合でも自主的に調整したうえでエリアマネジャーに提出していた。エリアマネジャーが一方的にシフト表を作成、変更したことはなかった(X)
②担当するシフトの時間帯であっても、施術や受付業務を担当していない場合は、所在を明らかにして連絡を受けた場合に直ちに店に戻ることができる態勢にすれば自由に過ごすことができた。また、受付係に時間帯を特定して中抜けを申し出ることで一時的にシフトから外れることも可能だった(X)

(4)報酬の労務対償性
セラピストがYから受け取る対価は、個々の施術ごとに発生する完全出来高制となっており、施術を行っていない時間帯について対価が発生することはないから、セラピストに支払われる対価に労務対称性があるとは認められない(X)

(5)事業者性の有無
①セラピストは消費税の源泉徴収をされずに対価の支払いを受け、各セラピストにおいて事業所得として確定申告をしていた(X)
②セラピストは自由に兼業することができた(X)
③セラピストは報酬の5%相当額を全国手技療法師協同組合の組合費として負担することにより施術に要する消耗品等の費用につき応分の負担をしていると解される(X)

・予備的請求について
受付業務の運用が以下のように行われていたことを考慮すると、セラピストが自ら施術を担当していない時間帯に施術業務に付随する業務として受付業務を担当するものとするのは一定の合理性がある。

  • おおむね30分~60分程度の範囲で交替で受付業務を担当する
  • 受付業務を行っている間に指名を受けた場合、または施術担当の順番が回ってきた場合は指名や施術担当が優先される
  • この場合、受付業務は他のセラピストが代わりに担当する

セラピストとY社の間では、セラピストが施術業務に付随する業務として受付業務を行う旨の合意が成立していたと認められ、受付業務につきY社が別途報酬を支払う旨の合意が成立した事実は認められない。Xについても、これと異なる事情が存在したとは認められない。

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不当解雇に遭った場合の対処法

労働者性が認められる場合、不当解雇に対して従業員の地位確認、バックペイ(解雇時から現在までの賃金相当額)や慰謝料等の請求が可能です。会社から解雇通知を受けた場合は、以下のように対処してください。

  • 会社に解雇理由証明書の交付を請求する
  • 請求できる権利を確認する
  • 解雇の違法性を証明する証拠を集める
  • 会社と交渉する
  • (交渉不成立の場合)労働審判申立てまたは訴訟提起
  • 失業保険の仮給付申請(復職を希望する場合)
  • 同・本給付申請(復職を希望しない場合)

解雇通知を受けた場合の対処法について詳しくは、以下の記事を御参照ください。

能力不足を理由とした解雇についてのコラムはこちらへ
整理解雇についてのコラムはこちらへ
懲戒解雇についてのコラムはこちらへ
バックペイの請求についてのコラムはこちらへ

解雇が違法か否かを判断するためには裁判例も含めた専門知識が必要であるため、できるだけ早く弁護士にご相談ください。

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マッサージ師・ネイリスト等が不当な退職勧奨に遭った場合の対処法

日本では解雇に対する法的規制が厳しいため、辞めさせたい従業員に対しては退職勧奨を行うことが多いです。ここでは、退職勧奨が違法になる場合や、退職に応じたくない場合にとるべき対処法について解説していきます。

退職勧奨が違法になる場合

退職勧奨は自発的な退職を促す行為なので、本来は違法ではありません。しかし、退職勧奨の方法によっては「退職強要」として違法になります。違法な「退職強要」に該当する可能性があるのは、次のような場合です。

  • 暴力や侮辱的な発言、脅迫を伴う退職勧奨(パワハラ行為)
  • 退職勧奨を拒否しても執拗に退職を迫る
  • 欺瞞的な説明により退職に誘導する

退職勧奨の違法を主張する場合、労働者側からは次のような請求ができます。

  • 退職の取消
  • 慰謝料請求
  • バックペイ(退職時から現在までの期間分の賃金相当額支払)

退職勧奨に応じたくない場合の対処法

退職に応じたくない場合は、次の対処を行うことをおすすめします。

1.退職合意書にサインしない

退職に応じたくない場合に、一番大切なのは「退職合意書にサインしない」ことです。退職勧奨が行われる場合、会社から面談に呼び出されていきなり退職合意書を提示され、署名を促されるという流れになることがよくあります。さらに、「退職しなければ解雇する」「あなたの成績ではこれ以上うちの会社にはいられない」等の言動により心理的に追い込まれることも少なくありません。

しかし、一度退職合意書にサインしてしまうと、退職の合意の意思表示を取消すことが難しくなります。法律的には強迫による意思表示の取消を主張できる可能性はありますが、そのために必要な証拠が残っていないことが多く、実際には困難です。退職合意書を提示された場合は、拒否するか、応答を保留してください。

2.弁護士に相談する

退職勧奨を受けた場合は、できるだけ1回目の退職勧奨の時点で弁護士に相談してください。弁護士が介入することで、適切な対処法を教えてもらえる他、代理人弁護士による書面送付や会社との交渉が可能になります。

3.書面で退職に応じない旨の意思表示をする

労働者には退職勧奨に応じる義務がない以上、会社に対して退職勧奨をやめるよう求めることができます。退職勧奨の停止を求める場合は、弁護士に依頼して、弁護士名義で会社に送付する受任通知に「従業員に対する退職勧奨行為を停止してください」と記載してもらうことをおすすめします。

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まとめ

マッサージ師・エステティシャン・ネイリスト等、独立性のあるサービス業で働く方であっても、会社に雇用されている場合は、残業代請求などの労働関係法令で認められた権利を行使できます。また、個人事業主として業務委託で働くマッサージ師、エステティシャン、ネイリスト等であっても、使用従属性が認められれば労働者の権利を行使できます。労働者に当たるかどうかは、契約の名目ではなく、働き方の実態によって客観的に決まるものだからです。個々のサロン従業員の方の使用従属性が認められるか否かの判断には専門知識を要するため、弁護士にご相談ください。

ウカイ&パートナーズ法律事務所では、所属する弁護士全員が、マッサージ師、エステティシャン、ネイリスト等の労働者性の判断やサロン運営会社の行為の適法性を検討・判断した上で、とりうる対処法について懇切丁寧にお答えします。当事務所では、初回30分無料で法律相談をお受けしています。マッサージ師、エステティシャン、ネイリスト等のサロン従業員の方が、未払残業代や不当解雇、退職強要等でお困りの場合は、ぜひ当事務所の無料法律相談をお申込みください。

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